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インタビュー

パブロ・シーグレル

いまだ輝き続けるピアソラ音楽をシーグレル版に編曲

アストル・ピアソラが亡くなって20年。しかし彼の書いた音楽は、今でも私たちの心を捉えて離さない。そのピアソラの5重奏団で活躍し、ピアソラの演奏史の中で最も充実した時代を作ったピアニストがパブロ・シーグレルだ。

「ピアソラは常に新しい音楽を求めていた。タンゴの演奏の経験が無かった私が彼の楽団に参加を求められたのも、なにか新しいインスピレーションが必要だったからだと思う。もっとも、私もポルテーニョだから、タンゴ音楽は子供の頃から身体に染みついていたんだけどね」

あの鋭いタッチによる《アディオス・ノニーノ》のイントロダクションを演奏するピアニストであるシーグレルさんだが、普段はいたって気さくな方で、こちらの質問にも淀みなく、次から次へと答えを返してくれる。

「ともかく私たちが新しい5重奏団を始めた時には、ピアソラはかなり自由に演奏をさせてくれた。今では誰もが演奏している《リベルタンゴ》の前奏の部分の音楽は、実は私たちがアドリブで演奏していたもので、それがいつの間にか定着したものなんだよ」

ピアソラ没後20周年の今年、ピアソラ作品を中心とする演奏会を開く(7月4日東京オペラシティ)。中心となるのはピアソラ作《ブエノスアイレスの四季》のシーグレル版だ。

「この編曲版はピアノと小さな編成のオーケストラのための編曲として委嘱された作品で、これまでオルフェウス室内管弦楽団と演奏して来た。今回の日本での演奏も、日本の若い演奏家たちと共演することがとても楽しみだね。と言うのも、日本の演奏家のレベルは非常に高くて、 音楽的に充実している」
共演メンバーにはバンドネオンの北村聡やベースの西嶋徹が。そしてフルートの上野由恵、オーボエの荒絵理子、クラリネットの伊藤圭など、注目されている管楽器奏者なども参加する。

「ピアソラの《ブエノスアイレスの四季》はもともと別々に書かれた作品だけれど、やはりヴィヴァルディの作品と同じように、それぞれがはっきりとした個性を持った作品だね。その魅力は全然色あせないし、多くの演奏家がヴィヴァルディと並べて演奏しているように、いまや新しい『四季』と言っても良い存在になった。ピアソラが常に求めていた革新性がここにあると思う」 シーグレル版の日本初演が待ち遠しい。

LIVE INFORMATION
『アストル・ピアソラ没後20年記念《ブエノスアイレスの四季》』
パブロ・シーグレル(ピアノ/指揮/作曲/編曲)パブロ・シーグレル・フェスティバル・オーケストラ
7/4(水)19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール
http://www.operacity.jp/

掲載: 2012年05月11日 16:51

ソース: intoxicate vol.97(2012年4月20日発行号)

取材・文 片桐卓也