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インタビュー

須藤満

 

歌心溢れる渾身の『ベース・リーダー作』





ザ・スクエア(現T–スクエア)の中期(1987年〜2000年)を支え、現在はTRIX、KORENOSなど多くのインスト・バンドに参加、またゴスペ ラーズのバックなどJ –POPフィールドでも活躍する日本を代表するベーシスト、須藤満が今年プロデビュー25周年を迎た。それを記念して 〈ベーシストのソロ作品であることに徹底的にこだわった〉という渾身のニュー・アルバムを発表。

「個人名義としては3作目となりますが、以前の二作は僕がリーダーのセッションを音源化したという意味合いの強いものでした。しかし本作はベースを聴かせることを念頭に置いて作りましたから、僕にとって 〈人生初のベーシストとしてのソロ・アルバム〉と位置づけることができます」

激しいドラム&ベースバトルはもちろん、ゴスペラーズが参加したベース&ヴォイス、キャロル・キングやS&Gのヴォーカルカヴァー曲、完全なベースソロなど多彩な楽曲が収録されている。

「楽器編成が少ないですが、これはベーシストのアルバムであることを意識した結果。ベースがとるメロディや和音を際立たせるためです」

そして、アルバムタイトルにも記されているとおり、今年3月に起こったあの痛ましい震災が彼の心に影を落としている。そのせいか、祈りにも似た美しい楽曲が印象的だ。

「僕自身の25周年に加えて、震災がこのアルバムを作るきっかけとなりました。その後一人で現地へ行って演奏してきましたが、そこであらためて自分にできることを考え、〈今年だからこそ作品を残したい〉 という思いに辿り着きました」

表現者であるかぎり、時代を背負わなくてはならない。同じ時代に同じ日本で暮らす我々にできることは何か? 危機感や現地への支援を声高く叫ぶのも一つの方法だろう。しかし彼はそれとは違う温度で語りかけてくる。直接には何もできなくても、〈ずっと忘れずにいること〉、 これが大切なのだと…。

「僕自身の 〈思い〉 を込めた曲たちが、さりげなく皆さんの明日へのチカラになってくれれば、こんなに嬉しいことはありません」

この作品を聴き終えて、彼の〈思い〉 が澄んだ秋の空に高く舞い上がっていくのを感じた。日本屈指の熱きベーシスト、須藤満による静かなる作品。この温度差にこそ、彼の真のメッセージが込められているのだろう。

LIVE INFORMATION
『アルバム発売ツアー』
2011年12/12(月) 岡山・MO:GLA
2011年12/13(火) 神戸・CHICKEN GEORGE
2011年12/14(水) 京都・Live Spot RAG
2011年12/15(木) 横浜・Hey-JOE
※2012年3月頃全国ツアー予定 [http://www1.tmtv.ne.jp/~sutoh/]

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年12月13日 12:00

ソース: intoxicate vol.95(2011年12月10日発行)

interview&text:近藤正義