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【第6回】――ビートルズ

連載
生形真一の六弦生活
公開
2013/06/12   00:00
ソース
bounce 355号(2013年5月25日発行)
テキスト
ンタヴュー・文/溝口和紀(New Audiogram)


ひたすら六弦生活を送る男が、ギタリスト目線も交えて名盤を紹介する連載!



生形連載第6回_A



【今月の一枚】THE BEATLES 『Revolver』 Apple/EMI(1966)

〈世界中の誰もが生まれて1年以内にビートルズを聴くんじゃないか〉と思ってしまうくらい(笑)、TVでも街中でもかかっているので、初めて聴いたのはいつか覚えてないですが、最初に耳についた曲は“All You Need Is Love”とか“Let It Be”だったと思います。それ以降はバンドとして認識しつつも、なかなか作品に触れる機会はなかったんです。俺ら世代は〈バンド・ブーム〉で日本のバンドの音楽を聴きはじめて、それから洋楽。当時だとブリット・ポップやグランジが全盛だったので、CDを買うのは新譜ばかりでしたね。学校を卒業し、バイトするようになって少しお金に余裕ができて、CD2枚買うなら新譜を1枚、古いのを1枚買ってみようと決めて、そのときにベスト盤(赤盤、青盤)を買いました。ポップな曲だけのイメージだったのが、そこから掘り下げていくうちに時期によってやっている音楽が違うんだということがわかって。いわゆる前期・中期・後期というのがあって、知れば知るほどおもしろいと思ったのは中期。いちばん聴いたアルバムがこの『Revolver』でした。

このアルバムで好きな曲は“Tomorrow Never Knows”。最初に聴いたときは衝撃的でしたね。この時代にこんな最先端の音楽をやっていたのかと。ポップなメロディーがあるわけでもないし、ただ淡々としたドラムのリズムがあって、そこにいろいろな音が被さって展開をつけていくっていう。いま聴いても興味深いし、新鮮だし、格好良い。ビートルズのほかのアルバムの曲を含めても、いちばん好きです。

バンドっておもしろいもので、ライヴをやってお客さんが増えて、そこでたくさんのエネルギーを吸収してデカくなり、いろいろなアイデアが溢れてきて、次々と素晴らしい作品が出来るんだけど、そのぶんメンバーは精神的に追い詰められていくんですよね……それは多くのバンドに当てはまることで……そしてビートルズは、ライヴをやらなくなる。そんな過渡期に出来たこのアルバムを聴いていると、メンバーの感情が入り乱れていて、バンド内にいろいろな葛藤があるのが見えてくるんですよね。音楽っていうのはただ音を出しているだけでなく、その音のなかに人間の感情やバンドの感情が溢れているから素晴らしいんだと思います。

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PROFILE/生形真一



Nothing's Carved In Stoneのギタリスト。シングル“Out of Control”(エピック)が好評を博すなか、ニュー・アルバム『REVOLT』のリリースも6月26日に決定! その他の最新情報は、オフィシャルサイト〈www.ncis.jp〉にて!!