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第112回 ─ electraglide presents Warp20 @ 幕張メッセ 2009年11月21日(土)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2009/12/09   18:00
テキスト
文/石田靖博、北野創

 エレクトロニック・ミュージックの老舗……というイメージからどんどん逸脱し、いまやボーダーレスな良作を頻発しまくりのUK品質保証レーベル、ワープが今年で20周年! 豪華ラインナップが揃った記念イヴェントの模様を、bounce.comでは各アクトごとにレポートいたします!!

21:00~
■DJ YOGURT @ Room9

  記念すべき〈ワープ20周年祭〉で一番手という大役を任されたDJ YOGURTは、緩めのハウスやダビーなダウンテンポ曲などを織り交ぜたバレアリックな選曲でイヴェントの幕開けをまったりと演出。温かでまろみを帯びた低音の響きがフロアを心地よく震わせ、百戦錬磨の技術と構成力に裏打ちされた淀みないミックスでトリッピーな音世界を生み出していく。終盤でヨ・ラ・テンゴによるサン・ラー“Nuclear War”のカヴァーを投入するなど、ジャンルに捉われない自由奔放なDJスタイルは現在のワープの音楽性とも共振するところがあり、まさに先陣を切るに相応しいプレイを披露してくれた。*北野

22:30~
■HUDSON MOHAWKE @ Room9

  DJ YOGURTの終幕と同時に後方の幕が左右に開いて巨大モニターが登場! アルバム『Butter』のジャケットを飾った斜体のロゴが表示され、もっさりナード風のモホーク君(ちょっと太った?)が姿を現すと場内には大きな歓声が。今年10月にアルバム・デビューしたばかりとはいえ、いまもっとも期待すべきビートメイカーのひとりとして徐々にその名を浸透させているだけに、やはり注目度は抜群。フロアにも一気に人が集まってきた。

  何かの映画からサンプリングしたかと思しき女性のモノローグでゆっくりと幕を開けると、その後は『Butter』の楽曲を中心に、煌びやかなシンセ音や突飛な声ネタ、つんのめり系のビートなどが絡み合う、ドープとファニーが邂逅したようなオリジナリティー溢れる音世界を創出していく。後方のモニターには昔のTVゲームや映画などをコラージュした映像が映し出され、その80年代風のレトロで安っぽい作りが独特のポップセンスを持った楽曲とシンクロする様が妙にサイケデリック。“Overnight”“Rising 5”といった人気曲もあらかた披露し、最後は女性ヴォーカルをフィーチャーしたワープ移籍前の名曲“Ooops!”で緩やかに締め。曲の繋ぎなどには粗削りなところもあったが、十分な才気と伸びしろを感じさせるライヴだった。*北野

22:30~
■FUMIYA TANAKA @ Room11

  停電のように薄暗い幕張メッセに突入するも、セカンドフロア的な〈Room11〉にはまだまだ人が少ない。そんななかを全力疾走してステージ前のベスト・ポイントに移動し、フミヤのDJを浴びる。広すぎるほどの会場だが、低音がボディーブロウのように響いてくるサウンド・システムには予想外の喜びが。この日のフミヤ兄さんは、あきらかにワープ祭という場を意識した選曲で、90年代テクノのような展開の多いトラックを丁寧にミックス。と言ってもホントに古い曲なのかもしれないし、オールド・スクール回帰著しい最新クリックなのかもしれないし……と思わせる、古典と最新のループがテクノの素晴らしさ。ハット&ストールという伊達男的フミヤ兄さんの装い最高、裏が!!!なのにフミヤに来る人最高、テクノ超最高!!! *石田

24:15~
■STEVE BECKETT @ Room9

  某コンビニに〈社長のごはん〉なるシリーズがあるが、さしずめ今回は〈社長のDJ〉であろう。ワープ社長であり、一部ではエイフェックス初来日時にリチャード熊に入ってたことでも知られるスティーヴ・ベケットのDJは、ステージ前の溝のようなブースでのプレイであった(社長なのに!)。もう初っ端からアンダーグラウンド・レジスタンスの大名曲“Amazon”、そこからブリーピーなテクノ~流麗エレクトロニカ~ピュア凶暴ドラムンベースをスムースなミックスとは無縁のぶっ込みスタイルで繋ぐ繋ぐ。簡潔に言えば、いかにも(というか当然か)ワープの音が好きそうな人の選曲であった。社長なのにその場所最高、エイフェックスもかかって最高、ブレないワープ的センス最高潮! *石田

24:30~
■CLARK @ Room11

  パーカーのフードを目深にかぶった、いかにも英国のパーティー・ピープルっぽいスタイルで登場したクラーク。立ち上がりから強烈なシンセ音がビキビキと唸るエレクトロ調の楽曲で観客の目を一気に覚ましたかと思うと、近年のハードコアなレイヴ路線を踏襲する攻撃的なナンバーを次々と投入して、場の流れを完全に掌握。

  “Suns Of Temper”“Luxman Furs”といった最新作『Totems Flare』からの楽曲を中心に、メタルネタのゴリゴリ・チューンやブレイクコア一歩手前の狂騒的なナンバーまでが矢継ぎ早に繰り出され、もはや一寸先の展開も読めない状況に。改名前のクリス・クラーク時代から、トリッキーかつ巧みな曲構成で好事家たちの評価を得ていた彼だが、その才能はライヴでもそのまま大爆発! 緑色のレーザー光線が放射状に飛び交うなか、ノイズまみれのカオティックなビートが次々と表情を変えながら迫り来る壮絶な光景は、果たして愉悦の時間だったのか、それとも悪夢のひと時だったのか? これは体験した人にしかわからない奇跡だ! *北野

▼文中に登場したアーティストの関連作を紹介

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