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THE BAMBOOS

連載
NEW OPUSコラム
公開
2012/05/16   00:00
ソース
bounce 344号(2012年5月25日発行)
テキスト
文/池谷昌之


堂々たるニュー・アルバム『Medicine Man』に込められた魂とは



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「バンブースがファンク・シーンから生まれたからって、僕らの音楽がインディーやフォーク、もしくはエレクトロ・ミュージックより新しくないとか、よりレトロというわけじゃないんだよ」。

これは、前作『4』リリース時のランス・ファーガソンの発言。ギタリスト兼バンド・リーダーの彼を含め現在は10名から成るメルボルンのバンド、バンブースは2001年に結成された10年選手だ。矢継ぎ早にファンクを叩き込んだ初期の鮮烈さからか、いまだディープ・ファンクのイメージを持つ人は少なくないようだが、彼らはそれを否定するかのように、リリースを重ねるごとにヒップホップ、ロック、サイケ、ノーザン調、モッド風情などさまざまなテイストを披露し、作風の幅を広げ続けている。自分たちの音楽にレッテル貼りされることを拒むような冒頭の発言があった前作は、その幅広さの集大成と言えるもので、もちろんそれは聴き手にとって好ましい進化だ。

「これまでのバンドの成長にはすごく誇りを持ってる。リスクを負って、音楽を前面に推し進めることにずっとこだわってきた。僕がそれを止めるときは、バンドが終わるときだよ。すべてのことが変化し、前進していなければならないんだ」。

そしてこれが、このたびリリースされたニュー・アルバム『Medicine Man』における発言だ。では、彼らは本作でどう〈前進〉したのか? まず大きなトピックとして挙げられるのが、正式メンバーに迎えたカイリー・オウルディストをはじめ、アロー・ブラック、ダニエル・メリウェザーなど、初めてすべての曲にシンガーを迎えたことだ。なかでも、ジェイムズ・ブレイク屈指の人気曲を生音で仕立て直した“The Wilhelm Scream”と、故エイミー・ワインハウスへの鎮魂歌である“Window”の2曲が今作を象徴すると言っていいだろう。ベース・ミュージックにソウルを注入し直した前者と、レトロ・ソウルのムーヴメントを巻き起こした後者、どちらもいまの時代に〈歌でソウルを取り戻す〉役割を果たした名前だ。バンブースが、いま求められるソウル・ミュージックの解釈に真正面から取り組んだ結果が、これらのオマージュに端的に表れているとは言えないだろうか。

ジャズ・ファンクの出自から逸脱し、柔軟な音楽集団へと拡大していくバンブース。いままでの幅広さを保ちつつ、〈ソウル〉と〈歌〉を基調にしたアルバムとなった今作のように、彼らの進化に心躍らされる機会はまだまだ何度もありそうだ。



▼バンブースのニュー・アルバム『Medicine Man』(Tru Thoughts/BEAT)

▼『Medicine Man』に参加したゲストの作品を一部紹介。

左から、アロー・ブラックの2010年作『Good Things』(Stones Throw)、ダニエル・メリウェザーの2009年作『Love & War』(J)

▼関連盤を紹介。

左から、ジェイムズ・ブレイクの2011年作『James Blake』(Atlas/Polydor)、エイミー・ワインハウスの2011年作『Lioness: Hidden Treasures』(Lioness/Island)

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