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Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之

公開
2012/10/18   13:26
ソース
intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)
テキスト
interview&text:三宅美千代

「Aloha Amigo! ウクレレサミット」の様子/撮影:喜多直人/提供:金沢21世紀美術館、フラを披露するNa Lei Pualani Hula Studio

複数の場所や文化からたちおこる風

「Aloha Amigo!」と題された展覧会が金沢21世紀美術館で開催中だ。コスタリカ出身の美術家フェデリコ・エレロと、サザンオールスターズのベーシストとしての活動と平行して、ウクレリアンとしてユニークな活動を展開する音楽家の関口和之が参加する長期プロジェクトである。

館内の展示室には、エレロがデザインした空間《サイコトロピカル・ランドスケープ》がひろがり、そこが同展覧会のさまざまなプロジェクトの舞台となっている。カラフルな室内に身をおいてみると、さわやかな風がそっと頬をなぜるような感覚がある。エレロは、描かれた空間を観客が身体的、感覚的に体験できる絵画作品をつくることで知られている。展示室には、火山のかたちを模したカラフルな造形物がおかれ、来館者はそこにのぼったり、腰かけてウクレレに触れてみたり、そこで自由に楽しむことができる。

火山という形状は、コスタリカ、ハワイ、日本を結びつけるモチーフであると同時に、演奏空間における音楽家と聴衆の関係についてのエレロの考えに基づくものである。コンサート・ホールのように、「音楽家と聴衆のあいだにヒエラルキーが存在するような舞台は創りたくなかった。......そのヒエラルキーを反転させて、演奏者と聴衆のあいだにより水平的で平等な関係を実現し、すべての人が参加して演奏を楽しむことができる場を提供したい」と語る(2012年5月オープニング記念トークより)。

この空間は、楽器についての理解を深めてもらおうとウクレレの資料や音源を送った関口の熱意に、エレロが応答するかたちで製作された。関口は約20年前にウクレレと出会い、それ以降、ウクレレのアルバムや関連書籍の出版などを通して、日本でのウクレレ普及活動に力を入れてきた。関口にエレロがデザインした空間の印象をたずねてみると、ハワイでウクレレを弾くときの感覚に通ずるものがあるという。

「音を鳴らしてみて、あぁなるほど、という感じがありましたね。ハワイってわりとコンパクトなところなんですよ。そんなに大都会ではないし、やっぱり島という感じなんですけど、そういったコンパクトな気持ちよさがある。と同時に、広がりもあって。そういう感じがよく表現されているなと思いました。しかも、それをコスタリカのアーティストが一所懸命イメージしてくれたということで、すごいなと思いましたね(笑)」

「Aloha Amigo! フェデリコ・エレロ×関口和之」展示風景

展示室内には、関口所有のウクレレを並べたスペースもある。古いものから新しいものまで、楽器のラインアップは随時変わっているそうだ。ボディに葉巻箱を使った四角いウクレレ、ミルクキャラメルの絵柄のついた弁当箱を利用したウクレレ、1930年代に合衆国本土でつくられた青色のウクレレなど、遊び心あるセレクションになっている。

「数えたことはないんですけど、ウクレレは200本くらい持っています。そのなかから、まず見て楽しそうなもの、なんとなくアートのにおいがするものを選びました。ウクレレはつくる方々にも遊び心が出てきてしまう楽器らしくて、いままでにいろんなウクレレが古今東西つくられているんですけど、それを見ているだけで楽しい」

「最初はコレクターになるつもりはなかったんですけど、当時はそんなにウクレレ自体は流行っていなかったので、いろいろな話を聞いたり読んだりして、ウクレレの歴史についてわかってくると、このウクレレの価値をわかってあげられるのは僕しかいないなと思っちゃうんです(笑)。例えば、海外のアンティークショップに行って、楽器が隅っこに転がっていたりすると『これ、カマカなのになんでこんなところに......。じゃあ、連れて帰ってあげよう』みたいな、ね(笑)」

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