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インタビュー

ハンガイ

世界のロックフェスに蒙古フィーバーが襲来中

内モンゴル自治区出身のグループ、ハンガイがセカンド・アルバム『走的人/He Who Travels Far』を発表した。フジロックの参加者のなかには、馬頭琴やホーミーを操りながらロック・スピリットに溢れたモンゴルの伝統歌を歌う彼らに度肝を抜かれ た人も多いだろう。ここには国家や地域を問わず、刺激的な音楽を欲する若きリスナーたちのハートに火をつけるようなモンゴリアン・ロックが詰まっている。 自由を求める人に必要な自由の歌たちがひしめき合っているのだ。

「最初は西洋音楽とモンゴルの音楽をいっしょにやるのがうまくいかなくって、いったんロック楽器を置き、伝統楽器のみで演奏してみた。全部を伝統楽器にしてから少しずつ西洋楽器を足すようにしていった」とハンガイの出発点を語るのはフロントマン、イイチ。北京でパンクに目覚め、グランジ系のバンドをやったりしていたが、反抗期を過ぎた頃(本人発言)にもともと近い存在だったモンゴルの伝統音楽を真剣に学ぶことを決心。同じくそれぞれロックをやっていたメンバーたちと共にこのバンドを結成して、2008年に初作『Intoroducing Hangai』を制作。以後もバンドのスタイルを模索し続けるが、2009年ごろエレキ・ギターを採り入れたことで自分たちのサウンドの発見に至ったという。エレキこそ彼らのサウンドを遠くに飛ばすための道具となった。

「僕らの音楽にはロックのテイストが強い。それは都市に生きる人間が持つどうしようもないと感じるストレスをロックの要素で表現しているんだ。またそういうストレスは僕らの民族が抱えている問題にも似ている」

ライヴのノリを反映させたという『走的人』には、大自然の風景を想起させる旋律や楽器の音色にロック的ダイナミズムがうまく融合した楽曲が並ぶ。結果、彼らが元来持っていた魅惑的な野蛮さが際立つ結果に。ところで、彼らの熱いパフォーマンスはいろんなタイプの音楽ファンを惹きつけており、ドイツの世界最大のメタル・フェス『Wacken Open Air』にも呼ばれていたりもする。

「驚いたよ。オーディエンスたちが曲名を知っていたことにも驚いた。膝立ちになって泣いていた人もいたなあ」

たくさんのラヴコールを受けて各地の音楽フェスに参加、旅に明け暮れる彼ら。この2作目は世界に出たことで得た経験などをしっかり反映させた作品になったが、アルバムの隅々からこの先もさらに遠くをめざそうとする彼らの自身を鼓舞する力強い掛け声が聞こえてくる。

「今回、草原に住む若者が自身の音楽を追求するために馬頭琴を背負って遠くまで行く、という内容のオリジナル曲を書いたんだけど、自分たちの経験と似通ったところがあり、この表題を付けた。僕らの音楽は西洋諸国から注目されていて、大変歓迎されている。今度は僕らが内モンゴルの人たちに影響を与えたいと思っているんだ」

彼らが描く世界の果ての風景などもぜひ見てみたい。

掲載: 2011年10月17日 13:49

ソース: intoxicate vol.93 (2011年8月20日発行)

interview & text : 桑原シロー