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第31回 ─ [ 特別編 ]ORITOが愛した魂の歌

ESSENTIALS 魂を繋ぐ宝石たち

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2008/05/22   02:00
更新
2008/05/22   16:56
ソース
『bounce』 298号(2008/4/25)
テキスト
文/林 剛


ORITO 『Soul Joint』 ビクター(1995)
ロイヤル・スタジオで録音された全編英語詞のデビュー・アルバム。ウィリー・ミッチェルを筆頭に、レスター・スネルや元マッド・ラッズのウィリアム・ブラウンといった往年のメンフィス勢がORITOのソウル愛に応え、冒頭から泣かせるサザン・バラード“I'm Yours”を披露。アル・グリーンの“Let's Stay Together”やサム・クック“I'll Come Running Back To You”を真摯に歌い込む姿も心打たれるものだ。

AL GREEN 『The Difinitive Greatest Hits』 Capitol 
ORITOが〈音楽人生最大の英雄・恩人・目標の一人〉(公式ブログより)と語っていたアル・グリーン。このベスト盤に収録されたロイヤル・スタジオ産の名曲群なくしてはORITOというシンガーは存在しなかっただろう。ORITOの上掲作でも歌われた“Let's Stay Together”を筆頭に、歌いながら愛に溺れていくような官能的でエレガントなソウル曲が続出。付属のDVDには貴重なライヴ映像が収録されている。

VARIOUS ARTISTS 『Memphis 70』 BGP 
70年代のメンフィス・ソウルにスポットを当てた編集盤。正確には68~78年の曲を収録。つまり、オーティス・レディング亡き後のメンフィス・ソウルだ。スタックスやサウンズ・オブ・メンフィスの音源を中心に、有名~無名アーティストのモダンでファンクなナンバーが続々登場。オヴェイションズによるサム・クック曲カヴァー“Shake”などの初出曲もあり、これはORITOに聴いてほしかった。


O.V. 『WRIGHT O.V. Box』 Pヴァイン 
心に響く歌とはどんなものか、それを教えてくれるのがOV・ライトだ。情熱的で深々としたその歌声はバックビート時代の作品を収めたこの5枚組ボックスで存分に味わえるが、特にウィリー・ミッチェルの元で録音した『A Nickel And A Nail And Ace Of Spades』(72年)での歌は神懸かり的。ゴスペルを心の拠りどころに歌い続けたこの不世出のソウル・シンガーも、41歳という若さで他界した。

LUTHER INGRAM 『I Don't Want To Be Right : The Ko Ko Singles Volume 2』 Ace/Kent 
ある意味、アル・グリーン以上にORITOに近い歌い手だと言えるのが、このルーサーではないか。本作はココ時代のシングル編集盤の第2弾だが、許されぬ恋にもがき苦しむ様を描いた不倫バラード“(If Loving You Is Wrong)I Don't Want To Be Right”(レイ・Jも新作冒頭で引用)での一途な歌いっぷりは、まさにORITOのそれに通じるもの。何と心のこもった歌声だろう。

VARIOUS ARTISTS 『Quinton Claunch's Hidden Soul Treasures』 Pヴァイン 
82年にロイヤル・スタジオで録音されながらお蔵入りしていたウィリー・ハイタワーのアルバムを核に、オリー・ナイチンゲールらの未発表曲を収録したクィントン・クランチ所有音源の公開コンピ。打ち込みの音も若干混じるが、特にサム・クック影響下にあるウィリーの歌は流石に味がある。ジョーL・トーマスのブルース曲は、ORITOと同じ頃のロイヤル録音だったというのも興味深い。

J. BLACKFOOT 『City Slicker』 Sound Town(1983)
ソウル・チルドレンのジョン・コルバートによる初ソロ・アルバム。バックにレスター・スネルの名もあるこの80'sメンフィス・ソウル盤には、いま聴くとORITO“I'm Yours”の雛形とも思える名曲“Taxi”を収録。ジャケットは渋谷のスクランブル交差点を描いたもので、内容はメンフィスから(東京などの)都会に思いを馳せる男の物語だ。その約10年後、日本からメンフィスに向かったのがORITOだった。


CURTIS MAYFIELD 『We Come In Peace』 Curtom(1985)
メンフィスとは関係ないものの、“メイフィールド”を歌ったORITOの念頭には少なからずカーティスの名前が浮かんでいたことだろう。これはシカゴから南部のアトランタに拠点を移したカーティスが80年代に放った〈ラヴ&ピース〉な内容のアルバムで、温かい眼差しと優しさに満ちた歌声で人間愛を歌い上げている。おそらく“Baby It's You”のような歌世界をORITOはめざしていたのだ、と思う。

ROY YOUNG 『Memphis』 Tommy Boy(2007)
オラン“ジュース”ジョーンズの97年作に続くトミー・ボーイ発/ロイヤル・スタジオ録音作。ジャマイカ生まれの英国育ちで現在イスラエル在住というシンガーだが、同じくメンフィス詣でをした〈異邦人〉としてはORITOに近い存在だと言えよう。70年代にUKノーザン・ソウルのシーンと絡んでいた人ならではの南部ソウル追求型作品で、リロイ・ホッジズらを従えてシブく枯れた喉を聴かせる。