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第48回――フィリーの真髄

PIRの宝物庫をご開帳――(2)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2010/09/28   19:10
更新
2010/09/28   19:11
ソース
bounce 324号 (2010年8月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次、林 剛

 

JEAN CARN 『Jean Carn (1976)

夫だったダグ・カーンとスピリチュアル・ジャズ系の作品を出し、ノーマン・コナーズとの共演などを経てPIR入りした実力派歌姫のソロ・デビュー作。ギャンブル&ハフ作のアッパーなダンス・チューン“Free Love”を筆頭に、ジャジーな曲も織り交ぜて、キュートな一面を見せながら余裕のある安定した歌いっぷりでリスナーを昂揚に導くスタイルは彼女の真骨頂と言っていいだろう。“If You Wanna Go Back”などのフロア人気曲も含む。*林

LOU RAWLS 『All Things In Time』 (1976)

シブいバリトン・ヴォイスを持ち味としたルー・ロウルズ。これはPIRでの初作にして、生涯最大のヒットとなったラテン・タッチの優雅なミディアム“You'll Never Find Another Love Like Mine”を含む名盤だ。従来のジャズ~ポピュラー路線をキープしながらギャンブル&ハフ流儀のフィリー・サウンドに則ってダンディーな大人の色香を振りまくルー。“Groovy People”のようなシャッフル・ビートのアップも含め、どこまでもエレガントだ。*林

MFSB 『Summertime (1976)

フィリー・ソウルのハウス・バンドによる70年代中期の名作。ちょうど主要メンバーがサルソウル・オーケストラへ移動した後のアルバムということで、畳み掛けるようなグルーヴは後退しているが、バンドのジャズ・ルーツを活かした名演が並ぶ。ギャング・スターの曲で引用されたメロウ&スムーズな“Sunnin' And Funnin'”、軽快なディスコ・ダンサー“Summertime And I'm Feelin' Mellow”など、マクファデン&ホワイトヘッド絡みの曲が秀逸だ。*林

THE O'JAYS 『Message In The Music』 (1976)

 いまもシーンの前線に立つ現役のレジェンドがオリジナルの3人で放った最後の一作。ガラージ文脈でも愛された“Message In Our Music”のように洗練されたダンス・チューンはもちろん、ゴスペル・ルーツを全開にした問答無用のノドで熱く掛け合うバラードも彼らならでは。メアリーJ・ブライジ“No One Will Do”などに使われて脚光を浴びたバニー・シグラー作のドラマティックな名曲“I Swear, I Love No One But You”もここに収録。*出嶌

THE FUTURES 『Past, Present And The Futures』 (1978)

70年代初期にPIR系列のギャンブルからシングルを出し、ブッダからのアルバムを挿んでPIRから発表したヴォーカル・グループの名盤。彼らの魅力は、1曲のなかでリードが頻繁に入れ替わるなど、メンバー5人の見せ場があるところ。軽快なアップ“Party Time Man”を筆頭に、DJウケも抜群のメロウな“Ain't No Time Fa Nothing”からスロウの“I Wanna Know, Is It Over”まで、多彩な歌声と端正なコーラスを聴かせる。*林

JERRY BUTLER 『Nothing Says I Love You Like I Love You (1978)

マーキュリー時代にもギャンブル&ハフと組み、“Only The Strong Survive”(69年)などのヒットを飛ばしたジェリー・バトラー。その彼が70年代後半にPIRと契約し、再度ギャンブル&ハフと組んだのが本作だ。深みのある歌声でバラディアーとしての本領を発揮しつつ、“(I'm Just Thinking About)Cooling Out”などではディスコ時代の清々しいフィリー・サウンドに乗って快唱。全体を通してメロウに迫る。*林

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