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DAISHI DANCE

連載
360°
公開
2014/01/24   20:00
更新
2014/01/24   20:00
ソース
bounce 362号(2013年12月25日発行)
テキスト
文/杉山忠之


DAISHI DANCEとジブリ楽曲の邂逅、ふたたび!



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さまざま意味で革命的だった、DAISHI DANCEによるジブリ楽曲のハウス・カヴァー集。その第1弾作品『the ジブリ set』の発表から約5年、ファンにとってはまさに待望の続編『the ジブリ set 2』がこのたびリリースされた。前作は総計40万枚を越えるセールスを叩き出し(いまなお売れているというのだからすごい!)、彼の代名詞たる作品となったが、今回はそれを上回る意欲作となっている。

この5年の間に彼を取り巻く音楽/ダンス・ミュージック・シーンは大きく変化し、多くのスタジオジブリ作品が公開された。そんな状況を鑑みて本作は制作されたわけだが、まず音楽面では新たに2つの要素が垣間見える。ひとつは“やさしさに包まれたなら”“ひこうき雲”といった曲に見られる、現在進行形のダンス・ミュージックの導入。いまのトレンドを意識し、よりアッパーなサウンドが採り入れられている点だ。そしてもうひとつは、既存の彼のサウンドにはなかったメロウでジャジーな楽曲。〈Mellow mix〉と銘打たれた“帰らざる日々”“あの夏へ”が収録されていること。これらは、前作では見られなかったDAISHI DANCEのジブリ・カヴァーにおける新機軸であり、それに彼持ち前のメロディアスでドラマティックなサウンドが加わって、アルバム1枚を通してジブリ楽曲がさまざまな形に生まれ変わっている。そして、そこではこれまでの彼の諸作品に名を連ねていたGILLE、吉田兄弟、武田真治、COLDFEETらをフィーチャーすると同時に、さらには映画「耳をすませば」で主人公の月島雫役を務め、みずから主題歌“カントリー・ロード”を歌った本名陽子が参加。オリジナル曲のヴォーカリストの招聘も、今作の大きなトピックと言えるだろう。

そんな『the ジブリ set 2』には、“君をのせて”をはじめ前回に引き続いてのナンバーも数曲ありつつ(当然どれもアップデートされている)、前作には泣く泣く入れることのできなかった楽曲の新たなカヴァーや日本語にリアレンジしたナンバーを含め、全12曲を収録。さらに今回、DAISHI DANCEのこだわりはサウンド面のみならずアートワークまでにも及んでいる。確固たるヴィジュアル・イメージのあるジブリ作品に則して、みずからその舞台となった場所に赴き、自身で撮影するという徹底ぶり。彼の考えるジブリ作品の原風景がCDのジャケットや付属のブックレットで表現されており、それらと楽曲とのリンクも興味深い。

「世界中の人がジブリ作品をたくさん観てくれたら、リアルに犯罪も減って平和になる。僕は、それぐらい影響力のある作品だと思っています」。

ジブリ作品についてDAISHI DANCEはそう話していたが、本作も同じようなポテンシャルを秘めていると思う。そもそもダンス・ミュージックは人々を楽しませるピースフルな音楽であり、世界中を笑顔にさせる共通言語でもある。そんなサウンドがジブリと融合することで新たなマスターピースが生まれる──そう感じさせてくれる一枚だ。



▼DAISHI DANCE関連の作品。
左から、2013年作『NEW PARTY!!』、2013年のミックスCD『MYDJBOOTH.3』(共にユニバーサル)、2008年のカヴァー集『the ジブリ set』(urban sound project.)