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ドクター・フィールグッド 「オイル・シティ・コンフィデンシャル」

連載
SPECIAL FEATURE
公開
2011/07/22   10:33
更新
2011/07/22   11:45
ソース
bounce 334号(2011年7月25日発行)
テキスト
文/吾郎メモ


もっとも危険な不良ロッカーは誰かって? そんなのコイツらに決まってるだろ!!



DR.FEELGOOD_A



70年代の半ばにロンドンを中心に興ったロック・ムーヴメントで、文字通り主にパブで演奏されていた〈パブ・ロック〉。その音楽性はシンプルなロックンロールであり、リズム&ブルースの要素を含むものが多かった。パブの酔客を相手に演奏されるわけで、オリジナルを演るなら曲の良さに加えて熱いパフォーマンスをしないと聴いてもらえないというタフな環境のなかバンドは鍛えられ、そこで人気が出たものだけがビッグになる。

代表的なパブ・ロック・バンドとして多くの人がまず思い浮かべるのは、このページの主役=ドクター・フィールグッドだろう。ウィルコ・ジョンソンが弾くピックを使わないザクザクとしてマシンガンのような独特のギター・リフ、リー・ブリローの荒々しいヴォーカル、リズム&ブルースを元にしたシンプルなリズムが一体となった粗っぽくも熱い演奏はロンドンのパブを熱狂させ、すぐにその人気はパブでは収まりきらなくなり、全英No.1ヒットを生むまでに拡大した。いまとなっては何となくロック通が聴いているような雰囲気も漂うので、不思議な感じもしてしまうが、多くの人たちが彼らの音楽をポピュラー・ミュージックとして親しんでいたのだ。

そして、このシンプルさを追求したドクター・フィールグッドのサウンドはすぐ後に控えていたパンク・ロック爆発の下地を作っていたということも併せて考えると、ロックの流れのなかで非常に重要なバンドであり、主にミュージシャンへの影響力は現在でも絶大だ。しかしながら、特にUKにおいては一般的には少し忘れられた存在になりつつあったのもまた事実である。

ジュリアン・テンプル監督は現在の彼らの評価の低さに疑問と怒りを持ち、ドキュメンタリー映画「ドクター・フィールグッド オイル・シティ・コンフィデンシャル」を撮ったという。本編の舞台はロンドンではなく、彼らの出身地であるエセックス州のキャンヴェイ・アイランド。バンドの原風景として曇天のなかで浮かび上がる石油タンク群(オイル・シティと呼ばれる所以)をバックに、ギョロ目の眼光が異常に鋭いウィルコ・ジョンソンの語りがあり、そこにテンプル監督の得意とする演奏シーンや関係者へのインタヴューなどさまざまな素材をカットインすることで、バンドの姿が浮き上がってくるという作りだ。

この手法はデビュー作であるセックス・ピストルズ主演の「ロックンロール・スウィンドル」から監督が確立してきたもの。時代背景、周辺の環境を盛り込むことによってバンドの姿を立体的に描き出す効果がある。ロンドンはイースト・エンドの庶民の避暑地でもあったキャンヴェイ・アイランドでドクター・フィールグッドがどのように誕生し、ローカル・バンドとして活動した後、どのようにロンドン・パブ・シーンを起点に全国的な人気アーティストになっていくのか、というのがテンポの良い映像を通じて語られていくのだ。

なお、このたび登場したDVDには、ボーナス映像としてウィルコの未公開インタヴューなども収録されているので、映画館で観たというファンもチェックして損はない。



▼ジュリアン・テンプル監督が手掛けたドキュメンタリーDVD。
左から、「ロンドン・コーリング ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー」(ジェネオン・ユニバーサル)、「グラストンベリー」(ポニーキャニオン)

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