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インタビュー

ジュリアン・レイジ

卓越した想像力と審美眼を如何なく発揮する神童の2作目



やはり、技巧だけに終わらぬイマジネイションを持つ、〈視力のいい〉ジャズ・ギタリスト。2作目となるアルバム『グッドウェル』を聴いて、ぼくはそう思っ た。テナー、チェロ、ベース、ドラムという変則編成の自己バンドのもと、彼は純アコースティック路線にあるのに、どこかオルタナティヴな、ストーリー性に 富むジャズを見事に提出している。

「物語性というのは、僕が音楽を作る際にとても留意していること。やはり、20〜30年代のジャズやクラシックを聴くと、それがある。僕の目標としては、自分の音楽にもそういう物を宿らせたいんだ。僕はいろんな要素を〈綱引き〉させて、自分の解釈を加え、普遍的な何かを新鮮な形で出したい」

ちなみに、デビュー作『サウンディング・ポイント』(09年)については、以下の所感を今もっている。

「自分の作品をあつめたポートフォリオのようなもの。異なる4つの単位で録音したんだけど、今聴くと、多様なのに統一感があるよね。今の自分がいろんな方向に進める土台を築いたアルバムだ」

そして、彼は新作をこう説明する。

「前作を踏まえて、新しい場所に旅立つことができたと思っている。具体的には、今作はいつもやっている僕のバンドに焦点を当てたかった。1作目はいろんな色彩感や風景を出すのに留意したけど、今作はそれを経てのインターアクション、インプロヴィゼーションを求めたんだ」

クラシックとフォーク・ミュージックを同じ座標における柔和な感性を持つ彼だが、その興味深さはバンド・メンバー集めにも表れている。なんと、サックス奏者以外は南米出身者で固めているのだ。

「ベーシストはペルー、ドラマーはコロンビア、チェロ奏者はベネズエラ出身さ。南米出身者が揃ったのは偶然なんだけど、それがどこか一筋縄では行かない余韻に繋がっている部分はあると思うな」

ちなみに『グッドウェル』というアルバム表題は、架空の街の名前。なるほど、その音は時代軸や地域性からすりとスタイリッシュに遊離している。

「そういう感想はありがたい。自分としては、誰が聴いても将来的に意味をなすものにしたかった。その一方で、2011年にしか生まれ得ない内容にしたいとも留意した」

しっかりと、審美眼と自分があり。10代頭からゲイリー・バートンと共演するなど、神童の名をほしいままにしてきた彼だが、23歳になった今、齢を重ねるのが楽しくてしょうがないのではないか。これまでだと、若さだけに着目されがちなところ、ようやく彼が作る音楽がきっちり語られるようになってきているから。

「本当にそう。若い時は年齢の事しか語られなかったもの。だから僕は20歳を過ぎるまでアルバムを作らなかった。でも、今はかつてと違い、ようやく音楽と質に焦点を当ててもらえるようになったんだ」

掲載: 2011年10月17日 12:18

ソース: intoxicate vol.93 (2011年8月20日発行)

interview & text : 佐藤英輔