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electraglide 2012

AMON TOBIN

連載
360°
公開
2012/11/07   17:59
更新
2012/11/07   17:59
ソース
bounce 349号(2012年10月25日発行)
テキスト
文/青木正之


視覚と聴覚を突き刺すスペクタクルなライヴ・セットが日本上陸!



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クジョー名義で発表した作品がきっかけとなり、90年代半ばにニンジャ・チューンの仲間入りを果たしたアモン・トビンは、同レーベルの古参アーティストのひとりであり、コールドカットが信条としていたオーディオとヴィジュアルの複合した表現方法を、彼らと共に実践してきた実力者でもある。当時から非凡な才能を見せたサンプリング・センスやビートメイキングは、90年代に熱気を放ったアブストラクト/ブレイクビーツ/トリップ・ホップといったシーンのなかで大きな役割を果たし、ブレイクビーツ・フリークの間では初期の作品がいまなお高い評価を誇っている。

その後、彼の才能は多方面で開花し、ゲームや映画のサウンドトラック、バレエ・ダンサーであるピナ・バウシュの舞台作品で楽曲が使用されるなど、多岐に知れ渡ることになった。

そんなアモンの転換点ともいえるのが、2007年にリリースしたアルバム『Foley Room』だろう。レコードからのサンプリングに飽き足らず、高感度マイクを片手にフィールドへ繰り出した彼は、動物や虫をはじめとする自然界の音はもちろん、身の回りにある音もレコーディングして作品の一部に取り込んだのだった。さらにその手法を発展させて大反響を巻き起こしたのが昨年のアルバム『ISAM』である。自然音を完璧にコントロールした同作では、フィールドレコーディングから得た音の断片と電子音がまるで生命体のように蠢き、その美しくもミステリアスな輝きは人々を魅了した。

そしていま、世界中を驚愕させているのがその『ISAM』をステージで再現した噂のオーディオ・ヴィジュアル・ライヴである。このステージはプロジェクション・マッピングを使用し、巨大な立方体を組み合わせた3D機材を用いて、エクスクルーシヴ音源も含むリアルタイムのライヴ・サウンドと、それに連動しためくるめく映像の波が押し寄せるというもの。その壮大なスケールは観る者を圧倒するはずだ。また、立方体の中央に乗り込むアモン本人の姿は、まるでロボットに搭乗して操縦桿を握っているようにも見え、男性なら憧れてしまうかもしれない……。

坂本龍一やデッドマウス、リッチー・ホウティン、カルヴィン・ハリスらの著名人も一様に賞賛するこの一大スペクタクルは、このたび映像作品「ISAM Live」としてリリースされるのでファンならずとも必見なのだが、何と今回の〈electraglide〉ではこのライヴ・セットを従えて登場するというのだから、落ち着いてはいられない! もしあなたが〈未来のライヴ・ステージ〉を2012年現在に体験したいと思うのなら、この機会を見逃すわけにはいかないだろう。



▼関連盤を紹介。

左から、アモン・トビンの2007年作『Foley Room』、2011年作『ISAM』(共にNinja Tune)、アモンの楽曲が使用されているヴィム・ヴェンダース監督作品のサントラ『Pina』(380 Grad)