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ザ・ショッキング『GO TO THE SATCHMO WORLD』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/03/05   19:12
ソース
intoxicate vol.102(2013年2月20日発行号)
テキスト
text:相倉久人

オレ流の“サッチモ”へのリスペクトの表わし方、実にお見事!

プロ・ボクサー出身だというリーダー水原将のドスのきいた声が、ノスタルジックな凄みをたたえてフロアーいっぱいに広がり、客席を優しく包み込んでいく。キャバレー調の昭和歌謡を柱にアクの強いステージを演じてきた彼らが、“サッチモ”ことルイ・アームストロングの存在に触れて路線を転換。このアルバムは、キャバレー型エンターテインメントの魅力はそのままに、サッチモに対するリスペクトを結集してみせた見事な成果である。

従える小編成ビッグバンド(奇妙な言いまわしだが)の優秀さ……トランペット上石統がやる極上のサッチモ・シェイクをはじめ、曲ごとにヴィンテージ楽器を使い分けてのぞむ各々のサウンドへのこだわりなど、はなはだ尋常でない。なにより将のダミ声は、サッチモへのオマージュとしてピッタリな仕様。それでいてただのモノ真似に終わっていないあたり、さすがクラブで鍛え上げたエンタテイナーである。

ぼくはつねづね、オリジナリティーというのは「オレにはこうしか出来ない」というスタイルに到達した者にだけ使えるコトバで、誰もやっていないただの目新しさを追ったものとは違う、と主張しつづけてきた。ザ・ショッキングのこの最新作『ゴー・トゥ・ザ・サッチモ・ワールド』、そして将のヴォーカルからは、まさに「オレにはこうしか歌えない。それがサッチモに対するオレ流のリスペクトの表わし方だ」という、単なる後追いを超えた深い敬意と愛情が(というと本人はきっと照れるに違いないが)じかに伝わってくる。

こういうある意味での「洗練された泥臭さ」(これまた、あまりに矛盾した表現ではある)は、メインストリーム系のジャズが久しく忘れがちだったものである。そういういわば体臭がじかに匂い立ってくるような、いい意味での「時期外れな」吸引力にぼくは大いに惹かれてしまうのだ。それもまた昭和歌謡を歌っていた時代から引き継いでいる、貴重な財産に違いない。

LIVE  INFORMATION
『発売記念ライヴ 』
3/9(土)1st:19:00開演/2nd:21:00 開演
会場:渋谷JZ Brat
http://the-shocking.com/