森島 土地柄なんかな? あと〈アンチ中央集権〉やな。俺なんかモロそこにおったもん。東京、東京てアホか!みたいな。で、ライヴでわざと酒なんか飲んだりして……。
佐藤 僕らも学生の頃、ライヴやるときは酒呑んでなあかんと思ってましたからね(笑)。
森島 そうそう、チャージバックとか入っても、その日のうちに全部飲んでまわなみたいな、アホな美学があった。
岸田 僕、初めて拾得とか行った時のことすごい憶えてて。まだ高校生で、ライヴハウスいうたらコピーバンドが出るようなとこしか知らなかったですから、ものすごいカルチャーショックで。やっぱり、ちょっとした敷居の高さもあって、怖そうな人もいるんですけど、そういう人がマジメにマディ・ウォーターズの話してて。
森島 おるおる(笑)。
佐藤 確かに。でも、いったん中に入っていくとものすごい面倒みてくれはる感じ。
岸田 僕、そういう人らにレコード借りたりしてたんですよ。僕が「いやー、やっぱオアシスですよ」とか「ダイナソーですよ」とか言うと、「なんやそれ? コレ聴けー」言うて、ジョン・リー・フッカーとかが出てくる(笑)。
森島 だからメディアにのってきた情報じゃないもん。ホンマにリアルな情報なり文化なりがあるよね。ただ人数は少ない。くるりのメンバーだけやったりする世界やねんけど(笑)。実は俺も影響を受けたバンドって、スリッカーズって磔磔の水島さんがやってたバンドやったりするし。
佐藤 受け継がれてますねー。
森島 意識してへんけどね。ほんまのリアルがあった!って感じで、拾得にしても磔磔にしてもシステムの中で商売してるわけじゃなくて、自分らのルールでやってるからな。効率とか生産性とか、関係ないもん。
岸田 でも生産性ないもんが案外、生産性を持ってたりするんですよ。だいたい人間って生産性がないことは諦めるじゃないですか? しょうもないこと思いついてもお金にならんわとか。俺何歳なんや、とか。でも、京都ってその壁がない感じがするんですよ。僕ら〈みやこ音楽祭〉(※4)ってやってて、京都の若いミュージシャンとも会う機会が増えたんですけど、みんな「京都はニートを甘やかす街や」って、そう言ってる自分がニートやっていう(笑)。でも、そういう非生産的な無邪気さが、昔からミュージシャンを生んできた京都という土壌の秘密な気もする。
佐藤 ノイズマッカートニーは今年、京都でいろいろ動こうと思って、いろんな人らと秘かに企画を進めているんですけど、やっぱり京都って自分たちがプリミティヴなところで影響を受けてて、今もカッコイイと思える人がいっぱいいるから、ホームって感じはしますね。
岸田 こないだも喋ってて、この生産性のない感じはブルースの人の自伝とか読んでる感じに近いなあって思って。すごいやんこのハウンドドッグ・テーラーみたいな人って(笑)。そんなん絵空事やと思ってたんですけど、こんなとこにいたんや!って。
森島 だから京都の音楽って、アメリカ南部のブルースみたいな感じのカルチャーなんかも。デルタ(※5)もあるしな(笑)。
※4 京都の学生が主宰になって行っている音楽フェスティバル。くるりは'94年の第一回から出演。昨年からは企画の段階から積極的に関わっている。
※5 出町柳の鴨川が合流する三角地帯。鴨川は京都のミュージシャンにとって、練習場であり酒場であり瞑想の場でもある!?
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