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サイモン・ラトル指揮『ビゼー:歌劇「カルメン」全曲 』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/08/22   20:50
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
text:古川陽子(タワーレコード本社)

新たなる名盤が誕生!

ラトルの最新録音は『カルメン』全曲です。オケは手兵ベルリン・フィル。聴きどころたっぷり度、作品としての充実度、完成度含め、数あるオペラの名曲の中でも非常に高い評価を得ているこの傑作を現代のカリスマ、ラトルが挑戦するというだけでも興味深いです。 今年の4月にザルツブルク・イースター音楽祭で演奏され、その後ベルリンで行われた演奏会形式のライヴを収めたものになります。カルメンにはマエストロの夫人でもある名花コジェナー、そしてドン・ホセにはテノールのカウフマン、ミカエラはキューマイヤー、エスカミリオはスモリジナスという顔合わせ。ラトルはこの作品を名画「モナ・リザ」に例え「何度でも聴くことが出来て、聴くごとに異なる面が見える」と称賛し、またコジェナーは「初演は小さな劇場で行われたもので、決して大声を張り上げて歌うものではなかった」と語り、2人が感じた本来の新しい『カルメン』像を築き上げていった様子が伺えます。そしてその通り、本来のコジェナーの持ち声にも合ったニュアンスの効いた語り口で新鮮なカルメン像を描き出しています。

人気のカウフマンもドン・ホセをナイーヴさも出しつつ演じ切り、キューマイヤーは純真可憐なミカエラにぴったり。透明感のある美声を披露して、カルメンとのキャラクターの対比が良く出ていて、素晴らしい効果を舞台にもたらしています。スモリジナスはエスカミリオには必須の男前ぶりが素敵です。

国内盤のみ、このライヴの模様の一部とラトル、コジェナー、カウフマンのインタヴューを収めたDVDが付きます。演奏会形式とはいえ、なかなか魅惑的なコジェナーのカルメン、一見の価値があります。もちろん名曲《ハバネラ》と《セギディーリャ》も入っています。ぜひお見逃しなく。『カルメン』の録音に確かに新しい名盤が誕生しました。

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