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シューゲイザー・エレクトロニカの元祖、シーフィールが復活!

連載
Y・ISHIDAのテクノ警察
公開
2011/02/10   21:41
更新
2011/02/10   21:42
テキスト
文/石田靖博

 

長年バイイングに携わってきたタワースタッフが、テクノについて書き尽くす連載!!

 

私、テクノ警察のプロフィールに〈クラブに目覚めたきっかけはプライマル・スクリームの91年作『Screamadelica』〉とあるのですが、この当時、プライマルが好きだったら当然の流れで、同じクリエイションの盟友であるマイ・ブラディ・ヴァレンタインも大好きだったわけです(名古屋CLUB QUATTROでの初来日公演を観たのは自慢の定番)。となると当然、いわゆるシューゲイザーも大好きだったわけです。ウルリッヒ・シュナウスに代表されるエレクトロニカ・シューゲイザーはいまでも人気が高いけど、フィードバック・ギターの洪水+甘いメロディーというフォーマットだったシューゲイザーが電子音楽に接近したのは、これから紹介するシーフィールがいたからなのだ。

もともとシーフィールはポスト・マイブラ的なシューゲイザー・バンドであったが、マイブラ・フォロワーとは言え、歴史的名作『Loveless』(91年)で展開された非ロックな領域のさらに先へ向かおうとしていた。シーフィールがテクノ的な視点で注目されたのは、EP“Time To Find Me”だと思うが、ここではトゥー・ピュア(ステレオラブのリリースで有名)からのファーストEP『More Like Space EP』(93年)に収録された“Time To Find Me (Come Inside)”のリミックスを、AFXことエイフェックス・ツインが2ヴァージョン手掛けている。そして、これらのシングル群に続いてリリースされた初アルバム『Quique』(93年)は、マイブラ的なシンフォニック・シューゲイザーを突き詰めた耽美かつ重厚なアンビエント・ダブ風の要素と、のちのエレクトロニカ・サウンドに通じるリズム感覚が溶け合ったような素晴らしすぎる内容で、個人的には彼らの最高傑作だと思う作品。2007年にはレア曲や未発表曲を追加してリマスター再発されている。

このサウンドは当然のごとくテクノ・シーンで高く評価され、のちにはワープ~リフレックスというテクノ・レーベルからのリリースを続けると同時にテクノ化が進行していくのだが、最終的には中心人物のマーク・クリフォードと他のメンバーが分裂し、シーフィールは解散したのだった。

ちなみにシーフィールほどではないが、当時からシューゲイザーとテクノ系の繋がりはあった。原曲からしてダンス・ビートを導入していたマイブラの大名曲“Soon”のアンディ・ウェザーオール・ミックスとか、2010年にまさかの復活を果たし、ウルリッヒ・シュナウスと共に来日を果たしたチャプターハウスのセカンド・アルバム『Blood Music』(93年)をグローバル・コミュニケーションが丸々リミックスした『Pentamerous Metamorphosis』が発表されたりとか(当初は『Blood Music』の限定盤のボーナス・ディスク扱いだったが、のちに単独リリース)。

それからテクノ警察がいまだに偏愛するラッシュもドラムクラブ製のリミックスがあったり……というか、メンバーのエマ嬢が当時ドラム・クラブのチャーリー・ホールと付き合ってたりとか、グローバル・コミュニケーションや当時大人気だったバンドゥールがスロウダイヴのシングルのリミックスを手掛けていたりとか。また、2002年にモー・ミュージックからリリースされたスロウダイヴのトリビュート・アルバム『Blue Skied An’Clear』で一気に注目を浴びたのが、前出のウルリッヒ・シュナウスだったりする。

そしてシーフィールの話に戻ると、個々の活動も地味になっていた2009年、彼らは古巣ワープの20周年祭〈Warp 20〉のパリ公演に突然再結成して出演したのだった。この再結成は、2007年に『Quique』が再発された際、この再結成に参加したオリジナル・メンバー=マーク・クリフォードとサラ・ピーコックでいくつかのインタヴューを受けたことがきっかけだったらしい。

さらには、そのライヴ・メンバーであるDJスコッチエッグことシゲル・イシハラと、元ボアダムズのドラムスだったE-DAことカズヒサ・イイダとで制作された15年ぶりのアルバム、その名も『Seefeel』を引っ提げて奇跡の帰還! まずは新メンバーによるリズムが強力! 先行シングル“Faults”における切れ味鋭く、かつ極太なイイダのドラムと、イシハラによる内蔵に異変をきたすほどの極悪なベースたるや! その不穏な音像の隙間からサラのヴォーカルが見え隠れしていて――これが俺たちの聴きたかったシーフィールなんだよ! 他にも“Dead Guitars”“Rip-Run”“Sway”など、テクノとかエレクトロニカとかポスト・ロックとかシューゲイザーとかの垣根をブチ破った凄まじい曲の連発! 当然のことながら最高傑作でしょ! しかも〈SonarSound Tokyo〉で待望の初来日! とりあえず押し入れに眠るシューゲイザーの象徴的なギターのひとつ、フェンダー・ジャガーを持って観に行きます(高校生バンドか)!

 

PROFILE/石田靖博

クラブにめざめたきっかけは、プライマル・スクリームの91年作『Screamadelica』。その後タワーレコードへ入社し、12年ほどクラ ブ・ミュージックのバイイングを担当。現在は、ある店舗の番長的な立場に。カレー好き。今月のひと言→人生いろいろ。そんな時に観た映画「劇場版 その街のこども」に感動。知ってる場所が映るだけでもグッときました。

 

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