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インタビュー

susquatch

ドラマチックに〈寄り道〉する変幻自在のギター・ロック

  正式音源がリリースされる前から音楽関係者の間で評判が広がっていたsusquatch。編成はギター、ベース、ドラムによるオーソドックスなスタイルだが、彼らのサウンドは明らかに一味違う。1曲の中で静寂と爆音を美しく同居させ、リズム隊は変幻自在にシフト・チェンジ。ギターは天使のように繊細かと思いきや悪魔のように大胆に変貌し、コーラス・ワークは常に華麗そのもの。様々な調味料を利かせながらドラマチック極まりない世界へと巻き込んでくれるのだ。

「僕、ドラマチックって言葉が大好きなんですよ。バンド内でディベートする時にもよく出てきます。〈もうちょっとドラマチックに〉とか」(押切健太/ヴォーカル&ギター)

このバンドの楽曲は、クライマックスに至るまでのプロセスに無数のスパイスが織り込まれている。それはエンタテインメント性に満ちた映画の感触に近い。ラヴ・ストーリーは強力な恋敵が登場すれば盛り上がるものだし、ミステリーも謎が複雑に絡まった方が解決時の爽快感は大きい。そんな物語性に通じる山あり谷ありが、彼らの音楽の醍醐味だ。

「出す音に自分達自身でハッとしたいんですよ。料理に例えるならば、ちゃんとした居酒屋さんのような、旬の素材を活かした手間隙かけたものを作りたい。だから作ってる曲を溺愛して、〈あれも入れたい。これも入れたい〉ってなるんです。息子が修学旅行に行く時に絶対に使わないものを持って行かせる親のよう(笑)。結局、要らないものはメンバーと話し合いながら外すことになるんですけど」(押切)

「でも、いろいろやり過ぎてよく分からなくなることもあります(笑)」(中野真季/ドラム&コーラス)

「正直なところ、作ってる途中は全体像が見えなくて、何やってるかよく分からないことも多いんですが(笑)。曲が完成した段階で、〈なるほど。この部分でこういうことをやったのは意味があったんだな〉と気づいたり」(能重裕介/ベース&ヴォーカル)

「僕は元々メロコアをやってたので、このバンドではそれまで全くやってなかったことをしてます。昔はストレートにパワー・コードを鳴らしてる感じだったのに(笑)」(稲葉洸/ギター&コーラス)

  4人がかりの入念な味付けによって生み出された今作『Water plant』は絶品の楽曲揃いだ。例えば“3chords”は、実に不思議なスリリングさで迫る。基本的には明るく、ヌケ良く、スピーディーなのだが、微妙な匙加減による不穏な揺らぎを交えながら展開する。端的に表現するならば、〈寄り道好きの痛快R&R!〉というような感じか。

「“3chords”は、今回の6曲の中でもストレート。でも、あまりにもクセがなさ過ぎると不安になるっていうか……自分が感動しないんですよ。曲に対していろんなものを付けたくなる僕らの性質が出てる曲だと思います。そういう面倒くさいことが好きなんですよね。でも、単なるイタズラになってしまうのも違うと思うので、その辺はすごくみんなで話し合いながらじっくり見極めてます」(押切)

「わたしに関して言うと、普通に8ビートだけでやると不安になる傾向があるかもしれないです。やってて飽きちゃって面白くないし。それで勝手に手数が多くなったりして。あと、間違って叩いたことが採用されることもよくあります」(中野)

「その間違ってハミ出たドラムに対してベースをどう付けるのか、僕が悩んだりするわけですが」(能重)

一風変わっているのは確か。しかし、キャッチーでワクワク出来る歌メロディが揺るぎなく貫かれているのが、彼らの楽曲の注目すべきポイントだ。歌メロディを光り輝かすために全力投球で音を鳴らした結果、必然的に未曾有のジグザグした軌跡を描いてしまうのがsusquatch。紛れもなく歌心に溢れまくったギター・ロックなのだが、こんな独特なスリルも兼ね備えているバンドは珍しい。ぜひ、多くの人にこの愛すべきオリジナリティと出会ってもらいたい。

susquatch『Water plant』
1.polka
2.3chords(試聴する♪
3.the summer solstice
4.ceto
5.harvest
6.waiting for the dawn

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2007年04月26日 16:00

更新: 2007年04月26日 20:34

文/田中 大