INTERVIEW(2)――わかりやすいビートでありつつ、よく聴くとなんか変
わかりやすいビートでありつつ、よく聴くとなんか変
――では、ビート・アプローチに関してはいかがですか? 個人的には、例えば7曲目の“Strawberry Burn”はポスト・ダブステップ的なニュアンスを感じましたが。
牛尾「それは良く言いすぎですよ(笑)。まぁ、でも、ダブステップがポップなテクノと結び付くことで、細かく作り込まれたアパラットだったり、トレントモラーみたいな……あれはポスト・クリックなのかもしれないけど、そういうものには興味ありますね」
中村「ポスト・ダブステップの連中が作ってるビートは民族音楽のそれと近いものがあるというか。散らばってるビートはフェイクで、でも主軸となるビートがどこかに隠れているから、そのフェイクを掻き分けて、主軸のビートを探す聴き方が楽しいんですよね。ただ、“Strawberry Burn”に関してはポスト・ダブステップを意識したわけではなく、わかりやすいビートでありつつ、よく聴くと〈なんか変だよね〉っていうビートを試行錯誤したんですよね」
――かと思えば、CMソングの“White out”やシングル“Parallel Sign”では、素直に両手が上がる王道なイーブン・キックを用いています。
中村「その2曲に関しては、俺、冗談でJ-EDMって言ってたんですけど(笑)」
牛尾「はははは。ナカコーさん、それ信じる人がいたらどうするんですか。 まぁ、信じちゃったら信じちゃったで別にいいか(笑)。いま、世界的にはDJプレイなどに対して〈ボタンを押すだけの音楽じゃん〉って批判もありますけど、ライヴに関していえば、どんなエレクトロニック・ミュージックであっても、基本的にはオン/オフで成り立っていますからね。最近になって、エイブルトンってメーカーから〈Push〉っていう新世代コントローラーが発売されたくらいですし(笑)」
中村「いまの新しい音楽、ドローンにしても、EDMにしても、基本的にオン/オフの音楽だと思いますけどね。オン/オフで成り立つという意味ではミニマルな世界だし、スイッチ・ミュージックが次世代の音楽として盛り上がるんじゃないかなって」
――商用スタジオで予算を掛けずに、手軽に取り組めるという意味で、いまビート・ミュージックは量産されている現状があるわけですけど、牛尾君はトラックメイキングに関してどうお考えですか?
牛尾「実はいま、ビートのあるものがピンとこなかったりして。自分のなかではそういう時期が周期的にやってくるみたいで。agraphの『a day, phases』を作る直前、サン・エレクトリックとかグローバル・コミュニケーションズみたいなアンビエントをアンビエントと知らずに聴いていた時期もそうでしたし、いまはあまりにいろんな作品がどっと発表されていて、どれも同じように聴こえてしまうということもあるのかも。だから、さっき挙げたストロボスコピック・アーティファクツの作品とか、(チリー・)ゴンザレスの『Solo Piano II』、ポスト・クラシカルと呼ばれているニルス・フラームなんかを聴いたり。
――ナカコーくんは?
中村「僕が聴いていたのは、ライブラリー音楽や現代音楽とか。特にライブラリー音楽を作ってた人たちって、当時の最新機材を使える立場にいた人たちだから、新しい機材を楽しそうに扱っている感覚が伝わってくるんですよね。それはポップ・ミュージックのなかでテクスチャーを扱っているLAMAと通じるところがあるように思うし、ライブラリー音楽にあるような、未来に開かれたスタンスは今回のアルバム・タイトル『Modanica』と通じるところがあるかもしれない。
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