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第5回:ジェリーさん編

アイドルの子たちもそうやって仕事をしていると思うんです

連載
アイドルのいる暮らし
公開
2012/09/24   14:30
更新
2012/09/24   14:30
テキスト
文/岡田康宏(サポティスタ)


アイドルの子たちもそうやって仕事をしていると思うんです



ヲタ活以上に大事にしているのは自分の仕事です。アイドルが世の中に作品を産み出し、それが評価されるように、私自身も広告をつくり、その成果が問われる仕事をしています。私にとって仕事とヲタ活は表裏一体なところがあり、自分の企画のきっかけや切り口をアイドルからもらうこともあれば、モチベーションをもらう事もあります。そこで得たお金をアイドルに還元しているのかもしれません。なので、仕事を犠牲にしてヲタ活しないよう、現場の翌日に疲れが出たり気が緩まないよう、あえて休むなど調整します。人を指導する立場なこともありますし。とはいえ、仕事中も時間を見つけて情報チェックやネットの書き込みをする事はありますけど。

職種的に、定時から定時までのお仕事ではないし、自分が手を抜いたり力を抜いたりすると、評価が全部自分に跳ね返ってくる。この歳になると下ができて私が上司になるので、その手前もある。あの人も年を取ったよねとか、アイドルにかまけすぎじゃない?とか言われるのイヤじゃないですか。この年でアイドルのヲタをするからこそ、ちゃんとやらなきゃいけないという意識はもちろんあって。

でもきっとアイドルの子たちもそうやって仕事をしていると思うんですよ。つねにファンの目がある。その中で絶えず評価され続けている。だから近しい意識を持っているのかなと思います。仕事をしているからアイドルのことを好きでいられるし、仕事を頑張らないのであれば、自分はこんなに時間を使って、彼らを見ている資格もないかなと思っているんです。頑張っている子たちを応援するのに頑張りすぎてしまって、自分の本来やるべきことをやらないんだったら、本末転倒もいいところなので、そこは違うなと。

お医者さんが今日手術かったるいんだけど、って、適当に縫合とかしたらいやじゃないですか。たぶん、その感覚に近くて。やるんだったら、ちゃんと仕事するし、やれないときはちゃんと休みをとって心も体もリセットした上で職場には行くようにしています。それは自分の中のルールとして持っています。だから夜行バスで会場に行って、夜行バスで帰ってきて、すぐ職場に直行とかをやっている人はすごいと思うけれど、自分はそれはやらないし、やろうとも思っていない。そこで休みを取る代わりに、仕事のクオリティを落とさないための調整を前後で絶対にします。その辺は厳しくしようと努めているところです。

ずっと机の前に座っていなきゃいけない仕事ではないし、期日までに必要なものが提出できれば良いので、その分、時間は自由が利きますし、それはそれなりの年齢になってアイドルファンをやっていることの一番のメリットかもしれません。金銭的な面でいうと、収入が増えているのも確かなんです。ただ、その分、今まで以上にお金をかける部分も多くなっている。今までだったら夜行バスで行っていたところを新幹線にする、飛行機にする、となれば交通費は跳ね上がりますし、疲れがたまったなぁと思うとマッサージにも行きます。遠征したら美味しいものも食べたい。そういう部分では出ていくものも増えています。

だからこそ、自分の中では嵐でもセクシーゾーンでも一つのツアーで使うお金の上限を決めることにしまています。ツアーは友人と2人で行くときが多いので、チケット申込時の立替の分も含めて、動かせるお金を最初に算出します。時期や状況によって変わりますが、一ツアーで使う金額はチケット代、交通費、宿泊等を含めて20万円が一つの目安でしょうか。それ以上の金額となると、最初から無理を承知で行くことはしません。



ときにはあなたよりもジャニーズを優先します、ごめんなさい



私はアイドルが恋愛対象ではないので、お付き合いもしますし、結婚していたこともあります。付き合う男性をアイドルと比べて、なんであなたはニノみたいにかっこ良くないの、とかは思わないですから(笑)。ただ、元旦那と一緒にコンサートに行ったことはありません。旦那さんだった人は、ヲタ気質が強くて、アニオタだったし、ゲームもすごい好きだったし、だから私のジャニオタの面に関しては理解はあるものの、一緒に行くことはなかったですね。わたしも彼のアニメやゲームに関して理解はしているけれど、彼がはまっていたエヴァンゲリオンも攻殻機動隊も、私は見たことがありませんでした。

結婚とか離婚に関してはアイドルはあまり関係していなくて。元旦那は一番最初に就職したシステム会社の同僚だったんです。01年にお付き合いが始まって翌年に結婚して、04年に離婚しました。1年くらい付き合ってから結婚したんですけど、結婚してからわかることっていろいろあるじゃないですか。お互いの人柄はわかっていたんですけど、結婚してわかったことはお互いの実家のこと。彼の両親の感覚とうちの両親の感覚とが、何を大事にするかとかがまるっきり違って、つらかったですね。そこのずれが自分の中で消化しきれなくなってきて。

あとはスタートラインは同じシステム会社だったので同じ給料だったんですけど、私は付き合い出した頃から何度か転職をしました。彼はずっと同じ会社にいたんですが、あるとき気がつくと給与面ですごい差がついてしまって。私のほうがだいぶ高くなってしまっていたんですよ。だけど、家に帰ってきて御飯作って洗濯して掃除して、というのを全部私がやっていたので疲れてしまって。離婚してからお付き合いした人もいますけれど、ジャニーズ好きってことは最初から隠さないです。アイドル好きです、ジャニーズ好きです、ときにはあなたよりもジャニーズを優先します。それはごめんなさい。でもその優先する感覚は仕事を優先するのに近い感覚です、みたいな。だからそこは多めに見てくださいって最初に言いますね。

彼氏は一緒にいようと思えば24時間、365日一緒にいられるわけじゃないですか。アイドルに会えるのって年に何回よ?そのチャンスを私から奪うんですか?って。もちろん大人なんで、友だちの結婚式が舞台初日と重なったら、結婚式に出た衣装のままで舞台に駆け付けられないかってギリギリまで悩んだ上で、結婚式を選びますけど。でも結婚式に出たまんまの格好で、コンサートに行ったこともありますね(笑)。



きっとジャニーズというシステムは残っていく



「会いにいけるアイドル」というコンセプトを見つけ出した秋元康は天才だと思うんですけど、自分の応援するジャニーズのアイドルにそれをやって欲しいかというとそれは違うかなと思っています。握手してもらうことは嬉しいですが、積極的に何かができる性格ではないため、後で神対応された人の話を聞くと、羨ましくなります。だからこそ、誰にも何も対応をしない、非現実な存在でいてほしいのかもしれません。あとは神格化しておきたいんですよ。そんなに手近に会える子を好きになっているわけじゃないというのを担保しておきたいんです。私にとってはアイドルは疑似恋人ではなく、むしろ「神」「宇宙」的なところがあるので。

かつてのアイドルはテレビで見たりCDや雑誌を買ったりでしか生活の中に入り込めるものでなかったのに、今はネットがこれだけ普及しちゃうと目情(目撃情報)はいろいろ出てくるし、いろいろなやり方をすれば、いろいろな人たちのいろいろな情報が見れてしまうわけじゃないですか。彼らが人としてのリアリティを持ってしまった今、メディアを通して見るよりも、その「人」がライブやコンサート、舞台といったナマモノで見せる「普通の人とは違う才能」や「オーラ」が力を持ってるんじゃないかと思っていて。でも握手になると近すぎるんですよ。コンサートならまだステージという隔たりがあり、作品を見るわけですけど、それが一対一のコミュニケーションになると、目の前の人にどれだけオーラがあっても、もう現実の「人と人との関係」じゃないですか。それがすごいイヤなんです。単なる「人」に私は時間とお金を払っているのか、と。ただ、それでも握手は楽しいし握手会があれば行きますけどね。

嵐には07年と09年に2度の担降り(※3)ラッシュがあったんです。06年まで嵐はアリーナクラスでツアーをやっていたんですが、07年に入って、いきなりドームをやることになって。でも当時はドームをいっぱいにするほどファンはいなかったから、チケットが山のように余っていたんです。ファンの子たちは周りのジャニーズ好きの友だちを誘ったりして、とにかく、空席を作らないために必死になってドームを埋めたんです。そしたら次もドームやるって話になって。その頃は嵐のアリーナのツアーがすごく充実していたときだったし、ドームが埋まらないことも知ってたので、なんでこの枠を捨ててドームみたいなでかい箱でやるんだよって。距離も遠くなっちゃうし、コール&レスポンスもグダグダになっちゃうし、踊られても見えないし、第一埋まらないよ!なんだよこれ?って納得できなかったです。でもね、最初のドームと違って2回目からは普通に埋まるようになってしまったので、びっくりしました。そのときに距離を感じた子たちが一斉に降りちゃったんですよ。ちょうど、嵐という花のつぼみが膨らみはじめたころですね。
*注*3 担降り・・今まで好きだったアイドルの応援をやめること。ジャニーズでは、好きなアイドルを「担当」と呼び、自分のことを「○○(アイドルの名前)担」(例:二宮担)と名乗ることから、その人の応援をやめること、つまり「担当を降りる」こと、または前の人から新しい人へ担当替えをすることを指します。
*嵐から担降りする(嵐ファンをやめる)、嵐に担降りする(嵐のファンになる)

次は09年ごろ。デビュー10周年のとき。嵐は花開いたというか、オリコン年間1位もとったし、国民的と言える地位が確立されて、そこでまた見届けた感がでたんですよ。そこで卒業しますって言って降りた子たちが第二段階ですね。その担降りブームが去り、今まで残った子たちは、うだうだ言いながらずっと残っている気がします。セクゾンが好きな嵐ヲタは多いんですけど、すっぱり嵐を担降りして、セクゾン担と言うよりも、嵐は「実家」「Home」といった位置づけで、ずーっと好きだと言ってる人も多いんです。こうなると、もうあとは嵐という実が熟してジャムになるくらいまで見届けようって気になりますね。

私は嵐にしてもセクゾンにしても飽きはないです。07年、09年に怒涛の担降りラッシュがあり、嵐が大きく成長することが寂しかったし、会える機会もどんどん減っていますが、会えたときのうれしさは格別。嵐が見せてくれる世界や、嵐が作り出す空間が私は大好きです。ファンを辞める時はあまり想像できないのですが、子供が生まれるとか…でしょうか。でも、子供という現実から離れたいときに、やはり私はアイドルを応援すると思います。

若い子を育成させながらデビューさせていく、ジャニーズのシステムはすごいと思います。K-POPが出てきたときに、ジャニオタを辞めてK-POPに行ってしまった人は多いんですよ。K-POPってその子の出てきた背景とか歴史だとかを知らなくても、テレビに出ている3分とか5分の間に全部パフォーマンスで見せてしまうので、すごくわかりやすいように思います。見てカッコいい、好き。曲がいい、CD買う。その直感的な反応の早さがすごい。でも、売り出し方が底引き網漁みたいな気がして、私はあまり好きではないです。きちんと売れる環境を作り育てるのではなく、一気に売り上げを伸ばすためにお金を取れるところから根こそぎ集金する感覚があります。今、K-POPは日本の歌謡曲の世界を席巻していますけど、それはここ数年経てば沈下してしまうだろうなと。そうなったときに誰が残って誰が残れないかはわからないけど、きっとジャニーズというシステムは残っていると思っています。


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