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第51回――伊藤つかさ

連載
その時 歴史は動いた
公開
2013/12/25   00:00
ソース
bounce 361号(2013年11月25日発行)
テキスト
文・ディスクガイド/久保田泰平


伊藤つかさ_J



67年2月21日、東京生まれ。5歳から子役としてTVドラマに出演していた彼女に注目が集まったのは、80年秋に放映が始まった「3年B組金八先生」(第2シリーズ)でした。教室で最前列中央に座っていた彼女は、八重歯がチャームポイントの愛くるしい女の子。同番組で注目を集めたのをきっかけに、さまざまなアイドル誌に取り上げられるようになった彼女。その人気がさらに高まったのは、ドラマ終了から半年が過ぎた頃。セーラー服に身を包み、つぶらな瞳でこちらを見つめるジャケットも印象的なシングル“少女人形”で歌手デビューを果たした〈その時〉でした。

歌手デビューしたのは14歳。いまでこそローティーン・アイドルは珍しくありませんが、当時はまだまだ稀少で、ヴィジュアルを作り込んだ既存のアイドルとは違ってナチュラルに制服が似合う、学園生活のなかでリアルに存在していそうなイメージが新鮮でした。〈ロマンティック・ソプラノ〉と謳ったヴォーカルも大きな魅力として加味された“少女人形”は、予約だけでも10万枚を超える大ヒットになりましたが、年齢のせいで「ザ・ベストテン」「夜のヒットスタジオ」といった夜帯の人気音楽番組には生出演できませんでした。しかしそういった貴重感もファンの応援意識を高め、立派な〈つかさブーム〉となっていったのです。

それにしても〈贅を尽くした〉音楽。景気が良かった時代と言えばそれまでですが、女優が本業であり、歌手はいわば副業だったはずの彼女に捧げられた楽曲は豪華すぎる作家陣によって手掛けられたものでした。14歳8か月という、いまだ破られていない女性ソロ・アーティスト史上最年少記録で首位を獲得したファースト・アルバム『つかさ』では、“少女人形”を書き下ろした南こうせつをはじめ、井上大輔、加藤和彦、水越けいこ、天野滋(NSP)らを起用。さらに凄まじいのは5か月後の2作目『さよなら こんにちは』で、こちらには大貫妙子や原由子、竹内まりや、当時をときめくYMOファミリーから矢野顕子、坂本龍一、高橋幸宏……と、いまでは考えられないどころか、いま実現させたら赤字必至の顔ぶれでした。〈花の82年組〉や〈角川三人娘〉が台頭してきた83年になると、彼女を取り巻くブーム的な盛り上がりは落ち着いていきますが、歌手としては86年まで活動。懐かしの制服アイドルとして一括するにはもったいない楽曲ばかりだけに、今回そのオリジナル・アルバムが復刻されることを心から喜びたいです。

最後に、「笑っていいとも!」の放送開始当初、〈テレフォンショッキング〉でタモリが目標としていたのは、伊藤つかさに会うことだったそう。来春の最終回までにもう一度会えるでしょうか?

 

伊藤つかさのその時々



『つかさ』 徳間ジャパン/ラグジュアリー歌謡×Tower To The People(1981)

マッチの歌じゃないけど、〈お前が望むならツッパリもやめていいぜ〉と言いたくもなる無垢な微笑み。〈つかさ、14歳〉のファースト・アルバムは、どこまでもプアでピュアな彼女の歌声を、錚々たる作家陣によって童話色に染め上げたもの。自作詩の朗読“かすみ草”は、声ネタとしてリサイクルしたい。

 

『さよなら こんにちは』 徳間ジャパン/ラグジュアリー歌謡×Tower To The People(1982)

大村憲司がリアレンジした“夢見るSeason”や教授作“恋はルンルン”など、テクノ・ポップとアイドル歌謡の可憐な融合が壮観な2作目。前時代であればただの〈歌がヘタな子〉だったであろう彼女は、レコーディング・テクノロジーの恩恵を受けた最初のアイドルかもしれません。

 

『タッチ』 徳間ジャパン/ラグジュアリー歌謡×Tower To The People(1982)

この4作目は、アリスなども手掛けた石川鷹彦、南こうせつ、伊勢正三、堀内孝雄、岸田智史らが作家陣として名を連ね、フォーク調のサウンドとブルーなメロウ感が散りばめられている。ビートルズ“Across The Universe”風情の“ストロベリーフィールド”は、佐野元春が初めてアイドルに書き下ろしたナンバーだ。

 

『夢の振子』 ビクター/ラグジュアリー歌謡×Tower To The People(1986)

ヤプーズの中原信雄やムーンライダーズの白井良明らを作家陣に迎えた、無国籍感と異次元感漂う実質的なラスト作。随所に挿まれたサウンド・エフェクトやエキゾティックな打楽器、幻想的なシンセ・サウンドによって編まれていくサウンドにあって、彼女の歌声も〈音〉と化して煌めいている。

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