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第40回 ─ オー・ブラザー!

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2009/07/22   18:00
ソース
『bounce』 312号(2009/7/25)
テキスト
文/林 剛

ジャクソンズの作品が一気にリイシュー!と思ってたら、こんなことになろうとは……そんなわけで今回はジャクソン兄弟とその影響下にある同時代のブラザー・グループを紹介。マイケルもジャクソン5も凄いけど、ジャクソンズだって伝説だぜ!!


  マイケル・ジャクソンの死は、あまりに突然すぎた。いまだに彼一流のアトラクションに付き合わされているんじゃないかと、そんな気さえする。同時に、音楽家としてのMJを愛してきたファンは、連日TVをつけるたびに歯痒い思いをしているのではないか。〈キング・オブ・ポップ〉としての偉大さを(数字だけで)伝えつつも、結局はスキャンダラスな側面を強調する報道の数々。もちろん、いろいろあったMJだけど、真実はひとつであるはずの死因や遺産の行方を詮索するよりも、この機会にこそ、永遠に変わることのない彼の輝かしい音楽キャリアを真摯に伝えたらどうか。〈なぜ死んだのか?〉ではなく〈どう生きたのか?〉を。

 このように説教めいたことを言いたくなるのは、日本で彼の音楽キャリアが語られる際、例えばジャクソンズの話題がこれっぽっちも出てこないからでもある。ジャクソン5を経て80年代に『Thriller』が世界的にヒット……というような端折りまくったキャリアの解説は、間違いではないが、MJの真実を十分に伝えていない。それでは〈子供〉と〈お化け〉に反応しただけのように思える。

 ジャクソンズはマニアックなグループでも何でもない。ジャクソン5がモータウンを離脱する際に、(弟マイケルの死を公式発表することになった)ジャーメインのみがレーベルに留まって脱退したため、代わりに末弟のランディを加えて名称を改めたのがジャクソンズだ。エピックと契約した兄弟は、まず〈兄弟愛の街〉=フィラデルフィアに向かってフィリー・ソウルの立役者であるギャンブル&ハフと組み、76~77年にかけて流麗なサウンドを纏ったアルバムを2枚出した。そのギャンブル&ハフにプロデュース能力を認められた兄弟は、その後グレッグ・フィリンゲインズらエピック時代のMJ作品のバックも支える面々に助力を得てセルフ・プロデュースのアルバムを仕上げていく。今回紙ジャケでリイシューされた一連のアルバムを順に聴いていけばわかるように、それらはMJの各ソロ作と音楽的にシンクロしていたりするのも興味深い。78年の『Destiny』は『Off The Wall』(79年)と、80年の『Triumph』は『Thriller』(82年)と、84年の『Victory』は『Bad』(87年)といったように。惜しくも今回の復刻ラインナップからは外れたが、テディ・ライリーらが関与した89年の『2300 Jackson Street』にも『Dangerous』(91年)の要素が芽吹いていた。MJのソロ作におけるダンサブルでスムースなグルーヴは、ジャクソンズの諸作で培われ、それを進化させていったものだとも言えるのだ。

▼このたび紙ジャケでリイシューされたマイケル・ジャクソンの作品を紹介。