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MINT CONDITION

連載
NEW OPUSコラム
公開
2011/07/13   19:17
更新
2011/07/14   16:29
ソース
bounce 331号(2011年4月25日発行)
テキスト
文/池谷昌之


デビューから20周年を迎えた〈ラスト・ブラック・バンド〉が新作をリリース!



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ミント・コンディションを表す際によく使われる〈セルフ・コンテインド・バンド〉とは、楽曲制作から演奏までを自分たちでこなす自己完結型グループのことを指す。だがそれを、流行の移り変わりが激しいR&Bシーンで20年も頑なに貫き、なおかつ人気と実力を維持するのは並大抵のことではないはずだ。ジャム&ルイスの下からデビューし、いまや90sクラシックのひとつとなった名バラード“Breakin' My Heart(Pretty Brown Eyes)”をいきなりヒットさせたミネアポリスの若者たちは、新しい時代の空気を吸い込みながら一貫してソウルとR&Bとファンクを生み出してきた。過去にはケリ・ルイス(キーボード)の脱退こそあったものの、ラファエル・サディークあたりに通じる青臭い歌声を持ったストークリー(ヴォーカル/ドラムス)をフロントマンに、リッキー・キンチェン(ベース/ギター)、オデール(ギター)、ローレンス(キーボード)、ジェフリー・アレン(サックス/キーボード)という5人のオリジナル・メンバーは不動だ。

シャナキー発となった通算7枚目の新作『7』からは、前述の名バラードを彷彿とさせる“Caught My Fire”が先行曲として披露されており、ケリー・プライスとの共演による“Not My Daddy”の収録も嬉しいトピックだ。そんな甘いメロディー群の充実に加えて持ち味のファンク体質ももちろん発揮されており、同郷のプリンスやロジャーさながらのパーティー・ファンク“I Want It”や、硬質なヒップホップ調の“7”などで聴けるのはライヴ・バンドとしても一流である彼らの躍動感に他ならない。

そういえば、“After The Love Has Gone”をカヴァーした2007年のアース・ウィンド&ファイアのトリビュート作や、錚々たるシンガーが御大たちの演奏をバックに歌った2009年のメイズのトリビュート作でもミントだけは自分たちで演奏していた。それを許されるのも実力とキャリアの賜物だろうし、いずれは彼らもそういった重鎮たちに並ぶ存在になっていくのだろう。その音楽が、いつまでも新しく最良の状態(ミント・コンディション)を保っていくことは間違いないのだから。



▼文中に登場した作品。
左から、『7』に参加したケリー・プライスの2006年作『This Is Who I Am』(GospoCentric/Jive)、ミント・コンディションの参加作品、アース・ウィンド&ファイアのトリビュート盤『Interpretations: Celebrating The Music Of Earth, Wind & Fire』(Stax/Concord)、メイズのトリビュート盤『Silky Soul Music: An All-Star Tribute To Maze』(Brantera)