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インタビュー

Green Butter 『Get Mad Relax』



ビートが回り続けて心地良くとろけたら、スムースな緑色のバターになる……Budamunkとmabanua、ふたりの鬼才がリラックスして作り上げた快作!!



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Budamunkとmabanua。曲単位ではこれまでもちらほら世に出ていた2人の共同作業が、このほどGreen Butterなるユニットのアルバム『Get Mad Relax』という形で実を結んだ。何十曲にも及ぶ約2年半ほどのやりとりの、そのごく一部をまとめたというアルバムへの道程は、「どこに共感できたかというより、共感できない要素が特に見つかんなかった」とmabanuaも説明するお互いのセンスの共有がそもそもの始まり。

「mabanuaのアルバムを聴いてこいつは絶対ノリをわかってると思ったし、通じ合えるものがあった」(Budamunk)。

「音数の少なさとか音の汚れ方とかに同じものを感じたし、理想としている音像がすでに確立されてるのを一聴して感じました」(mabanua)。

初めて遊んだ時にはもういっしょに曲を作りはじめていたという2人の共作は、Budamunkのビートに、mabanuaがエレピやギターなどの生音を乗せるやりとりがベース。そこにもはやお互い言葉は要らなかった。

「誰かといっしょに作ってると〈こうしたほうがいいんじゃない?〉って、ふだんは結構言っちゃうほうなんですけど、Budaくんから送られてくるものはまったくドンピシャすぎて、全部〈いいねいいね〉で返してて」(mabanua)。

「音楽的なことを話す以前に〈こんな感じっしょ〉みたいな。(生楽器を)乗せる音のタイミングがいちばん重要で、それをmabanuaが理解してくれてるから、俺から言うことも特になかったし、俺はいつもと同じことやってるだけ(笑)」(Budamunk)。

タメや間を活かしたビートと、その間を縫うようにゆったりと泳ぐ生音。そして、それらにほぼ最小限の客演を加えた肩の凝らない音楽性。多岐に渡る活動のなかでもmabanua自身「いちばんシンプル・イズ・ベストが体感できるプロジェクト」と語るGreen Butterの音楽は、タイトル通りリラックスしたムードを一曲一曲で引き寄せる。彼らのふとした発言は、そんなアルバムのエッセンスをさらに解き明かしてくれた。

「何がソウルか説明するのは難しいけど、mabanuaにはそれがあるし、音のタイミングにグルーヴを感じられることがそれだと思う。タイミングがばっちりクォンタイズされてたら俺たちには不自然だし、自然に身体が動くグルーヴっていうのが大事」(Budamunk)。

「ヒップホップっていうとドラム(の音)がバコンバコン出てるイメージあるけど、ドラムを小さくしたからってグルーヴが弱くなるわけじゃない。Budaくんはあえてドラムを小さくする、いびつにするそのカッコ良さが共有できるたぶん唯一のアーティストですね」(mabanua)。

くつろいだ音楽性に強いこだわりを隠したGreen Butterの『Get Mad Relax』。「家でチルするためのリラックス音楽と取ってもらってもいい」とBudamunkも話すその仕上がりは、2人の共作関係の居心地の良さの表れでもある。「ホントにお互いやりたいことを自由にやってるだけ」というBudamunkにとっても、「ソロを別にしたら唯一制約のないプロジェクト」だというmabanuaにとっても、Green Butterはいつでも帰れる真新しい「我が家」(mabanua)なのだ。

「他では悩んで悩んで、疲れて終わることもあるけど、Green Butterは何も考えないで、聴いたものに素直に自分のやりたいことを乗せればいい」(mabanua)。

本作より一足先にBudamunkが発表した、アジア風味をサンプルで打ち出している『Blunted Monkey Fist』然り。自身はもちろん、タヒチ80のグザヴィエやジェシー・ボイキンズらもヴォーカルを寄せ、来年初頭にリリース予定だというmabanuaのセカンド・アルバム然り。各々の作品は、Green Butterの『Get Mad Relax』と底で響き合い、彼らのさらなるリリースへと引き継がれていくだろう。



▼関連盤を紹介。

左から、mabanuaの2008年作『done already』(origami)、Budamunkがプロデュースに参加したS.l.a.c.k.のニュー・アルバム『この島の上で』(高田音楽制作事務所)

掲載: 2011年12月07日 00:00

更新: 2011年12月07日 00:00

ソース: bounce 338号(2011年11月25日発行号)

インタヴュー・文/一ノ木裕之

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