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【vol.3】――花澤香菜、中島愛など……〈二次元以上。〉スペシャル!

花澤香菜

連載
二次元以上。〜brilliant sounds from 2D and over
公開
2014/02/26   17:59
更新
2014/02/26   17:59
テキスト
インタヴュー・文/南波一海


絶賛で迎えられた前作よりさらに自然体の自身に近付いたニュー・アルバム。そこには25篇の物語のなかで次々と新たな表情を見せていく彼女がいて……



花澤香菜_A



もっと自然体で

昨年リリースされた花澤香菜のファースト・アルバム『claire』は、かつての〈渋谷系〉の流れを汲みながらもいまの耳で聴いてフレッシュな響きを纏ったポップス集で、声優の枠を越えて広く伝播した作品だった。そしてこのたび、ちょうど1年ぶりに登場した2枚目のアルバム『25』は、タイトルに冠されているように25篇の楽曲が収録された2枚組の大作で、その熱量と音楽的な幅の広さ、完成度の高さは、ファンの期待に応えるどころか、あまつさえ驚かせるものになっている。なにしろ『claire』に匹敵する良質なポップスが、『claire』を凌駕するヴォリュームで詰め込まれているのである

「(2013年の)春のツアーの後にサウンド・プロデューサーの北川(勝利)さんを交えて〈次は何をしよう?〉っていう話し合いをしました。私は〈もっとライヴがやりたい〉とお伝えして。特に渋谷公会堂のときは〈歌ってます!〉っていう感覚ではなくて、自然と歌が出てくる空間ができたように感じて、これだったらまたやりたいなと思ったんです。それで曲を増やそうということになって、そのときに〈来年は25歳になるから、全部新曲で25曲のアルバムを出さないか〉っていうアイデアが出たんです」。

花澤が自身の名義で歌うことに対しての手応えを感じ、前向きな姿勢を見せたことでプロジェクトは進行していった。そのポジティヴな空気感はひとつひとつの曲からも伝わってくる。

「曲を作ってくださったのが『claire』から引き続きでやっていただいた方たちで。皆さんにまた会えると思うとすごい嬉しくて、いっしょに作れるのが楽しかったです。『claire』のときは世界観が統一されていて、恋に恋するという感じだったと思うんです。でも今回はもっと自分に寄せたもの、自分のなかから出てきたものをしっかり意識したいなと。『claire』のときは〈可愛く〉とか〈明るく〉ってよく言われたんですけど、今回はもっと自然体でできました」。

〈より自然体に近付いた〉という意味で、今作は花澤が数曲で作詞に関わっていることもポイントのひとつとして挙げられるだろう。作詞家の岩里祐穂との共同作業により、彼女の身近にあるエピソードが『25』の歌の世界に置き換えられていった。

「岩里さんにお会いしていろんなことをお話して、詞のキーワードになるようなものをピックアップしていただいて、岩里さんが書くぶん、私が書くぶんという感じで振り分けて作業していきました。自分の書いた歌詞は全然客観的に見れないんですけど(笑)、やっぱり難しかったですね」。



エモくいってみよう

すべてについては触れられないが、前作に収録された“青い鳥”の延長線上にある“恋する惑星”、モロにCymbalsな沖井礼二節が発揮されまくった“旅立つ彼女と古い背表紙”、スクリッティ・ポリッティが背景にあるという80sテイストの“Brand New Days”、カジヒデキが寄せたネオアコ・ナンバー“パパ、アイ・ラブ・ユー!!”など、力の入った楽曲が並ぶ。なかでもひときわスケールが大きく、アルバムのハイライトとなっているのがBase Ball Bearの小出祐介が作詞/作曲した“last contrast”。シューゲイザー的なアプローチをしたギター・ロックで(個人的にはレディオヘッドの“Airbag”を思い出した)、花澤の新たな一面を引き出している。

「“last contrast”は〈エモくいってみよう〉という提案の元に出来た曲で。〈エモい〉っていう言葉を最近知りました(笑)。最初は、わりと自然な感じで歌ってたら、小出さんに〈もうちょっと違う面も見せたい〉ということを言っていただいて。サラッと歌うんじゃなくて、そうですね……エモく、ですか(笑)。レコーディング中は小出さんとのやり取りが何度も何度もありました。録っては話して。でも、〈こうしてほしい〉っていうイメージが明確にあって、それに向かっていくだけだったので、大変っていうことはなくて。とにかく楽しかったです」。

そんなふうに、半年間にも渡ってじっくりと練り上げられた大作。花澤は最後にこう語った。

「毎週スタジオで作業していたのでいまは寂しいです。ただ、北川さんはアルバムをまとめるのに〈果てしない〉って言ってて。そんなに大変そうなのにいつもの感じで飄々としているから、私は〈大変だ〉なんて言ってられないと。だから、関わってるみんなが健康のままに終われたらいいなって、ずっと願ってました(笑)」。



▼『25』に参加した作家陣の関連作品。
左から、Cymbalsの2000年作『That's Entertainment』(ビクター/Tower To The People)、NONA REEVESの2013年作『POP STATION』(Billboard)、カジヒデキの2013年のミニ・アルバム『Sweet Swedish Winter』(BLUE BOYS CLUB)、one day diaryの2011年作『Fever or Ambulance』(RALLYE)、sugarbeansの2012年作『Rudolf』(ミディ)、古川本舗の2013年作『SOUP』(Head.Q.music)

 

 

▼関連盤を紹介。
左から、スクリッティ・ポリッティの85年作『Cupid & Psyche 85』(Virgin)、レディオヘッドの97年作『OK Computer』(Parlophone)