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インタビュー

ジャイルス・ピーターソン


探求は終わらない




ジャイルス・ピーターソンのブラウンズウッド・レコーディングスから、『Gilles Peterson Presents Havana Cultura: New Cuba Sound』(2009)の続編『Gilles Peterson Presents Havana Cultura: The Search Continues』が発表される。前作同様2CDという仕様でのリリースで、1枚目には本作のために結成されたプロジェクト、ジャイルス・ピーターソンズ・ハバナ・クルトゥーラ・バンドによる新録音源が、そして2枚目にはジャイルスによって吟味されたキューバの俊英アーティストたちの音源が収められている。では、前回に引き続き、今回も1枚目に関しては、ロベルト・フォンセカが果たした役割は大きかったのだろうか?

「いや、前回ほどじゃないな」とジャイルスは説明する。「本作にはもっといろんなひとを絡めようと思っていたんだ。だから今回は、フォンセカのトリオに1日でリズム・トラックを録音してもらった。1月にハバナに行ったときにね。その際に、ダブステップのプロデューサーのマーラにも同行してもらったんだ。彼にキューバのリズムを体感してほしかったからね」

確かに、本作の1枚目にはジャイルスと、前作のプロデュースも手掛けていたヴィンス・ヴェラに加え、ジャイルスの盟友、シンバッドと、マーラがプロデューサーとして名を連ねている。ジャイルスと近い関係にあるシンバッドの起用はともかく、マーラの抜擢には少々、驚かされた。レーベル、DMZや同名のクラブを運営するかたわら、コーキとのユニット、デジタル・ミスティックスの名の下で幾多の傑作を送り出してきたダブステップ・シーンの大御所、マーラ。彼を抜擢した裏にはどんな狙いが隠されていたのか?

「ダブステップは長年にわたって、英国で大きなムーヴメントになっているよね」ジャイルスは語る。

「そしてそのムーヴメントに関与するひとたちのなかで、最初にぼくに感銘を与えてくれた人物がマーラだったんだ。マーラはレゲエという観点からダブステップを捉えているだけに、彼の音楽性はチャンネル・ワンなどのサウンド・システムのカルチャーと密接につながっている。しかもマーラは、ほかの音楽に対してもオープンな姿勢を持っている。そこで考えたんだ、もしジャマイカ系の彼が同じカリブ海の国、キューバのサウンドに触れてみたら、どうなるだろうってね。この実験の結果には満足しているよ」

さらに、本作の1枚目では、プロデューサーとしてクレジットこそされていないものの、キューバ音楽界の巨匠、ボビー・カルカセースの息子で、グループ、インテラクティヴォ(2枚目に収録されている《Chica Cubana》は彼らの楽曲)も率いるロベルト・カルカセースが《Malecon Habanero》と《Check La Rima》をプロデュースしている点も見逃せない。特に、ア・トライブ・コールド・クエストの《Check The Rhime》をキューバン・マナーでカヴァーした後者を素通りするなかれ!

掲載: 2011年11月14日 11:00

ソース: intoxicate vol.94(2011年10月10日)

interview & text : 北浦知司(音楽ジャーナリスト)