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インタビュー

マーク・リーボウ


熱狂的に迎えられた「偽キューバ人」バンドの復活


NYボーダーレス音楽界出身、純即興からポップ・ミュージックのサポートまで、無勝手流ギター演奏で横切ってしまう特殊ギタリストがマーク・リーボウだ。

「T・ボーン・バーネットとジョー・ヘンリーのプロデュース作にはよく入るけど、おもしろいことにそれらは違うプロジェクトなのに、ほぼ似たような顔触れのバンドがつくよね。現在、自分としては、セラミック・ドッグ(シャザード・イスマリーとチェス・スミスとのトリオ)と自己名義の活動を柱に置いている。『Silent Movies』というリーダー作にも満足しているよ」

そんな彼はこの夏、「偽キューバ人(Los Cubanios Postizos)」プロジェクトで来日、フジロック出演を含むツアーを行い好評を博した。アンソニー・コールマンほかのNYアンダーグラウンド音楽界の仲間たちと始めた同バンドは、アフロ・キューバン音楽の偉人アルセニオ・ロドリゲスの音楽にオマージュするという目的のもと、90年代後期に始められた。

「90年ごろにベルリンの壁の崩壊とともに、クラシックなキューバン・ソングのリイシューがいろいろされたんだ。それで、何かと聴き始めたら、アルセニオ・ロドリゲスの音楽には深く入り込まざるを得なかった。そして、アルセニオの音楽はまさに僕が取り組む課題だと思ってバンドを組んだわけさ。ラッキーなことにバンドを組んで初めてのギグをやったら、アトランティック・レコードが契約を持ちかけてきた」

同バンドはアトランティックから、『The Prosthetic Cubans(キューバとの絆~アルセニオ・ロドリゲスに捧ぐ)』(1998)と『Muy Divertido!(!ムイ・ディベルティード!)』(2000)という2枚のアルバムを出している。

「1作目はかなり満足しているな。皆いい演奏しているし、プロデュースもいいしねえ。まあ、僕のキャリアの中ではちょっと特殊なプロジェクトだとは思うけど、このバンドでいろんな場所で演奏できたし(2001年に、このバンドで来日もしている)、振り返ってみると、僕にとってはハッピーなアルバムだな。2作目は正直言って、1枚目ほどは満足していない。というのも、実はもっとバンドの音をエレクトロニカなものに近づけたかったんだけど、それができなかったから。でも、誰にとっても、セカンド作というのは往々にしてそういうもので、まあ順当な仕上がりとも言えるね」

「偽キューバ人」バンドが大車輪したのは10年も前のこと。だが、現在も稀ではあるがギグを持っており、今回の彼らの来日公演は本当に力と魅力に溢れたものだった。

「かつてはポスト・モダン的な視点も持つとも思っていたが、今は仲間との純粋な楽しみとして『偽キューバ人』をやれる。それで、今回の日本のツアーは、今までやってきたギグの中でもベストと言えるものになっている! 最終日の東京公演の模様(オノセイゲンが録音した)はライヴ盤化することも考えているんだよ」

掲載: 2011年11月02日 11:00

ソース: intoxicate vol.94(2011年10月10日)

interview & text : 佐藤英輔  写真:西岡浩記