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delofamilia

連載
360°
公開
2013/04/19   13:15
更新
2013/04/19   13:15
ソース
bounce 353号(2013年3月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/澤田大輔


Rie fuがより制作に関与することで、ユニットとしての一体感が増した新作。春に聴きたい爽やか(でちょっとダーク)な一枚です!



Delofamilia_A



「メロディーが入ってアレンジもほぼ固まった曲が、NAOTOさんから10曲まとめて送られてくるんです。で、私が歌詞を一気に集中して書いて、送って……終わり(笑)。そうやって作りました」(Rie fu)。

歌詞とヴォーカルはRie fu、サウンド全般を手掛けるのはORANGE RANGEのNAOTOこと廣山直人。そんなシンプルな分業体制で成立しているユニットがdelofamiliaだ。打ち込みのプロダクションを出発点としながら、Rie fuが加入した2作目以降はバンド・サウンドにグッと歩み寄ってきた彼らだが、4枚目の新作『archeologic』ではオーガニックなアンサンブルとエレクトロニックの要素を配合。生のグルーヴと打ち込みのそれとで心地良いサウンドスケープが描かれている。

「打ち込みのきちんとしたビートと、揺れのあるバンドのグルーヴ。その2つが複雑に絡み合ってるものが好きになってきたんですよね。機械と人間とのせめぎ合いというか。上手くマッチしないのが気持ち良いなと」(NAOTO)。

彼のルーツにあるというUKロックやブリストル一派の翳りを帯びたサウンドをベースにしつつ、スザンヌ・ヴェガらミッチェル・フルームが手掛けたUSのシンガー・ソングライターあたりを想起させる軽やかな肌触りの楽曲もある。また、シンプルな弾き語りに思えた楽曲が、聴き進めていくと複雑で壮大なアンサンブルへと展開していったりも。生と打ち込みの対比に限らず、さまざまな相対する要素が一枚のアルバムのなかに同居しているのがおもしろい。

「アルバムのタイトル通り、音はすごく計算されてる気がします。客観的に見て、なんか細かくいろいろやってるなーって(笑)。そのサウンドに合わせて、日本語にしたらすごい皮肉だったり、天邪鬼だったりする言葉を歌詞に入れたりして遊びました」(Rie fu)。

「ギターを何本も重ねたり、聴こえないくらいの音をいっぱい入れたり——ただ聴感上はすっきりしてる。そこはエンジニアのzAkさんの技だと思いますね。言葉で表せないすごいことをやってるんですよ」(NAOTO)。

楽曲によってはダブステップ以降のベース・ミュージックのニュアンスを読み取ることができるし、昨今のインディー感とR&Bを横断するウィークエンドあたりに近い雰囲気もある気がする。しかしトレンドのフォーマットをそのまま持ち込むのではなく、あくまでdelofamilia流に咀嚼しているのだ。カテゴライズしづらいけれど、とにかくポップな独自のサウンドを成立させているのが素晴らしい。

「普段音楽を聴いていて〈こういうの作りたいな〉って思うんですけど、それはあくまできっかけなんですよ。そこからいろんなアイデアが浮かんで、それらを詰め込んでいって……さらにRie fuの歌詞と歌が乗ると、当初のイメージからまったく離れたものになる。そこがバンドの良いところですよね」(NAOTO)。

「前作までは曲が出来るまでの過程をいっさい知らないままに歌詞を書いてたんですけど、今回は事前に曲の背景を教えてもらったんですね。そのうえで〈delofamiliaらしい音って何だろう〉って私も考えるようになった。“Your Money”って曲ではレコーディングの場でアレンジを作ったし、メロディーの段階からいっしょに作ってみたいというアイデアもある。作品を重ねるごとにバンドのメンバーとして愛情が強くなってきてるし、お互いの関係もちょっとずつ変化したんじゃないかなと。そういう意味で、このアルバムがdelofamiliaの新しい出発点になったらいいなって思います」(Rie fu)。



▼関連盤を紹介。

左からORANGE RANGEの2012年作『NEO POP STANDARD』(SUPER((ECHO))LABEL/スピードスター)、Rie fu & the fuの2012年作『BIGGER PICTURE』(Rie fu inc.)、delofamiliaの2007年作『quiet life』、同2009年作『eddy』(共にソニー)、2011年作『Spaces in Que』(TRAFFIC)

 

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