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インタビュー

これまでに携わった数多くの外仕事をコンパイルした作品集も同時に登場しましたよ!

 

ソロ作『DAWNS』と同時にリリースされるのが、mitoの関わった外仕事をまとめた2枚組の作品集『mito archive 1999-2010』だ。演奏のみで参加した楽曲は「そこまで含めるとめまいがする(笑)」ということで今回は省かれ、それ以外の仕事のほとんどをコンパイル。全24曲が年代順に並べられているのだが、初めて曲提供したナンバーだという冒頭の椎名法子“太陽のように”は99年の作品。クラムボンのメジャー・デビューとほぼ同時期である。

「もともと職業作家になろうという発想を持っていたんですよ。むしろ、バンドのほうがサークル活動の延長みたいな感覚だったりして」。

改めて彼の関わった楽曲を見渡してみると、その多芸っぷりに驚かされる。プロデュースや作詞/作曲、アレンジメントはもちろん、agraph“lib”のように、ミックス・エンジニアを担った楽曲もある。作曲を手掛けた山下久美子の可憐なバラード“あなたが望む方へ”に続いて、執拗なカットアップが施されたtoe“path”のアヴァンギャルドなリミックスが飛び出したりと、音の触れ幅も凄まじい。

「音楽的なヴォキャブラリーもそうだし、肉体的なレスポンスもそうだし、どういう形でもちゃんと音楽にできる人間でありたい、パーフェクトでいたいという思いがあるんでしょうね。ポップ・マーケットのなかで、いつでも音楽を作ることができる状態にしたいって気持ちがすごくある。いろんなことに手を出すことで器用貧乏になるなら、それを筋トレするように究極に磨いて、天才という人たちを超える努力をすればいいくらいにしか思ってない。そもそも節操がないと言われることに負い目を感じてたらここまではできないのかなと(笑)」。

クラムボンに近い空気を感じる楽曲もあれば、提供相手の世界観に寄り添ったナンバーもある。部分的に関わることを良しとせず、すべてを担うことにこだわる作家もいるが、彼にそういう気持ちはないという。

「モノを作るって、自分を出していくこととは別に、自分が器になることも重要だと思うんですよ。それに、オーダーを受け入れたうえで作ったものに、むしろ自分のカラーが出ていることもすごくある。音楽をアーティスト主導だけで、主体性だけで見ない。周りに潜在している空気を感じたうえで、響くものを鍵盤なりギターなりで鳴らしていく。個人の色が出てなくても良いし、いろんな人たちの色が入ってきても抵抗がない」。

そんな仕事のスタンスが確立する契機となったのが、木村カエラに提供したエレクトロ・ポップ“Circle”だという。

「この曲は彼女をイメージして作らなかったんです。でも彼女は曲のイメージに近付こうと物凄い努力をして、どんどん自分にダメ出しする。その突っ込み方によって彼女の色が付いて楽曲が太くなっていった。それまでプロデュースって俯瞰する必要があると思ってたんだけど、自分からも喰い込んでいかないとダメだなと。でも作品の主体性がどこにあるのかは結論付けないで動いていく。そこが重要で、プロデュースって形があるものを掴むってことじゃないんですよね。そういうスタイルを、カエラを通して学びました」。

 

▼楽曲が収録されたアーティストの作品を一部紹介。

左から、椎名法子の99年のシングル“椅子”(フォーライフ)、agraphの2010年作『equal』(キューン)、山下久美子の2002年作『ある愛の詩』(EMI Music Japan)、toeの2003年のリミックス集『Re:designed』(CATUNE)、YUKIの2002年作『PRISMIC』(エピック)、おおはた雄一の2005年作『ラグタイム』(ワーナー)、SOURの2008年作『EVERY UNDONE DAWN』(arights)、ともさかりえの2009年作『トリドリ。』(EMI Music Japan)、WORLD ORDERの2010年作『WORLD ORDER』(Pヴァイン)

 

▼関連盤を紹介。

mitoがリミックスで参加したムーンライダースの80年作のリマスター盤『カメラ=万年筆 スペシャル・エディション』(ソニー)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年05月27日 23:38

更新: 2011年05月27日 23:38

ソース: bounce 332号 (2011年5月25日発行)

インタヴュー・文/澤田大輔

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