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インタビュー

[インタヴュー]チャールス・ロイド

チャールス・ロイド ©Dorothy Darr/ECM Records

親友、ビリー・ヒギンズが遺してくれた絆~ニュー・カルテットで来日
チャールス・ロイド インタヴュー

巨匠チャールス・ロイド(ts)のブルーノート東京公演が迫っている。それなのに、おそらくチャールス・ロイドって誰? という人もいるだろう。しかし、少しジャズに関心があり、ピアノが好きであれば、最近公開されたピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニのドキュメンタリー映画『情熱のピアニズム』に登場したサックス奏者と言えば少しは興味をもっていいただけるのだろうか(あるいはビーチボーイズのサイドマン?)。そのドキュメンタリーでは、ミシェル・ペトルチアーニがジャズピアニストとして成功するきっかけを作った巨匠として紹介され、ミシェルのデビュー当時の共演映像やインタヴューを観ることができる。彼自身が世界的に知られるようになったのは、キース・ジャレット(P)、セシル・マクビー(b)、ジャック・ディジョネット(ds)とのカルテットで制作した『フォレスト・フラワー』だった。当時大変な成功をおさめたグループだったが、たった4年で活動を休止してしまう。そして謎の沈黙を経て復活、その後数々の名ピアニストをジャズ界に送りだし、独特のサックスのスタイルとともに才能を見いだすプロデューサー的存在としても世界中でその動向が注目されているアーティストである。

今回あらためて絶頂から沈黙にいたるまでの事情から最新作のことまでを、本人に取材した(以下は、レコード会社が行ったメールによる取材に基づく)

「私がキース・ジャレットやジャック・ディジョネット、セシル・マクビーと組んだ最初のカルテットは、素晴らしいグループでした。私たちはアルバム『フォレスト・フラワー』を通じて世界的に知られるようになりましたが、1960年代の終わり頃、私は内面に多くの問題を抱えるようになり、それが音楽にも影響して、私の生活も破綻してしまいました。そこで、私はグループを解散し、音楽から離れたのです。私たちが一緒に活動したのは、わずか4年間でした。世界を変えるのが私の夢でしたが、まずは自分が変わらなければ、世界を変えるという希望も持てないことを悟ったのです。私はより強くなり、より強固な意志を持って活動を再開しました。苦い経験と良い経験の両方から、多くを学んだのです。私の“ニュー・カルテット”結成には、とても不思議ないきさつがありました。親友の名手ビリー・ヒギンズ(ds)が死の床で、『僕はもう生きられないかもしれないけれど、君とはいつも一緒にいるよ』と私に言いました。彼は2001年の5月に他界しましたが、9月11日の事件があった週にニューヨークのブルーノートで行うことになっていたライヴのために、エリック・ハーランド(ds)を遣わしてくれたのです。深夜にジャム・バンドで演奏していた彼の向こう側から、微笑みながら演奏する名手ヒギンズの音が聴こえてきました。私はエリックに、数か月後のライヴを一緒にやってくれるように頼みました。そのエリックを通じて、2004年にリューベン・ロジャース、2007年にはジェイソン・モラン(P)と知り合ったのです。

私はこのグループが、最初のカルテット以来最高のものだと感じています。私たち全員が、ジャズの伝統に対する愛情と、新境地の開拓者の精神を共有しています。どのミュージシャンも、私の個人的な作業に深い思いやりと寛大さをもって協力してくれます。私は高く舞い上がるのが大好きで、このグループと演奏していると、いつも親友である名手ヒギンズの存在を感じることができます」

ビリー・ヒギンズは、チャールス・ロイドより2歳年上のドラマーで、オーネット・コールマン(『The Shape of Jazz to Come』他)や、パット・メセニー(『Rejoice』)との共演でも知られる、繊細なアフロアメリカン・スタイルのリズムを聞かせるジャズ史に残る名ドラマーである。死後ECMから発売された作品『Which Way is East?』が、チャールスとの最後の作品となった。ドラマーとの共演にも恵まれてきたが、彼ほどピアニストに恵まれたリーダーもいないのではないだろうか?卓越したピアニストを選ぶセンスの秘密は?

「私はメンフィスで育ち、フィニアス・ニューボーン(P)が導いてくれました。私の中にはフィニアスから授かった種のようなものがあり、後に共演を通じてキース・ジャレット、ミシェル・ペトルチアーニ、ブラッド・メルドー、ジェリ・アレン、そして今、ジェイソン・モランの中で発芽したのではないでしょうか? 私はジェイソンとは、音楽を通じてとても深くつながっています。一緒に演奏して音が流れていく様は、イマジネーションを刺激する水や太陽の輝き、のようでした。ジェイソンは、ジャズピアノの歴史についてとてもよく理解しており、新しい響きにも意欲的です。今回のデュオのレコーディング(新作『ヘイガーズ・ソング』2月13日 発売予定)では、曾々祖母に書いたテーマ曲は、組曲のようなものになりました。このレコーディングは、ジェイソン・モランとの、奥深いデュオ作品です。(ビリー・)ストレイホーンや(デューク・)エリントン、アール・ハインズ、(ジョージ・)ガーシュウィン、ボブ・ディラン、それにブライアン・ウィルソンという、私の大好きな素晴らしい作曲家たちの作品を集めました。私のオリジナル曲では、ヘイガーという人物がテーマの中心になっています。ヘイガーは私の曾々祖母にあたる人ですが、私は彼女の人生を知って深い感銘を受けました。《ヘイガーズ・ソング》は、10歳の時にミシシッピ州南部に住む両親から引き離されて、テネシー州の別な主のもとに奴隷として売られ、14歳でその人に妊娠させられるという、彼女の人生を反映した作品です。彼女はその後、主の娘の夫に売られて、その人の専属の奴隷になりました。この作品は、奴隷として売買された多くの人たちの物語がひとつになった、複合的で入り組んだ物語なのです。《ヘイガーズ・ソング》には、家族の喪失や孤独、将来への不安、夢、悲しみ、新たに生を受けた彼女の子供たちのための歌というように、彼女の人生の様々な局面が反映されています。音楽はいつも私を刺激し、慰めてくれましたが、私は他の人に対しても同じことができればと思っています。人生のこの時期に音楽の作り手でいられることは、私にとって光栄かつ名誉なことです」

最後に日本の印象、公演に向けて一言いただいた。

「私にとってこの日本公演は、幸先の良い新年のスタートとなるでしょう。私は日本に対して強い親近感を持っていますが、その理由は映画にあると思います。大学生の頃には、黒澤映画を観て大きな感銘を受けました。彼には傑作がたくさんありますが、中でも『羅生門』と『デルス・ウザーラ』は抜きん出ています。それから、溝口健二監督の『雨月物語』も忘れ難い作品です。私が最初に日本を訪れたのは1966か1967年のことでした。素晴らしい写真家であり、東京でDIGやDUGというジャズ喫茶も経営する、中平穂積氏の招きによるものです。彼はジャズに対する開かれた耳と、ステージの上やステージを離れたところで非常に貴重な瞬間を捉える目を持っていました。私たちは1966年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルの時に友達になり、彼はその後、グリニッチ・ヴィレッジの私のロフトに遊びに来てくれました。当時スイングジャーナル氏の編集者だった児山紀芳氏と出会ったのも、同じ頃のことです。私たちは2008年にNHKのラジオ番組で再び会うことができましたが、それはとても楽しい、心温まる再会でした。彼はとても感受性の強い人です。1960年代には、琉球諸島にも連れて行ってもらいました。現地では非常にソウルフルな伝統音楽も聴く機会がありましたが、それは私が少年時代を過ごしたメンフィスや、ミシシッピにあった祖父の農場で聴いた、ブルースを思い起こさせるものでした。近年になって、私は素晴らしいデザイナーでミュージシャンでもある山本耀司氏とも友達になりました。彼とはいくつかのプロジェクトでコラボレートしましたし、私は彼がデザインした服も着ています」

(左から)ジェイソン・モラン、エリック・ハーランド、チャールス・ロイド、リューベン・ロジャース ©Dorothy Darr/ECM Records

LIVE INFORMATION
CHARLES LLOYD NEW QUARTET featuring JASON MORAN REUBEN ROGERS & ERIC HARLAND

2013年1月3日(木)~6日(日)
15:45開場/17:00開演(ファースト)
19:00開場/20:00開演(セカンド)
会場:ブルーノート東京
http://www.bluenote.co.jp/jp/artist/charles-lloyd/

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