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インタビュー

毛皮のマリーズ 『毛皮のマリーズ』

  

 

ロック好き諸兄を驚愕/驚喜させた毛皮のマリーズのメジャーデビュー! あえてバンド名を冠した今作は、ヴォーカル志磨の「ここがマリーズの本籍!」の言葉どおり、彼らの根幹や本質を占める黄金のロックンロールが満載。
問題の直接介入や解決には至らないが、力や希望を与えてくれる。全てはオールライトでゴギゲンなアルバムだ。

 

「エヴリシン・イズ・ゴナ・ビー・オーライ。人それぞれ悩みや問題もあるけど、大丈夫、きっと上手くいく」
(志磨遼平)


 前作アルバム『Gloomy』発売の際の全国的な店頭での応援や、新宿店1時間限定店員、フリー・ペーパー「毛タワのマレコZ」の通年発刊、タワーレコード30周年ライヴ・イヴェントへの出演と、09年を振り返っても蜜月な関係が伺い知れる、タワーレコードと毛皮のマリーズ。10年はさらにそれが強固になり、「NO MUSIC, NO LIFE?」ポスターへの起用、4/7にはニュー・シングル「NO MUSIC, NO LIFE.」も発売される。ライヴ映えするアッパーな曲の登場予測を裏切り、ジャグバンド風牧歌的ながら、その根底にはしっかりと<音楽があるから大丈夫>とのメッセージを抱かせるナンバーだ。

 

 志磨遼平(Vo.):以下同「頼まれたその日のうちにアコギ一本で作っちゃいました(笑)。
けっして人を励ましたり鼓舞するために歌ったわけではなくて。
<NO MUSIC, NO LIFE.>が前提の、自分なりの<僕たちには音楽があるから大丈夫>とでも言うか。
常に心配や不安、危機感を植えつけられて過ごす今の時代、誰も<大丈夫>なんて言ってくれない。
なので、自身の体験も踏まえ、あえて僕なりの<イッツオールライト、バッチリでご機嫌だぜベイベー>を、
今の世に唱えたんです」

 

 しかし、この楽曲で歌われ、全体に漂っているエヴリシン・イズ・ゴナ・ビー・オーライ感こそ、
今回のメジャーデビュー・アルバム『毛皮のマリーズ』の大いなる伏線となっている。

 毎度のごとく、<これが同じバンドか?>と訝しがるほど、前作との不結を誇る同アルバム。
サウンドにしろ、歌内容にしろ、キラキラな要素はあまり見受けられないはずなのに、
聴く者にキラキラ感を与えてくれるのも特徴の一つだ。
グラム、ブギー、南部、ニューオリンズ、ホンキートンク、ブルースロック等、妄想、幻想、願望、祈りも含め、
パンク以前のいわゆるロック黄金期のテイストで埋め尽くされている。

 

 

 

「これぞ<This Is 毛皮のマリーズ>(笑)。前作アルバムが、かなり暗く内省的だったので、
今回はとにかく暗くないアルバムを作ろうというのと、初めての人たちにも分かるような本来の自分たち、
そして自分たちの血となり肉となる音楽性をあえて出してみました。
<今回はパンクだ>、<今回はビートルズの『サージェント・ペパーズ~』路線だ>等、
今までは作品毎に飛び道具的なコンセプトで挑んでたんですが、今回は最も自分たちの根本、
<スタジオでセッションすると、こんな3コードのロックンロールばかりが出てきちゃう>、そんな作品にしたんです。
今後も色々な音楽性の僕らが現れるでしょうが、僕たちの核はまさにココ。
その意味も込め、今回はタイトルを自身のバンド名にしたんです」

 

 断っておくが、今回はスピーディでパンキッシュな曲は一切入っていない。
しかし、キッズたちよ、決してがっかりすることなかれ。
このアルバムには、それに余る聴き手をワクワク・ドキドキさせるロックンロールの魔法が至る所にかけられている。
本来のロックンロールの持つ、腰に来るノリやカッコよさ、ヤバさやゴキゲン感が満載なのだ。

 

 ブギーの効いたグラム風な“ボニーとクライドは今夜も夢中”。
ツインギター性を活かしたダルでルーズな“DIG IT”。ブルージーで南部の香りプンプンな“COWGIRL”。
ミディアムで歌内容も象徴的な“悲しい男”。NATSUMENのA×S×Eプロデュースのモータウン的ポップス“BABYDOLL”。
トラベリンバンド風の“バンドワゴン”。ミディアムなブルージーロック“サンデーモーニング”。
このアルバムの核を成す、歌内容にも注目して欲しいソウルバラード“それすらできない”。
カリプソ・テイストも心地良い“金がなけりゃ”。ベースの栗本がスィートな歌を初披露した“すてきなモリー”。
ラストはギターとブルースハープでしっとりと“晩年”を、といったラインナップだ。

 

 

 

 理想の音作り環境も手に入れた今回。ホンキートンクなピアノやグルービーなオルガン、アコーディオン、
ビブラフォン、ホーン隊も入り、機材の豊富さ、音の構築具合、望みのゲストやエンジニア等、
かなり頭の中に鳴っていた音楽が具現化できたようだ。

 

「理想の音を出すため、色々贅沢を言わせてもらいました(笑)。
今まで予算的に創意工夫していたものも、出したい音を出したい人に出してもらったし。
<こんな音が欲しい>とリクエストしたら、望みの音や機材がスッと出てきましたからね。
憧れの機材に囲まれ、いやー、幸せでした(笑)」

 

 歌詞の方も前作での自身の内省性に反し、今回はキチンと主人公が立てられ、
その者の物語が展開されている。

 

「前作が非常にパーソナルな歌詞だったので、
<そこからの距離を取る>というのは無意識のうちにあったようです。
今回は主人公を立てて、<その人の一生を表わすのか?>、
<断片を拡大して物語にして描くか?>が中心になりました」

 

最後に今作の聴きどころをたずねてみた。

 

「年配の方には楽器の音やサウンドを楽しんで欲しいし、少年少女には
<世の中色々あるし、問題も山積みだけど、きっと上手くいくから大丈夫だよ>と伝えたいですね。
まさにエヴリシン・イズ・ゴナ・ビー・オーライなアルバムです」

 

大丈夫、全ては上手くいく。これからのマリーズがそれを証明してくれる。

 

■ LIVE…

毛皮のマリーズ『RestorationTour2010』

5/21(金) 下北沢SHELTER
5/28(金) 札幌BESSIE HALL
6/04(金) 心斎橋CLUBQUATTRO
6/12(土)  名古屋アポロシアター ~APOLLOTHEATER10thANNIVERSARY~
6/20(日) 福岡DRUMSON
6/25(金) 仙台enn
7/11(日) 恵比寿リキッドルーム
and more… その後のスケジュールはHPまで。

 

  

■ PROFILE…毛皮のマリーズ

03年に志磨 遼平(Vo.)を中心に、越川 和磨(Gt.)、栗本 ヒロコ(Ba.)で結成。05年に富士山 富士夫(Dr.)が加入し現在のメンバーとなる。志磨の圧倒的なカリスマ性や、他のバンドには無い音楽的センスがインディー・シーンで爆発的な人気となる。4/21発売のニュー・アルバムよりメジャーデビュー。

  

 
記事内容:TOWER 2010/4/5号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2010年03月31日 17:19

更新: 2010年04月02日 20:08

ソース: 2010/4/5

池田スカオ和宏(LUCK’A Inc.)

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