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インタビュー

FOX LOCO PHANTOM(2)

要するに、俺らはもっと攻めたいと

――そういうところで吸収したものからどんどん曲が出来ていくってことなんですけれど、1作目から今回の3作目までの間で、バンドとして成長したのはどういう部分だと思います?

ヒデヲ「んー、いちばん成長したのは人間関係ですかね」

――お互い、好きになってきたっていう(笑)?

ヒデヲ「そこはデカイんじゃないですか(笑)?」

依田「ただ、逆に言うとトゲがなくなっちゃったっていうか。バンドのメンバーが馴れ合いすぎてるんじゃねーかって(笑)。まあ、それは成長とも言えるけど……」

ヒデヲ「まあ新たな課題ですね。でも、うちらは尋常じゃないほどライヴをやってきたんで、成長した部分っていうとバンドのグルーヴですね。アンドリュー(ドラムス)が加入してちょうど1年ちょいぐらいなんですけど、いちばん長いツアーをいっしょに回って、良くも悪くもあいつのグルーヴが浸透してきた。だから、いまはその純度をどう上げていくかっていう、第2段階にきてるんですよね。これまでは勢いでやってるだけだったんですけど、今度はそこにプラスαで何を付けていくかっていう段階で。つい最近までメンバーみんなが悩んでたんですけど、今回のリリース・ツアーは、依田がさっき言ってたみたいに、初期衝動じゃないけど一旦原点に戻ったうえで、爆発的な勢いや狂気度はさらに上げていこうと。丸くなっちゃってたトゲを削って削ってどんどん鋭利にしていくっていうツアーができたらって。吉伊と依田が殴り合いするかもしれないし(笑)」

――セットリストに組み込まれたり。MCの代わりに〈ここで殴り合い〉とか(笑)。

依田「それ、八百長じゃん(笑)。ある意味エンターテイメントだけど(笑)」

――(笑)確かに、今回のアルバムでは鋼のようなグルーヴが印象的で。4つ打ちとか、ディスコティークな要素が入っていたりとか、そういうわかりやすい手法ではなくて、ビートの強度で踊らせるという。

ヒデヲ「そうですね。4つ打ちでゴリ押ししてる音楽とかは、南蛮渡来のグルーヴじゃないですか。新しい世代の子たちが腰にくる感じっていうのは、日本人がもともと生まれ持ってるものじゃないと思うんですよ。何かから吸収して身につけていくグルーヴで。もちろんそこを全面的に押し出して音楽を作っていくっていうのもいいと思うんですけど、僕らは日本人がもともと持っているグルーヴ――演歌のグルーヴであったりとか、祭囃子のグルーヴであったりを大切にしてるんですね。花火がドーンって打ち上がる音とか、夏祭りのワッショイワッショイっていう掛け声とかは、ちょっと聴こえてきただけで一気にグオーッてテンションが上がる。そういうニュアンスをいちばん下に引いて、そっからプラスαで4つ打ちだったりとかを乗せていってるんで、ウチらの根底にあるグルーヴは、すごく和寄りというか。そこは意識してる部分ではありますね」

――うん、日本人的なお祭り感覚を強引に引きずり出される感じはありますね。ちなみに新作では、作るにあたってのテーマはありました?

ヒデヲ「前にタワレコ限定で出させてもらった『PUBLIC EYE』の延長線上で、次のアルバムも作ろうって話になってたんですよ。でもレコーディングしようかってなった時に、メンバーのなかにちょっと違和感があって……『PUBLIC EYE』の曲をツアーでやった時、良くも悪くも自分たちの尖がってた部分が、丸くなったのかなって感じてしまった部分があったんですよね。『PUBLIC EYE』のコンセプトっていうか、メロウでシンプルでっていう部分は全然嫌いじゃなくて、自分たちが作りたくて作ったものだからそれはそれでいいと思うんですけど、その雰囲気を次の作品まで引っぱるのは違うかなっていうのをみんなで話し合って。要するに、俺らはもっと攻めたいと。やっぱライヴ・バンドだから、音源で聴いても気持ちいいけど、ライヴで観るともっと昂揚できるっていうか、そういう作品にしたほうがいいんじゃないかって。だから『PUBLIC EYE』ってミニ・アルバムは、メロウな部分をフィーチャーしたコンセプト・アルバムとして完結させてしまおうかって話になって。あれがあったから次の『ギムギムの森』も作れたっていうのはあるから、あそこはバンドとして通らなきゃいけない部分だったは思ったんですけど……依田もメロウな曲を歌い上げるっていうヴォーカリストではなかったけど、そういう一面を見せることができたと思うし」

依田「うん、そこはやりこなせたかなあって」

ヒデヲ「いままで埋まっていたメロウな部分がグイッと持ち上がってきたんで、そこを伸ばしつつ、うちらが元々持っていたグルーヴの精度も上げて。だから『ギムギムの森』はわりとやりたい放題なんですけども、出来上がってみたら芯がしっかり通ってて、自分たちのやりたいことが明確に言えるものになったかなあって思ってて。メンバー全員、すごく満足してますね。今回のアルバムには」

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2009年10月28日 18:00

文/土田 真弓