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カール・アウグスト・ビュンテ『ベートーヴェン:交響曲第2番』他

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2014/01/15   10:00
ソース
intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)
テキスト
text : タワーレコード本社 大場健


知られざる、けれど素晴らしく面白い。聞かぬは“損”の文字通りの『掘り出し物』

有る処には有るものだ。カール・アウグスト・ビュンテの音源を耳にして感じた第一印象がコレ。文字通り、偶然。新譜の音資料の中に紛れ込んでいた新譜とも旧譜区別の付かないCD、それが氏の振ったチャイコフスキーの交響曲第2番のCDであった。単発のCDとしては珍しい選曲に、ふと興味がわきプレイヤーに投入して、とにかく驚かされた。

初期ステレオ(らしい)割れたステレオ音から聞こえてきたのは、重量感タップリの響きと情感豊かな音色。テンポの伸び縮みは少ないものの、それを補って余りある豪快なオケの鳴らしっぷりに、とにかく心惹かれたのであった。

調べてみれば、色々と曰くのある人物で、大金持ちで(噂の域を出ないものの)ベルリン交響楽団設立の資金を捻出した人物であったとか、ベルリン時代にチェリビダッケに師事した等々…日本にも縁のある人物で、東京芸術大学音楽部指揮科の客員教授として名誉教授の称号も得ている人物であった。ただ、日本に来た理由は氏のスタイルがヨーロッパでは過去の手法となり、追いやられるようにとも言われている。

確かに氏の音作りは現代において「古典的な」スタイルと言っていいだろう。が、しかしだ。音楽の結論は『聞いて良いモノ』として見れば、氏の紡ぐ音は決して古臭くなどない。寧ろその生々しさは現代のオケから失われてしまった輝きそのものに思えてならない。

現在の不遇を反映してか、近年の音源は全く見当たらないものの、マニア向け音源の提供では定評のあるBELLA MUSICAが、氏の活動初期にあたる50年代から60年代前半の音源と、何故か1989年に関西フィルを振った「第九」の音源を販売している。そのどれもがこれまで話題にならなかったのが不思議なくらいの豪胆かつ自由闊達(やりたい放題)な演奏で、聴き応えは十分保証できる。特にチャイコフスキーとベートーヴェンは、かなりの逸品。一度は耳にしておいて損は無い。 



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