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SILLYTHING

連載
360°
公開
2012/10/12   18:30
更新
2012/10/12   18:30
ソース
bounce 348号(2012年9月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/南波一海


SILLYTHINGとして再出発したこのバンドがめざすものとは……?



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SILLYTHINGとは、THE WAYBARKとして活動していたロック・バンドがコンセプトを一新し、再始動したプロジェクトである。そして、そのファースト・アルバム『cross wizard』は——参加した面々の詳細については別掲のコラムを読んでいただきたい——あきらかにそれまでのバンド活動ではできなかったことが詰め込まれまくった意欲的な作品となっている。しかし、ある疑問が頭をもたげてくるのが正直なところ……どうしてこうなった!? ヴォーカル・成田大致とは旧知の仲であり、SILLYTHINGの参謀的な存在である森繁引に話を訊いた。

「大致から〈メンバーの書いた曲は歌いたくねえ〉みたいな愚痴を死ぬほど聞かされてて。だったら自分の好きな人に曲を書いてもらって、言い訳しないでやってみろよと。それにいま、職業作曲家さんが作った曲って断然おもしろいじゃないですか。“ハッピー☆マテリアル”(アニメ「魔法先生ネギま!」主題歌)とか“もってけ!セーラーふく”(アニメ「らき☆すた」主題歌)はやっぱり衝撃的でしたから」。

ということで、「バンドとしてはリスキーかもしれない」という思いはありつつも、自分たちがおもしろいと思う作家に作詞や作曲を依頼。そうして出来上がったのがこのアルバムというわけだ。大隅知宇や只野菜摘、AKIRASTAR、夢眠ねむという並びは時代の流れを意識していて、〈いま〉を強く感じさせるものだが、“SOSガール”を「いぬ」で知られる漫画家の柏木ハルコが作詞しているのには、流石に驚かされた。

「柏木先生は猟奇的な漫画を描かれるじゃないですか。この勢いある曲とあの世界が合わさったらどうなるかなって。無責任ですけど、おもしろいものができるだろうと。だいたい、おもしろいかどうかでしか動いてないですよ。全部、好きだから頼んでます」。

それにしても、打ち込みが主戦場のアイドル・ソングを作る作家に楽曲を依頼して、それをバンド・サウンドに当てはめるのはユニークなアイデアだ。

「打ち込みでできるならバンドでもできるだろうと。あんまり深く考えてないです。勢いと運だけで進んでいたところもあって(笑)。ダメもとでお願いしたらOKが出て、曲をもらったらその場で覚えながらすぐにレコーディングしていく感じ。みんなの気迫だけでやりました」。

森いわく「全曲名曲にしたかった」とのこと。それまでのバンドの方向性にメスを入れ、ドラスティックなまでに変貌を遂げたSILLYTHINGの最初の成果は如何に——そこはリスナーに委ねることにしよう。ちなみに彼は、「これにOK出したレーベルもおかしいし、そもそも俺がインタヴューを受けてるのもおかしいですよね」と笑いながら話していた。そして最後に、厳しすぎるくらい冷静な目線を持っている彼が、そもそもどうしてそこまでバンドに関わろうと思ったかを尋ねると、こんな答えが。

「毎日晩ご飯を奢ってもらってるので、何とも言えないです(笑)。これがオチですかね、ハハハ」。



▼関連盤を紹介。

THE WAYBARKの2012年作『THE WAYBARK』(GARURU)