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インタビュー

アレクサンドル・デプラ

ハリポタ最終章の音楽を手がけた人気作曲家デプラ



このところ、映画音楽作曲家アレクサンドル・デプラの勢いがすごい。『ライラの冒険/黄金の羅針盤』『ベンジャミン・バトン/数奇な人生』『ニュームーン/トワイライトサーガ』『ファンタスティックMr. Fox』『英国王のスピーチ』『ツリー・オブ・ライフ』などなど、ハリウッド大作の音楽を次々に手がけ、ありとあらゆるジャンルをこなしながら、『ラスト、コーション』のようなアジア映画も作曲し、母国フランス映画のスコアを引き受けることも忘れない。しかも、どれひとつとして同じアプローチで作曲することがないのだ。『ハリー・ポッターと死の秘宝PART 2』にしても前作『PART 1』の音楽を安易に流用せず、女性ヴォーカルのメインテーマを新たに作曲した。

「今回の『PART 2』では、全体の音楽設計を変えました。というのは『PART 2』は戦闘シーンの連続で、主人公たちが巻き込まれる危険も格段に多い。(悪の総帥)ヴォルデモートの存在感も、本編の始まりから終わりまではっきり表現されています。そこで『PART 2』では、非常にエモーショナルな《リリーのテーマ》をメインテーマとして書きました。リリーは、言うまでもなくハリーの母親ですが、物語の中で重要な鍵を握る人物ですからね」

そのヴォーカルを担当したのは、久石譲の娘・麻衣だ。

「メインテーマの歌手を決める際、いろいろな歌手の名前が候補に挙がったため、デヴィッド・イエーツ監督の前でブラインドテストをすることにしました。つまり、歌手の名前を伏せて、いろいろなジャンルから集めた女性歌手のデモだけを監督に聴かせたのです。その結果、監督が選んだのが麻衣さんでした」

デプラは、麻衣の抜擢はあくまでも監督によるもの、と強調した上で、久石と麻衣との接点を教えてくれた。

「もともと、久石さんとは友人なんです。数年前も東京で会いましたし、以前カンヌ映画祭で彼が指揮した時も、それから昨年久石さんがアルバム『メロディフォニー』をアビーロード・スタジオで録音した時も会いました。麻衣さんからいただいたデモCDに『もののけ姫』が含まれていたどうかは覚えていませんが、彼女が宮崎作品の音楽を歌った録音を通じて、以前から麻衣さんのピュアでクリアな声質には親しんでいました。おそらく、イエーツ監督もその点が気に入って抜擢したのではないかと思っています。そこで、アビーロード・スタジオでのセッションでは麻衣さんの声質を活かすため、若干の部分にポルタメントを使った以外、ほぼすべてをノンヴィブラートで歌ってもらいました。もっとも、彼女は素晴らしい才能の持ち主ですから、音楽がどのように歌われるべきか、曲の本質を現場で即座に理解していましたよ。ですから、こちら側もあれこれ指示する必要はありませんでした」

ちなみに、日本ではデプラと表記されることが多いが。

「正しくはデスプラと発音しますが、仮に間違っても責めることはありません(笑)」

掲載: 2011年10月17日 14:18

ソース: intoxicate vol.93 (2011年8月20日発行)

interview & text : 前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)