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インタビュー

NONA REEVES 『POP STATION』



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[ interview ]

〈POP STATION〉と書かれたプラットフォームに滑り込んできた〈POP TRAIN〉という名の列車。先頭車両を覗き込めば、顔を綻ばせた3人のミュージックメンが乗車している。西寺郷太、奥田健介、小松シゲル──NONA REEVES。

プロデューサー、作詞家、作曲家、プレイヤー、文筆家、ラジオのパーソナリティーなど、ホームを離れた場所でそのスキルを遺憾なく発揮してきたそれぞれのメンバーがいま、4年ぶりのオリジナル・アルバム『POP STATION』を携えて新しい旅の始まりへと誘う。そんな新作について、西寺郷太(ヴォーカル/プログラミング)に話を訊いた。



いちばんやりたいことをやった時にいちばん輝く



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――4年ぶりのオリジナル・アルバムとなる『POP STATION』ですけど、この4年の間には本の執筆(『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』など)やラジオのレギュラー番組(TBS〈キラ☆キラ〉、NHK第1〈LiLi & GO の Ready go〉など)といった外仕事の成果もあって、西寺さん自身の知名度は上がりましたよね。それだけに、ホームであるNONA REEVESのアルバムを作るにあたっては、これまで以上に知恵を振り絞った部分もあるんじゃないかと。

「この4年は、いわゆる〈NONA REEVES〉っていう自由に音楽を作る場所、極論で言うと〈アートの場〉から離れて、コマーシャルな場に自分がいて。そこで自分がウケるっていうことはわかったんだけど、自分が本当にやりたいことをやった時にどういうふうに評価されて、実際それをビジネスに繋げることができるのかっていうところが、アルバムを作るうえで最大の課題でしたね。いちばんやりたいことをやった時にいちばん輝く、〈すごい!〉って言われることが勲章だと思ってるので、そういうふうに自分もいられるかっていう。特にシンガー、バンドのフロントマンとしての自分の立場から言えば、僕も奥田や小松がミュージシャンとしてノーナがなくても食べていける、それぞれ日本の音楽界に必要とされているってことはわかってしまったわけで、クォリティーを下げてまで無理して続ける理由はないわけです。バンドは超楽しいです。一生続けたい。でもそのためには心底3人で納得できる最高傑作を作らなければ、って。本当に瀬戸際に立った気持ちで今回のアルバムを作ったんですよ」

――この4年のトピックと言えば、一昨年のカヴァー・アルバム『“Choice” by NONA REEVES』からレーベルをBillboardに移籍したことも大きいですよね。

「それはいちばん大きいかもしれないですね。規模としては小さいですけど、すごく的確に僕らが補ってほしいと思うところをカヴァーしてくれるレーベルで、こういうアルバムにしたらどうですか?っていうアイデアもわりと最初の段階から提案してもらってたんですよ。朝から始まって夜になって、途中にジングルが入ってっていう〈ラジオ局の1日〉みたいなコンセプトであるとか。それで僕が最初にイメージしたのは、ジャネット・ジャクソンの『Rhythm Nation 1814』とか『Janet.』のような、曲の合間に独立したSEやインタールードが入るようなものだったんですけど、結果はそうなりませんでしたね。最初はSEにするつもりで書いてた“WEEKEND(P-O-P-T-R-A-I-N Part ll)”や“GOLDEN CITY”のデモも、メンバーがもったいないから大きくしようということで、ちゃんとした曲になったし」

――1曲目に置かれている“P-O-P-T-R-A-I-N”の歌詞……〈遠くに散ったマイ・フレンズ/忘れはしない〉〈飽きるまで泣いて/笑ったりしたいだけ〉〈最新のレディオ/抱きしめた/あのフィーリング〉〈溶かしてくれた/メロディ・フェア〉と、その後に続く〈集まれ、皆 それぞれのStation〉〈どこまでもゆける、さぁ!〉でも感じたんですけど、この4年の間、ラジオをきっかけに広げたネットワークもあるでしょうし、それこそTwitterなどソーシャル・メディアでのコミュニケーションといったものがアルバム制作に影響を与えたんじゃないかと。

「ラジオってコミュニケーション・ツールのひとつじゃないですか。ラジオの商業放送は1920年代に始まったんですけど、その当時すごく画期的だったと思うんですよ。しばらくすると新しい音楽が流れてきて、リクエストしたり、手紙を出したらディスクジョッキーがそれを読んでくれてって文化が生まれましたよね。時代の移り変わりで、いまはその役割の多くをインターネットが果たしてたりしますよね。なかでもTwitterっていうのは、個人がラジオ局を持ったようなものだなあと思うんですよ。それぞれが周波数をもらうというか。人気のある人の番組がめっちゃ聴かれるように、おもしろい人はたくさんフォローされるし、有名な人でもつまらなかったり、更新がなかったらフォロワーが少なかったりとか……いろいろあるじゃないですか。ラジオが始まって100年近く経って、コミュニケーションの方法は変わったけど、離れた人と人が繋がるっていうことにおいては音楽の力だったり、言葉の力っていうのは大きいし、テレパシーのように繋がるなって思うところもあったりする。だからラジオやソーシャル・メディアからの影響は大きいと思います。特に自分はラジオやTwitterの申し子というか(笑)、上手に付き合えたんで良かったなと思ってます」



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年02月27日 18:00

更新: 2013年02月27日 18:00

インタヴュー・文/久保田泰平