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(第16回)自由な発想を確かなスキルで音像化する〈新感覚派〉、Babi

連載
岡村詩野のガール・ポップ今昔裏街道
公開
2013/09/25   13:00
更新
2013/09/25   13:00
テキスト
文/岡村詩野


OkamuraShino4_16



ライター・岡村詩野が、時代を経てジワジワとその影響を根付かせていった(いくであろう)女性アーティストにフォーカスした連載! 第16回は、自由な発想を確かなスキルで音像化する〈新感覚派〉、Babiを紹介します!



音大、芸大出身のアーティストは昔から大勢いますが、最近は昭和音大出身勢の活躍が目覚ましい印象です。スカートの澤部渡、カメラ=万年筆の2人、そして、Babi――特にセカンド・アルバム『Botanical』をリリースしたばかりのBabiは、とんでもない逸材であることを聴き返すたびに実感します。自在に音を編み、音を掬い、自由に言葉を遊ばせ、言葉を転がし、目に見えない架空の日常を豊かに描いていく〈新感覚派〉シンガー・ソングライターの彼女。そのクリエイターとしての天衣無縫な横顔は、ブリジット・フォンテーヌ、ビョーク、矢野顕子、吉田日出子……といった個性を想起させてくれるほど。ファースト・アルバム『6色の鬣とリズミカル』も新人離れした構成力/アレンジ力に驚かされましたが、主に木管を中心とする管楽器をたっぷりと用いた室内楽風アンサンブルと、みずからの手によるプログラミングとをしなやかに交配させながら作られた新作『Botanical』に対し、〈新時代のチェンバー・ポップ〉と賞する声が相次いでいるのも当然かもしれません。

Babiの音楽の魅力を一つ二つだけに絞り込んで語るのはとても難しいのですが、一つにはいわゆる女の子っぽさに甘えていないところ。言ってみれば媚びがない。もちろん、可愛らしい歌声にも言葉のチョイスにも女の子らしさは表出しています。実際に会うと可愛いプリントのワンピースやおさげ髪がとっても似合う、少女のような女性。口を開けば、のほほん、おっとり。でも、自身が醸し出すガーリーな感覚をエクスキューズにするのでも利用するのでも捨て去るのでもなく、音の制作段階になるとチャンネルを切り替えてキリリと技術で対応する。さらには、ガーリーな自分すらどこかでちょっと笑ってしまうような、自嘲的ユーモア精神の持ち主でもあるのです。

そもそも彼女の出身大学の昭和音大とはどんな学校なのか。川崎市にある学舎には行ったことがないのですが、84年創立と比較的新しい学校のようです。音大というと、格式が高く、楽典を徹底的に叩き込まれる教育、というイメージもありますが、Babi本人に言わせると、学部によってかなり異なるとはいえ、自由に音源を制作して発表する作業を一つの目標にした実践向きのカリキュラムが多いとのことです。近年、「ニッポン・ポップス・クロニクル 1969-1989」「未来型サバイバル音楽論」(津田大介さんとの共著)などの著書が話題となっている牧村憲一さんが教鞭を取っていたことでも知られています(現在は退いていらっしゃいます)。

しかしながら、Babiの感覚はそうした学校教育によって育まれたのではなく、どちらかと言えば自分のなかに潜在する才能をいかに自由に形としていくのかを探った末に得たものではないかと思うのです。例えば、新作『Botanical』はそのタイトル通り、植物をテーマに作られた曲が集められていますが、花や芽が活き活きと成長したり光を浴びて様相を変化させていく〈不思議〉を、管楽器や鍵盤、電子楽器を用いて、時に擬人化したり、時に人間の目線から、決して説明的にならずにユーモラスに描いています。頭の中で夢想していた世界をどのようにして音像化するのかを考えた時に、きっとBabiはみずから技術を手にすることを真っ先に考えたのではないかと思うのです。だから、彼女の音楽には、ただの雰囲気ありきの音楽にはない、実際に音と音とが飛び交い、音と音とが交差してぶつかりあうようなおもしろさがあるのだと思うのです。

Babiに映画音楽、サントラの仕事をたくさんさせてあげたい。彼女の手にかかればどんな音符も魂を持って動き出すはずだから――そんな機会が訪れることを心から願っています。



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