ひたすら六弦生活を送る男が、ギタリスト目線も交えて名盤を紹介する連載!
【今月の一枚】THE CHEMICAL BROTHERS 『Dig Your Own Hole』 Freestyle Dust/Virgin(1997)
ケミカル・ブラザーズの『Dig Your Own Hole』は、最初はジャケットに惹かれて、あとノエル・ギャラガーが歌っている“Setting Sun”があるっていうことで聴きましたね。当時はテクノとかそんなに聴いていなかったので衝撃でした。ケミカルのこれ以降のアルバムは全部好きでよく聴いています。彼らの音にはロックを感じますよね。たぶん、本人たちもロックが大好きなんだろうなと思います。
音作りにもスキがないです。音色ひとつにしても細部までこだわっているのが伝わってくる。やっぱりそういう音楽は感動するし、どこを取っても素晴らしいと思う。だから曲を聴いていると、とても想像力を掻き立てられますね。このフレーズをギターで弾いたらすごく新しいんじゃないか、とか。
ループの気持ち良さを知ったのもケミカル。俺らはそれを生演奏でやろうと思っています。ドラムがひとつのビートをループして、ギターやベースで展開をつけていく。逆にギターで単調なフレーズをループで作ることもありますよ。曲で言うと、“Sands of Time”(2010年作『Sands of Time』収録)がそうですね。この曲はギターのフレーズは間奏以外、全部同じフレーズをループさせています。あと前作『echo』(2011年)に入っている“Chain reaction”もそうですし、最新アルバム『Silver Sun』の1曲目“Spirit Inspiration”のリフなんかも、俺のなかではロックというよりエレクトロ寄りの発想で作ったリフです。リズムのおもしろさやフレーズの強さで勝負する曲はエレクトロからの影響が大きいと思います。曲作りでもA〜B〜サビといった歌謡曲的な構成に囚われるのが嫌になった時期があって、それを打破できるのもエレクトロかなと思いましたね。構成なんか関係なく曲を作ってもいいんだっていう。
音色は違うけど、彼らの音からいろいろなインスピレーションを受けて、それをロックに落とし込むこともあるし、その逆もあると思う。ロックとエレクトロニック・ミュージックは、互いに刺激を受け合って進化し続けてると思いいます。
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PROFILE/生形真一
Nothing's Carved In Stoneのギタリスト。2013年1月30日にはアルバム・ツアーのライヴDVD「A Silver Film」(エピック)のリリースが決定! 別掲ではそのインタヴューも公開中。その他の最新情報は、オフィシャルサイト〈www.ncis.jp〉をチェック!!