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インタビュー

ソフィー・ミルマン

「アルバムを作るごとに成長できるのです」


ロシア生まれでイスラエル育ち、現在はカナダに住む。誰もが送れるような人生ではない。そしてそれが、ソフィー・ミルマンの考え方に影響しないはずもない。

「もちろん、私の人間形成に重要な影響を与えています。それによって私は早く大人になりました。誠実さとか、責任感が早く身についたと思います。移住によって家族や友人、馴染んだ場所を失いましたが、大きなものも得られました。子供の頃から様々な文化や言語を行き来しながら育ったことは感性を成熟させ、深いところで芸術やジャズ形式にも影響が出てきています」

新作『イン・ザ・ムーンライト』では、また新しい経験が加わった。

「ストリングスと一緒に、新しい場所でレコーディングし、今迄会ったことのない人たちと仕事をしたことは私にとって初めてのことです。歌ったことのない14曲もの新曲にも取り組みました。それまでの3枚のアルバムは、ツアーで演奏し、準備していましたからね」

また、「スタジオでやかんは何処にあるのかきいたら、ヨーコ・オノが上の階で使ってるって。こんな話はニューヨークならではね」と、ニューヨークでのレコーディングをふり返る。

ジャズのスタンダードに限らずポール・サイモンやジョニ・ミッチェルの作品をカヴァーしてきた彼女だ。

「私に語りかけ、私を楽しませたり、笑わせてくれたり、考えさせてくれたり、泣かせてくれた曲を選ぶようにしています。音楽にあわせたポエムと思って歌詞の中の韻を調べるのが好きなんです。そもそも、ジャズは柔軟性に富んだ自由な媒体ですからね」

今回はビートルズのカヴァーで有名なメレディス・ウィルソンの《ティル・ゼア・ワズ・ユー》も取り上げた。

「父がビートルズの大ファンで、私は彼らの音楽を聴いて育ちました。この曲も父のお気に入りで、長旅の時はいつも私にこれを歌ってくれとリクエストしていました。私には、家族みんなで挑戦的に過ごしていた、音楽が全てだった子供の頃を思い出させてくれるのです」

また、カナダ同郷の新鋭ファイストの《ソー・ソーリー》を取り上げているのにも注目したい。

「カナダのアーティストをトリビュートして取り上げるのは楽しいことです。ジョニ・ミッチェルも大好きですが、ファイストも素晴らしい。この曲は、とても深いレベルで私に語りかけました。歌詞が私の心をつかみ、私自身の人生を連想させたのです」

贅沢な絨毯に織り込まれるようなその歌声は陰影が深まり、表情が豊かに響く。それを、こう表現した。「変化の記念碑。個人の成長。結婚して家を建て、大学の単位も終了し、声も再調整して自信になったし、成熟しました。今迄以上に繊細なニュアンスも表現出来たし、レベルの高い音楽に到達できたと思います」と。

『ソフィー・ミルマン2011年来日ライヴ・スケジュール』
10/12(水)名古屋ブルーノート
10/14(金)〜16(日)ブルーノート東京
10/18(火)コットンクラブ

http://www.jvcmusic.co.jp/

掲載: 2011年10月18日 15:51

ソース: intoxicate vol.94(2011年10月10日)

interview & text : 天辰保文