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インタビュー

atrie. 『The Moment Of Sparkle』

 

確かなフロア感覚とメロディックなセンスをフレッシュに融合させる最高に鮮烈な才能——煌めきの瞬間を聴き逃すな!

 

 

FreeTEMPOがラスト・アルバム『Life』をリリースする一方、DAISHI DANCEが初のミックスCDを、HIDEO KOBAYASHIは傑作『A DRAMA』を、そしてSTUDIO APARTMENTも3年ぶりのオリジナル作を発表するなど、2010年に入ってふたたび活気付いてきた日本のハウス・シーン。海外の流れを踏襲しながらも、独自の進化を遂げて成熟してきたそんなシーンにおいて、間違いなく今年いちばんの注目の的になるであろう新人が、静岡は沼津出身のKohei Sato、Hiroaki Watanabeから成る2人組、atrie.(アトリエ)だ。

「俺とHiroakiは小学校からの同級生で、高校の頃はいっしょにバンドをやっていたんですけど、大学進学のタイミングで一度離れ離れになったんですよね。でも2、3年して久しぶりに会ったら、Hiroakiはクラブ・ミュージックのトラックを作るようになっていて、俺は自分でパーティーをオーガナイズしながら本格的にDJをやるようになっていて。音楽的には互いのセンスを昔から信頼できていたので、atrie.を結成するまでに時間はかからなかったです」(Kohei)。

東京やその他の大都市と比べると、お世辞にもクラブ・シーンが盛んとは言えない沼津という地方都市において、みずから〈UPLIFTING!!〉というパーティーを主催し、ジョイ・カードウェルや森田昌典(STUDIO APARTMENT)、DAISHI DANCE、sugiurumn、Jazzin'parkら数々のアーティストと共演を果たしてきたKoheiのフロア感覚と、ハウスのみならずエモやポスト・ロック、エレクトロニカといった、多岐に渡るジャンルからの影響を公言する、Hiroakiの独特の憂いを帯びたメロディーセンスは、結成間もない頃から見事なケミストリーを起こしていたのだろう。それは、arlie Rayをフィーチャーして〈MySpace〉で発表された“dragonfly in december”と、哀愁漂うメロディーが印象的な“azure moon”の2曲が話題となり、デビュー前にしてテレビ東京の人気スポーツ番組「neo sports」の音楽総指揮に抜擢されたことからも証明されている。

「番組の音楽をすべて任せてもらえるなんて、とても光栄なことですけど、嬉しい反面プレッシャーもありましたよ。何も音源をリリースしていないのに、毎日自分たちの曲がTVから流れてきているなんて……。俺もKoheiも、周囲の人の期待を超えるようなアルバムを作らなきゃ!って思いが、凄く強くなりましたね」(Hiroaki)。

そんなプレッシャーと葛藤に見事打ち勝った2人の思いは、ファースト・アルバムとなる『The Moment Of Sparkle』で見事に結実した。オープニングを飾るに相応しい軽快なギター・カッティングと美しいピアノの旋律に、オリヴィア・バレルのソウルフルな歌声が絡む“so lost in love”から、STUDIO APARTMENTへの客演で知られるShihoko Hirataを迎えたアッパー・チューン“fallin' for you”、arlie Rayの神秘的な歌声が響き渡る先述の“dragonfly in december”、先述した「neo sports」のテーマ曲“blaze of dances”、話題のBaby Mが参加した“stand high”までの前半5曲を聴いただけでも、彼らのセンスの素晴らしさに度肝を抜かれるだろう。「フロアでしか機能しないのではなく、リスニングでしか機能しないのでもない、バランスの取れたアルバム」をめざしたという2人が完成させたこの作品は、ハウス・ミュージックを愛するリスナーはもちろん、より多くの音楽ファンを虜にするであろう、美しい旋律に満ち溢れている。

 

▼文中に登場したアーティストの2010年作を紹介。

左から、HIDEO KOBAYASHIの『A DRAMA』、STUDIO APARTMENTの『2010』(共にApt./NEW WORLD)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年06月30日 16:12

更新: 2010年06月30日 16:12

ソース: bounce 322号 (2010年6月25日発行)

インタビュー・文/佐藤 鷹

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