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第8回:ピストルさん編

若い頃は普通に遊んでいました。あっち側だったんですよ

連載
アイドルのいる暮らし
公開
2012/11/16   21:30
更新
2012/11/16   21:30
テキスト
文/岡田康宏(サポティスタ)


若い頃は普通に遊んでいました。あっち側だったんですよ



今の若いファンの子たちを見ると、10代20代の貴重な時間をアイドル現場だけで過ごしていいの、とは思います。ぼくは10代、20代と女の子をナンパしたりとか、今で言うリア充みたいなことをしていたんで。あっち側だったんですよ。アイドルオタからしてみれば、なんだあんなナンパとかしている奴って思うじゃないですか。僕もあっち側にいた頃は、うわっ、アイドルオタクなんてキモチが悪いって思ってましたから。だから、正反対のところに来た感じですよね。今ではキモチ悪い奴代表みたいになってますけど(笑)。

今は全然。もう土日は現場あるし無理ですよ。声かけて、メシ食いに行って、それから、みたいなプロセスがめんどうくさい。それなら風俗に行きます。当時、ナンパは文化としてありましたよ。携帯電話もないから、出会ったときにアクション起こさないといけないから。昔は女の子が親と一緒に住んでいたら、電話するとき親のワンクッションかませなきゃいけないわけだからハードル高かったですよ。今みたいにメールで簡単にやり取りとかできないからね。

そういう意味で今の若い子は羨ましい。最近の若いファンを見ていると、そういうツールがあるんなら、そっちでいくらでも遊べるのに、千円で握手券買ってぐるぐるまわる必要ないんじゃないとか思ったりはします。ステージパフォーマンスとか歌とかに魅せられてファンになっているとかなら分かるんだけど、若い子っていうのは恋人遊びみたいな感じでやっている子も多いから。その熱量を一般の女の子に使えばいいんじゃないのとか思うんだけどね。結構かっこいい子もいるのに。

ただ、ああいう若い子が入ってきてくれたおかげでシーンが活性化しているので、ありがたいですけどね。アイドルの子たちだって俺らみたいなおっさんばかりが握手会に来ると病んじゃうけど、同世代の若い子が来たら嬉しいよね。それは全然、違うと思いますよ。昔のハロプロの握手会とかは、並んでるのはおっさんばかりで、メンバーは握手するの嫌がっているんだろうなって思ってました。今は、この子たち本当に握手会を楽しんでいるなって思う時が多いですよ。握手会行かない人にしてみれば、そんなことないって思うかもしれないけれど、実際にファンとのコミュニケーションを楽しんでいるよね。そこは変わったなと思いますよね。ファンのブログをチェックしていたり、AKBなんかでも裏ではお互いのファンの話をしていることが多いらしいしね。

たまに若い子に直接そういうことを言ったりもするんだけど、リアルな女の子遊びもしながら、アイドル遊びをしている子もいるんだよね。リア充でありながら、アイドル現場にも来るって。その辺が昔とは違うのかなって思いますけれど。カップルで来る子とかも居るし、アイドル現場自体をカジュアルな遊び場の1つって捉えてる子も居るのかな。若い子はアイドルオタってことを別に隠さないって言うし、「アイドルオタは恥ずかしい」って意識を持ってること自体がもう時代遅れなのかもしれないですけどね

40過ぎて恋愛とか無理ですからね。こんなアイドルオタの生活していたら絶対無理。俺、アイドルオタで結婚して子供いる人、本当に尊敬していますよ。偉いなと思って。結婚しようと思ったことはあります。同棲していて、結婚するならこの人かなと思った人はいたんですけど、上手く行かなかった。あの子とできなかったんだから、もう無理だろうなと。23~25くらいの頃かな。お互いの親にも紹介して同棲も2年くらいしていたけれど、ダメだった。だから若いファンには僕を反面教師にして、こんな風にならないようにして欲しいなと心から思います(笑)。



最終的には、在宅の方がもっとコアになれる



昔から現場派なんです。中学高校の頃からロックのライブを見に行っていたから。好きになったらすぐに自分の目で見ておきたいというのがありますね。91年にガンズ&ローゼズがアルバム発売前に全米ツアーをやっていて、当時はインターネットなんて無いから情報源は雑誌とラジオなんですけど、「シカゴでファンが暴動」とか「アクセルがライブに2時間遅刻した」とかの記事を見るともう居ても立ってもいられなくなって。友達と2人でホテルも決めずにロスに飛んだことありました。見たいと思ったら絶対に現場に行くっていう精神はあの頃からありましたね。

今も現場派ですけど、でもアイドルオタで、例えばモーニング娘。のことを一番分かっていて、一番楽しんでいるのは在宅オタだなと思います。在宅で家にいて、すべての情報をちゃんと見て、たくさんのテレビ番組、ラジオ番組をチェックして、雑誌の記事を読んでいる人こそが、今のモーニング娘。を一番分かっているんだろうなと思うんですよ。

俺はライブは見ているけど、見ていない番組も聴いていないラジオもあるし、落としている部分もあると思うんですよ。俺の知らない鞘師ちゃん(鞘師里保)をそういう在宅の人は知っているんだろうなという思いはあります。だから、現場に行くお金がなくなって、体力がなくなったら、そっちでがんばろうかなと思っているんです。アイドルオタは全然、在宅で楽しめるはずなんで。現場で握手とか、コミュニケーション型のアイドルは無理かもしれないけれど、今のAKBも、ももクロも、ハロプロも在宅で充分に楽しめるよなと思います。

最終的には、在宅の方がもっとコアになれるんじゃないかなと思っているんですよ。YouTubeに上がっている動画も全部チェックできていないし、買ったけれど見ていないDVDも山ほどあるし。もしも体が2つあれば在宅を極めたいし、そこの楽しみをスルーしている自分がいるのもよくわかるので。人から言わせれば、お前年間何百って現場に行っていて、楽しみ尽くしているだろって思われるかもしれないけれど、それでも、結構捨てている部分はあるんだよね。今はそれくらいアイドルの楽しみ方がたくさんあるから。Ustもあるし、CS放送もあるし、在宅の楽しみも山ほどある。



サクセスの道をメンバーと一緒に歩きたい



アイドルの楽しみ方にはいろいろあると思うけれど自分の中には売れてこそ正義というところがあるんですよ。ずっと身近なところにいて欲しいという人もいるだろうけれど、あの子たちも売れたくてやっているんだし、いつまでも苦労ばかりしているより、ももクロみたいに売れてくれたほうが良いわけじゃないですか。サクセスの道をメンバーと一緒に歩きたいという楽しみ方もあると思うんです。そのためにはCD何枚も買う時期があったり。いわゆる支えるってやつですね。

元々はハロプロから入ったので売れて当然ってとこからスタートしてます。その辺の考え方は90年代の〈アイドル冬の時代〉を過ごして来た人とは根本的に違うと思うんです。アイドル全体が下火な時代を通ってきてないので。なので「アイドルブームももうすぐ終わるよ」みたいな声を聞いても全然実感が湧かないんですよね。

サクセスの道をメンバーと一緒に歩いてく楽しさを味わったのは、ももクロが初めてですね。代々木の路上でライブしてるとこから見てきて、“ももいろパンチ”“未来へススメ!”とみんなでCDバカ買いしてオリコンにランクインさせた時はメンバーと一緒になって上り詰めるんだみたいな感覚ありました。その楽しさのピークが“行くぜっ! 怪盗少女”。デイリーで1位を獲得して。それ以降はファンも増えたし、CD複数買いするイベント自体がマンネリ化したりで、そこまで積極的にイベントに行かなくなり初めてたんですけど、年明けに早見あかりの卒業が発表されて、そこから卒業コンまではできるだけ6人のももクロを見届けたいって気持ちで参加してましたね。

ももクロが売れ出して、あるときからオタがグッと引き離されちゃって、文句言う人も多かったし、俺も若干は言ったけれど、でもやっぱり彼女たちが売れたくてやっていて、横浜アリーナでライブがしたいって言って、それに向かって進んでいるんだから良いことじゃないですか。自分がそれまで楽しんできたように、直接喋ったりするのはできなくなるけれど、そんなには不満はなかったです。お互いの道が違ってしまったなということですよね。もうももクロはお星様になったと思っていて(笑)。それに、僕は2年で飽きるんですよ。だからももクロは丁度良いの。あのままももクロが〈怪盗少女〉の頃みたいに会えるアイドルをしていても、俺が会いに行ってないもん。だからタイミングとしてベストかなと。たっぷり2年間楽しんでブレイクって、ちょうどいいパターンですよね。



「売れる」の基準は彼女たちが幸せになること



ももクロと違うパターンだとAKBのぱるる(島崎遥香)があります。ぱるるがファンに初めて披露されたのは握手会だったんですけど、一目見てかわいい!ってビビっと来ました。そこからはずーっとぱるるぱるるで。9期メンバーの中では誰よりも早く運営に推されたんですよ。お披露目の公演でも、センターだったし、雑誌の表紙にも先輩たちに混ざって載ったり。

でもまだ入ってそこそこの研究生がそこまで強引に推されたって、人気が出るわけじゃないんですよね。選挙では数人の強ヲタが強引に票を入れて28位にランクインしたけど、そこを頂点くらいに運営からの推されも終わり、停滞期に入って行くんです。同期の横山由依はその辺りからメキメキと頭角を現してチームK入りしました。

握手会に行っても列は常に過疎ってる。握手中にモニターに流れてる“RIVER”の映像見ながら「私もあの頃はセンターでしたねー」みたいなことボソッと言って来たり。あの頃ぱるるの握手会に何度も行ってた人は〈励ましに行く〉ってのが共通意識としてありましたよ。だっていつ辞めてもおかしくない状況でしたから。年が明けてチーム4が結成された辺りからはかなり変わってきました。チーム4を盛り上げて行くっていう明確な目標ができたので、気持ちを入れやすくなったのかもしれないです。ステージでの表情も明らかに変わってきましたから。年末の頃には選抜のアンダーとしてTV番組にも出させてもらえるようになり、今年になってからは「私立バカレア高校」「マジすか学園3」と主役を貰って本当の意味での推され期間に突入し、今では堂々と選抜入りするようになりました。つい最近ではNMB48の城恵理子やAKBの光宗薫のように、最初から運営に推されまくったあげくプレッシャーに耐えかねて辞める子が居ますよね。ああいうのを見るたびに、ぱるるは良く踏ん張って2度目のチャンスを掴めたなと感心します。

1年前まではいくらでも買えたぱるるの握手券が今では落選で買えないこともあったり。前みたいに会って話すことはできなくなったけど、好きな子がこうして成功を手にしてる姿を見れるのはやはりうれしいですよ。成功できる子なんて極わずかですから。ももクロとぱるるからはそういうサクセスを見届ける楽しさを教わりましたよね。

オタが売れる売れないの話をすることを嫌う人もいるけれど、彼女たちがこの仕事を続けられなくなったら困るし、彼女たちが払っているだけの代償に見合うだけのお金であったり成功であったりを掴んでほしいなと思います。〈売れる〉の基準は彼女たちが幸せになることですよ。普通の同じ年の女の子よりも給料がたくさん貰えて、いい服が買えて、ちょっと贅沢な食事ができるように。それができる環境を事務所も作らなきゃいけないし、そのためにはどれだけ売れなきゃっていうのが、各事務所によって違うだろうから、それが満たされることじゃないですか。だから少なからず、ここでお金を落とさなきゃって思うことはありますよ。〈TIF〉とか、無銭でも楽しめるけれど、続くためには入場してお金払おうとか。今日はライブはタダだったけれど、楽しませてもらったからその分物販で何か買ってあげようとか。そういう風に思うことはあります。常にそうではないけれどね。

今だと前田敦子くらいは年収1億とかもらっていてほしいよね。百田夏菜子4千万とか、長者番付に名前が出るくらいもらってほしい。もう発表されなくなっちゃったけど。アイドル目指す子が増えて来てるのはファンとしてはうれしいので、そういう子達がもっと夢を見れるような業界になって欲しいなぁとは思います。


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