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インタビュー

大城美佐子&堀内加奈子

ゆったりとした暮らしの中で、〈うた〉は継がれていく



「〈うた〉は生活から生まれるからねえ」大城美佐子は堀内加奈子の隣で、ぽつりとそう言った。

沖縄はいまも民謡が息づいている場所だ…といっても、それが順調に継がれているかといえば、それほど楽観視はできない。テレビやインターネットに囲まれて暮らす人々の好みは画一化し、民謡などに全く縁のないウチナンチュ(沖縄人)だって珍しく無い。ところが、その一方で沖縄民謡に魅せられてやってくる人々もいる。北海道生まれの堀内加奈子もそのひとりだ。

「自分が関わった(CMの)セットの前で登川誠仁さんが歌ったとき、その背景になにかが見えた気がしたんです。三線持って海外に行きたい、と思い立って、 あまり調べずに沖縄に行ったんですが、三線のこともよく知らないし、なんのつてもコネも無い状態でした。それで到着した日に知り合った人を頼って野村流の 古典を1ヶ月習って、それから那覇に戻ってきて先生(大城)の店に行ったんです」…なんとも思い切った話だ。そんな堀内を迎えた大城と言えば「内地から来 て歌をやりたい。そういう子はたくさんいましたからね。できるならやってごらんということですよ。でも私のところからは誰も逃げていないねえ(笑)」と当 時を振り返る。

そして現在。大城が「そんな中でも、いちばん熱心だった」と言い、堀内が「最初の『三線持って…』なんて動機は忘れるくらい、がむしゃらにやってきた」という11年を経て、堀内は大城と一緒にアルバムをリリースするまでに成長する。店を手伝い、沖縄で暮らす中で培った歌声は、大ベテランとの共演という形で実を結んだ。すでにスカ・ラヴァーズ名義で何枚かのアルバムに参加する堀内。

「でも民謡できちっとしたものも出したくて、先生には全体の監修と2、3曲参加していただくことをお願いするつもりでした。でもだんだん曲も増えていって」。引き受けた大城も「レコーディングは一度吹き込んでしまうと消すわけに行かないから、キチンとしようね。ということでやっていたら…ほとんど全曲」と笑う。その笑みの奥には、大城が継いできた〈うた〉の行き先が見えた、という安堵の表情も読み取れる。「うれしいですね。沖縄の子ができないことを本土の子がやろうとしている。一時期は沖縄の民謡はもうだめだ…なんてね、寂しい思いもしましたけれどね」

そんな大城と、歌を継ぐ堀内の心情は、上原直彦が書き下ろした新曲《歌ぬ縁節》に込められている。あまりの歌詞の美しさに大城は「もう見ただけで涙がボロボロ出てしまって」というのだが、ウチナーグチがわからない筆者などが見ても、言葉の並びだけで美しさを感じてしまう、ぜひ声に出して読みたい歌詞だ。そしてこの曲もきっと、後生に歌い継がれる曲の一つになるだろう。

アルバムの最後におさめられたこの曲を、かわるがわる、そして最後は一緒に歌う二人。その歌声を聴きながら、沖縄の〈うた〉が生活の中で継がれていくことを、  改めて感じることができるだろう。

『「歌ぬ縁」リリース記念コンサート』
2011年11/6(日)青山・CAY
2011年11/18(金)那覇・桜坂劇場ホールA
スペシャル・ゲスト:よなは徹

http://www.respect-record.co.jp

掲載: 2011年10月28日 11:00

ソース: intoxicate vol.94(2011年10月10日)

interview & text : 渡部晋也