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インタビュー

アレクサンドル・メルニコフ

驚くほど新鮮なベートーヴェンとショスタコーヴィチ

アレクサンドル・メルニコフ(1973〜)はモスクワ生まれのピアニスト。10代で世界的なコンクールへの入賞を続けて注目を集めた。その後あの巨匠リヒ テルの代役としてシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭に出演し、賞賛を浴びることになる。ちょっと地味な外見ながら(失礼!)、音楽性、テクニックに関 しては群を抜く。 最近はヴァイオリン界を賑わすイザベル・ファウストと組んで、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲をリリースした。

「彼女との共演は僕が熱望したものなんです。ある音楽祭で彼女の演奏を聴き、あまりに素晴らしいのですぐ楽屋に行って共演したいと告げました。しかし、なかなか機会は巡ってこなかったのですが、ようやく室内楽を共演するチャンスが生まれ、そこで共演を果たしました。以後、彼女のプロジェクトに参加するようになったのです」

音楽祭などでの共演を重ねたふたりは、ブラームスのホルン三重奏、ヴァイオリン・ソナタ第1番《雨の歌》、そしてベートーヴェンの《クロイツェル・ソナタ》を録音し、次第に全曲録音への道程を進めて行った。

「彼女との共演は常に刺激的で、お互いに演奏のアイディアを出し合いながら、録音に臨みます。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは実に多彩な世界で、1〜3番、4〜5番などと、いくつかのまとまりを持って作られていますが、それぞれの書かれた時代によってかなり様相を変えています。第10番だけが離れた時期に書かれていて、その重要度は高いと思います。《スプリング》《クロイツェル》ばかりが重要なのではなく、他の作品との関連性、それぞれの作品の個性がとても重要なのです。だからふたりの意見が一致したのは、これはどうしても全曲まとめて聴いてもらわなくては、ということだったのです。録音は大変でしたけれどね」

しかしCD付属のDVDには実に和気あいあいと録音に臨むふたりの姿が捉えられている(イザベル曰く、メルニコフは魔法使いのようにピアノのタッチを変えられる人らしい)。

メルニコフのソロのプロジェクトも興味深い。ショスタコーヴィチの 《24の前奏曲とフーガ》がそれだ。

「個人的にはバッハの作品には深い関心を持っているのですが、ショスタコーヴィチの24の調性へのアプローチにはさらに独特のものがあると思います。この作品は単にバッハの模倣ではなくて、ショスタコーヴィチの音楽的な想像力の集大成とも言えるもので、ニコラーエワを初め多くのピアニストが魅力されるのもよく分かります。DVDで一緒に語り合っているアンドレアス・シュタイヤーは個人的に色々と教えてもらっているし、この企画にぴったりのインタヴューアーだと思います」

2012年にはイザベル・ファウストとのベートーヴェン全曲の他、このショスタコーヴィチも実演で演奏する。素晴らしい演奏会になること間違いなしである。

『イザベル・ファウストとのデュオ』
2012年2/15(水)名古屋 電気文化会館
2/16(木)17(金)18(土)東京 王子ホール 

『ソロ・リサイタル』
2012年2/21(火)東京 武蔵野市民会館
2/25(土)名古屋 電気文化会館
2/26(日)東京 浜離宮朝日ホール

http://www.japanarts.co.jp/


掲載: 2011年10月18日 14:45

ソース: intoxicate vol.94(2011年10月10日)

interview & text : 片桐卓也