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Buffalo Daughter『リディスカバー ベスト、リレコーディングス、リミキシーズ・オブ・バッファロー・ドーター』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/09/03   13:13
ソース
intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)
テキスト
text:村尾泰郎

ニュー・ロック、20年目の軌跡

今年でバンド結成20年目を迎えたバッファロー・ドーター。93年以来、オルタナ〜ポスト・ロック〜エレクトロなど、次々と新しい風景を展開していくロック・シーンにウィンクしながら、バッファローは止まることなく走り続けてきた。とりわけ、90年代のロック・シーンにおける彼らの爆走ぶりは痛快で、解体と再構築の時代を、走る、というより、波乗りするようにシャープに、果敢に突き進んだが、彼らのバイオグラフィーにおける重要なキーワードのひとつは〈グランドロイヤル〉だろう。ビースティボーイズがスタートさせたこの魅力溢れるレーベルに迎えられた彼らは、ショーン・レノンやチボ・マットのレーベルメイトとなってアメリカに進出。コーネリアスやボアダムズ、ピチカート・ファイヴらとともに〈クール・ジャパン〉の先陣を切った。

そうしたバンドの歴史を、初めて音で振り返ったベスト・アルバムが『リディスカバー ベスト、リレコーディングス、リミキシーズ・オブ・バッファロー・ドーター』だ。選曲したのはバンド・メンバーではなく、音楽キュレイター/DJのニック・ラスコム。ところが曲が決まった段階で、権利の都合上、収録できない曲があることがあることが判明。該当する曲に関しては、新録したり、リミックスすることにしたらしい。その結果、小山田圭吾(コーネリアス)、アドロック(ビースティ・ボーイズ)など、バンドと縁が深いアーティストがゲストやリミキサーと加わって、ベスト盤に華を添えることになったのは不幸中の幸いだった。ヒップホップ、テクノ、クラウトロック、現代音楽などなど、面白い音なら何でも消化する強靭な胃袋で生み出した、ポップでアヴァンギャルドな〈NEW ROCK〉が本作にはしっかりと刻み込まれている。さらにリミックスや新録を加えたことで、単に過去の記録ではなく現在進行形のアルバムになっているのも彼ららしい。ニュー・ウェイヴからスタートして、ニュー・ロックを経由して走り続けてきたバッファローの旅。その魅力溢れるトラヴェローグともいえるベスト盤だ。