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インタビュー

INTERVIEW(3)――〈感覚〉で聴ける音楽



〈感覚〉で聴ける音楽



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――それにしても、一十三十一さんが考えてるアイデアを音にしてくれるっていうことでは、この3人を置いて他にいないっていう顔ぶれですよね。

一十三十一「本当にそうだと思います。安心感がありますね」

――制作はどんな感じで進んで行ったんですか?

一十三十一「Billboardのレーベルから出せるっていうことになって、まずアルバムのコンセプトから固めて……ちょっと説明お願いします(笑)!」

クニモンド「Billboardが新しくレーベルを始めて、〈Choice〉っていうカヴァー・シリーズをNONA REEVESと須永辰緒さんのSunaga t experienceが出し、次に一十三十一ちゃんをやりましょうって話になって。その時に、やるのであればオリジナルとカヴァーの両方をやりましょうって柔軟な感じでレーベルのほうが委ねてくれたので、わりと自由にやらせてもらえましたよね」

一十三十一「コンセプト・ミーティングは何回も何回も重ねて。例えば、ユーミンでいうとあのアルバムっぽい感じにしたいとか、イメージをより具体的に詰めていくミーティングが何回もあったんですね。〈BIGSUN〉のイメージだったり、時間帯でいうと夜7時から朝の7時までだとか、その時間に東京から横浜をドライヴして帰ってくる感じだとか、初夏から夏にかけての気持ちいい風が吹くときにいちばん聴きたくなるようなアルバムだとか、そういうイメージをどんどん出していって」

クニモンド「80年代にシティー・ポップと呼ばれていた音楽って、その場所に行かなくても聴いてるだけで体感できちゃうようなところがあったと思うんですよ。今回のアルバムのコンセプトもまさにそれで、実際に体感したことのない人でも体感できちゃうような言葉の使い方だとかサウンド観っていうものになっていると思います」

――当時のシティー・ポップが都市生活者以外の人にもウケて、結果的に大きなムーヴメントになったのはそういうことですよね。

クニモンド「そうだと思いますね。都会の人でも地方の人でも〈感覚〉で聴ける音楽だったと思います。ただやっぱり、作り手側は都会的なセンスがないと。地方に住んでる人ができないって意味じゃなくてね。やっぱりね、シティー・ポップってオシャレなサウンド……それが成り立ちのすべてではないですけど、憧れ感とか想像力で聴けるものってオシャレだと思うんですよね。みずからオシャレだって言っちゃうのもどうかと思うんですけど(笑)」



リアルタイム世代と非リアルタイム世代の感性



――シティー・ポップが流行した80年代の空気を体験していないDORIANさんとKashifさんが、そういう匂いの音楽をクリエイトしているのは、懐かしさとは違ったある種のムードがあるからだと思うんですよね。

一十三十一「みんなムード派なんですよ。ロマンティック男子!」

クニモンド「僕なんかの世代だと、やっぱり懐かしさみたいなものも感じてしまうんですけど、DORIANくんやKashifくんの世代からしたらたまたま出会って楽しんでるのかもしれないね」

Kashif「僕が普段PAN PACIFIC PLAYAでやってる音もそういうテイストがあるんですけど、そもそもシンセの使い方とか80年代の技法みたいなものに好きなものが多くて」

クニモンド「Kashifくんのアレンジは、楽器とかも古い機材を選んでやってるような気がするんだけど。それこそ(TR-)808とか」

Kashif「そうですね。リズムボックスに関しても、ヴィンテージ系のやつのテイストがすぐにわかるようにしたいなとは思いましたね。それがあると、上にどんなハイファイなものを乗っけても、ちゃんと時代感を押さえてくれる」

DORAIN「Kashifさんの作る音ってそうだよね。ドラムがリズムボックスの音だもんね」

Kashif「909と808の組み合わせみたいな感じ」

DORIAN「僕は80年代の音楽をずっと聴いてきたわけではなかったし、後追いもそんなにしてないし、まあ、こんなだよなあ……みたいな感じのざっくりとしたイメージで。もちろん好きな世界観なんですけどね」

クニモンド「そこがおもしろいところ。そこに対して一所懸命じゃないところがね(笑)。DORIANくんがやってるようなことは、僕のようなリアルタイム世代には考えつかない。たぶんダンス・ミュージックを通ってきたのが大きいんじゃないかと思いますね。単純に楽器の演奏が巧い人がちょっと80年代テイストでやっちゃおうぜって言っても、たぶんこうはならない」

一十三十一「ダンス・ミュージックを通過したうえでの良質な歌謡曲を作りたいなって」

クニモンド「アレンジャーが僕ひとりだったら、たぶんちょっと違う方向に行っちゃったと思うんですよね。この2人が入ったことによって、僕も引っ張られたところあるし、負けないぞっていう(笑)」


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掲載: 2012年06月13日 18:00

更新: 2012年06月13日 18:00

インタヴュー・文/久保田泰平