こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

NEWS & COLUMN ニュース/記事

Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之

Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之(2)

公開
2012/10/18   13:26
ソース
intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)
テキスト
interview&text 三宅美千代

この展覧会は、金沢21世紀美術館が実施する美術館教育活動「金沢若者夢チャレンジ・アートプログラム」の第6弾となるもので、芸術活動への参加の機会を市民に提供することで、若年層の社会参加や教育を支援することを目的としている。「美術館はメディエーター」をキーワードに掲げて2年目となる今回は「他者」をテーマにすえ、自己や他者との対話の場、社会との関わりを実現する空間を美術館内に立ち上げることをめざす。

エレロと関口の対話から生まれた空間はまさに、複数の土地と文化を結びつける媒介となり、さらにそこに集まる人びとをつなげる広場の役割を果たしている。会期中、展示室では来館者が自由に参加できるウクレレ体験ワークショップ「ウクレレフリーステージ!──誰でもウクレリアン」が毎日開かれており、誰でもウクレレに触れることができる。初心者でも、少しの練習で簡単な課題曲を弾けるようになる。参加者が階段状の火山に思い思いの姿勢で腰をおろし、全員で演奏する様子はYouTubeに毎回アップされている。このプロジェクトについて関口は語る。

「誰でもウクレレを弾ける空間をつくろうと思っていたんですが、美術館を訪れる人の大半がウクレレに触ったことのない人たちだろうなということで、まずウクレレという楽器をその空間のなかで体験してもらうのがいいのではないかと美術館と一緒に考えました」

このような試みの基底には、ウクレレは人と人とのあいだのコミュニケーションをごく自然につくりだすことができる希有な楽器だという関口の考えがある。ころんとしたフォルムと精神をリラックスさせる音色は親しみやすく、演奏の腕前とは関係なく、皆がハッピーな気分になれる。

「ウクレレは弦楽器で一番簡単なんじゃないですかね。まず4本の弦。親指で楽器を押さえて、残り4本の指があって4本の弦があるというのが、人間工学上あっているわけですよね。ギターだと弦があと2本あるから、そこでうわっと思ってしまうけど(笑)。あとは軽さ。やっぱり持ったときにフレンドリーに感じるかどうかによって、その楽器をマスターできるかどうかが決まるという感覚ってあるじゃないですか。それがウクレレの場合は、誰に対してもフレンドリーな感じがするんじゃないかという気がします」

フェデリコ・エレロ、関口和之らアーティストとプロジェクト・メンバー
写真提供:金沢21世紀美術館

楽器をとおして人間関係の輪が広がっていくことも、他の楽器にはないウクレレ特有の魅力だという。関口自身、「ウクレレピクニック」というイヴェントを日本とハワイで立ち上げて、国内のみならず、ハワイや世界中のウクレレ・シーンとも交流を深めている。

「それがいま一番おもしろいですね。簡単に人と人とがつながっていく。最初は日本だけだったのに、ハワイに行ったらそこでまたたくさん友達ができて。ウクレレのケースをさげて歩いているだけで、『何のウクレレだ?』とかって聞いてくるんですよ。そういうところから始まって、いまは世界中に友達ができた。お互いにウクレレの良さをわかりあっている者同士。それが心の深いところのつながりのような感じがするんですよね。世界中どこに行っても、それは同じなんですよ」

8月最後の日曜日には、同展覧会の夏の特別イヴェントとして、美術館の野外スペースで「ウクレレサミット」が開催された。ハワイのウクレレ・イヴェントと同じように、午前中から日没まで、自然のなかでゆったりと音楽を楽しむことができる。入場は無料で、誰でも参加が可能だ。美術館をおとずれた家族や恋人たち、たまたま通りがかった人も、美術館のきれいな芝生でくつろぎながら演奏に耳を傾けていた。食べ物、ウクレレ、雑貨などのブースも出店していて、音楽を聴きながら昼食をとったり、買い物したりすることもできる。

出演者は、子どもたちから熟達した演奏者までじつにさまざま。関口のバンドに加え、プロジェクト参加者からなるグループ、地元金沢や北陸を中心に活動するウクレレ・ユニット、東京などから集まった演奏者たちがステージにのぼった。華やかなフラ・ダンサーたちも登場し、会場はハワイのマナ(エネルギー)に包まれた。

関口がステージに上がる頃には、真夏の太陽もようやく傾いて、心地よい風が吹きはじめていた。ウクレレと分山貴美子の口笛の音色が、暑すぎた夏の午後のほてりを鎮めてくれる。エレロによるデザインの美術館内の空間で感じたのとおなじ風を、その夕、たしかに感じていた。色彩・形と音、音楽と美術、複数の土地や文化の交差する場所からたちおこる風。太陽とウクレレの音をたくさん吸い込んだ無数の笑顔が金沢の夕焼けに照り映えていた。

同展覧会は来年3月17日までつづく。

Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之

期間:2012年5月3日(木)~2013年3月17日(日)
10:00〜18:00 (金・土曜日は20:00まで)
休場日:月曜(祝日の場合は翌平日休場)、12月4日〜13日、年末年始
会場:金沢21世紀美術館
www.kanazawa21.jp

記事ナビ