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追悼 イヴリー・ギトリス(1922年8月25日 - 2020年12月24日)

ギトリス

イスラエル出身の世界的名ヴァイオリニストで、近年は毎年のように来日し、我が国の聴衆にも親しまれたイヴリー・ギトリス氏が12月24日にパリで亡くなりました。98歳でした。謹んでご冥福をお祈りいたします。
(タワーレコード)

緊急発売!

イヴリー・ギトリス ~永遠の愛のヴァイオリニスト

2020年12月24日、98歳で惜しまれつつ世を去ったヴァイオリニストのイヴリー・ギトリスのメモリアルを緊急出版。アルゲリッチも登場! 最後の10 年間を追い、友情と追悼、彼を慕う仲間たちの言葉と秘蔵写真を掲載。サラサーテ誌インタビューでのイヴリー・ギトリスの声も。イヴリーを愛する全ての人におくる書籍です。

《登場アーティスト》
●マルタ・アルゲリッチ ●マキシム・ヴェンゲーロフ ●ミッシャ・マイスキー ●岩崎 淑 ●木野雅之 ●篠崎史紀 ●中島 麻 ●酒井 茜 他多数

・伊東雨音 サラサーテ編集部 編著
・版型:A4変
・総ページ数:64


「音楽は、人と人のコミュニケーションなんだよね。」
これは1985年の来日時、ギトリスが富永壮彦氏に語った言葉です。

多様に使い分けられるヴィブラート、迸るように歌うダブル・ストッピング、甘いため息のようなポルタメント、痙攣するようなトレモロ、音符が飛び散るようなピチカート、フィンガリングとボウイングを組み合わせた魔術的な音色変化・・・。

ギトリスにとってヴァイオリンは、自分の想像力の赴くまま自由自在に扱える良き相棒でした。こうしたヴァイオリンの様々なテクニックが、応接の暇の無いくらい次々と聴き手に提示されるのがギトリスの音楽でした。つまり、彼の過剰ともいえる表現意欲の横溢は、どのようにでも扱えるヴァイオリンを使った「聴衆との対話」でした。

ギトリスは1922年8月25日、イスラエルのハイファに生まれました。ギトリスの両親はロシア系ユダヤ人で、20世紀初頭のシオニストとしてパレスチナへ移りました。母は経由地のルーマニアで接した「四分音や半音がたくさんあるうねりのある節まわし」をギトリスに歌い聞かせたといいます。5歳の誕生日にヴァイオリンを与えられ、10歳のときエルサレムでミラ・ベン=アミ夫人に師事。彼女はヨーゼフ・シゲティの弟子でした。彼女はギトリスをブロニスワフ・フーベルマンの前で演奏させ、「この小さな翼くんをほかで学ばせなさい」との助言を得て、11歳のときパリに留学することとになりました。13歳でパリ音楽院に入学した彼はジョルジュ・エネスコに師事して、大きな影響を受けます。

「ボートで一緒に水の上を漂っているような感じなんだ。そして、舵を取っているのがエネスコ先生。一緒にやりながら、音楽はどうゆうものかを教えてくれた。」

パリ音楽院卒業後はヴァイオリンの名伯楽カール・フレッシュに師事。フレッシュの講習会にはジネット・ヌヴーやジョセフ・ハシッドも参加していました。そしてジャック・ティボーに師事した後、ナチス・ドイツの侵攻を逃れるためイギリスに渡りました。大戦中は軍需工場で働いたり、慰問演奏をしたりしました。

1945年7月、ロイヤル・アルバートホールでロンドン・フィルに出演。これが彼の実質的なデビューでした。1951年アメリカに渡り新しいヴァイオリン・メソッドの推進者、テオドール・パシュクスに学んだ彼は、同年のロン=ティボー国際コンクールに挑戦。聴衆の熱烈な支持を受けたものの審査員たちの「狂信的排他主義、外人ぎらい、ねたみ」のため第5位にとどまり、ガヴォー・ホールは抗議する聴衆で大混乱に陥りました。

1953年、フランスのパテ=ヴォックス社と録音契約を結び、アルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲を録音。このLPレコードはフランスでACCディスク大賞を受賞し、同時期にシベリス、バルトーク、ストラヴィンスキーの協奏曲を録音したことで「現代音楽の専門家」との評判を呼びました。

1955年のアメリカ演奏旅行を機に国際的な演奏活動を開始し、旧ソ連を含むヨーロッパ各地やイスラエル、アフリカなど世界各地で演奏。初来日は1980年で、近年は毎年のように日本を訪れてそのユニークな至芸を披露しました。晩年はパリのアパートに住み、音楽への情熱は止むことなく、現役のヴァイオリニストのまま98年の生涯を閉じました。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)

現在手に入るギトリス氏の代表的CD

ヴァイオリン名曲ア・ラ・カルト
たびたびの来日でその独特の芸風が親しまれているギトリス。その魅力がたっぷり楽しめる、味わいの濃い小品集です(20曲入り)。どんな名曲でも通り一遍には演奏しない名匠ギトリスの、まさに面目躍如とした演奏ばかりです。ヴァイオリンを強く鳴らし、激しい表現意欲に身をゆだねたその演奏振りは誰にも似ていない、全くかけがえのないものです。
1985年、日本での録音

チゴイネルワイゼン~ヴァイオリン名曲の至芸
こちらは上記「ヴァイオリン名曲ア・ラ・カルト」の20曲プラス、同じ機会に録音された10曲を含む、全30曲を収めた2枚組です。今回追悼再プレスされました。
1985年、日本での録音

魔弓伝説
まるで語りかけるようなあの独特の節回し,絶妙な間を感じさせるテンポの揺れ,そして思い切ったポルタメント。ギトリスのアクの強いヴァイオリンは,決してお上品とは言えないから,あんなのついて行けないよという人もいるのは仕方ない。しかし,一度はまればもう忘れられなくなる強烈に個性的な魅力がある。73歳の時に東京で録音された当アルバムは,そのことを力強く証明している。
1994年12月,1995年1月 東京での録音

フランク&ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
イヴリー・ギトリス(vn)とマルタ・アルゲリッチ(p)がコラボレートした初めての録音であり、唯一のセッション録音となったもの。鬼才ギトリスの閃きと天才アルゲリッチの自在さが交錯するフランク&ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタ名演。1977年録音

メンデルスゾーン&シベリウス/ヴァイオリン協奏曲集
両曲とも旧録音もある彼の十八番(オハコ)で、濃厚なギトリス節を満喫できます。万感がこもった音色は目まぐるしく変化し、奔放なアタック、物思いにふけるようなテヌート、陶酔的なヴィブラート、熱情的なダブル・ストッピングが次々と語りかけてくるようです。
1978年、モンテカルロでの録音

イヴリー・ギトリスSWR録音集~協奏曲とリサイタル
この2枚組は、CD1に協奏曲、CD2にリサイタルの演奏が収録されています。名指揮者スクロヴァチェフスキとがっぷり組んだパガニーニの緊張感溢れる演奏や、現代作曲家ハウベンシュトック=ラマティの「ゼクエンツェス」での予想の上を行く演奏、素晴らしいバルトークとヒンデミットには、思わず手に汗を握るはず。そして、CD2のリサイタル盤こそまさに真骨頂。ギトリスの魔弓が火を噴きます。
1962~1986年録音

ギトリス・ライヴ・イン・ジャパン '82
この音源はピアニスト岩崎淑のアーカイヴから偶然見つけられた貴重な記録で、アンコールを含む一夜のリサイタルの全貌がカットなく収録されております。岩崎淑との共演は1980年の初来日以来数知れませんが、今回ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番やショーソンの詩曲パガニーニのカプリースをクライスラー編曲版で聴けるのも大変貴重といえます。岩崎淑の格調高きピアノとともにギトリス絶頂期のライヴを体感できる録音です。
1982年11月3日、新潟県 加茂文化会館でのライヴ録音

カテゴリ : Classical

掲載: 2020年12月25日 10:00

更新: 2021年02月09日 18:00