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インタビュー

『POP STATION』到着前に降りておきたい、いくつかのステーション



『POP STATION』まで特急で乗りつけてもいいけど、各駅停車を選んで途中下車したりしなかったりするのも、またポップ旅行家の愉しみに違いない。そうでなくても2枚続いたカヴァー・アルバム以降、NONA REEVESの……殊に西寺郷太の多岐に渡る活動は『POP STATION』へと至る路線図をさまざまに敷き詰めるものだったと言える。ここでは、そういった目的地までの区間にある魅力的な最寄り駅のいくつかを紹介しておこう。

まずは、すっかり西寺が重要なブレーンのひとりとなった感もあるV6。それ以前からジャニーズ曲に関わり、20th Centuryの“DANCING MACHINE”を手掛けたこともあった西寺だが、現況の導線となったのは2011年のシングル“Sexy. Honey. Bunny!”にて作詞を担当したことだろう(作編曲はcorin.)。歌唱のディレクションも本人が行ったという成果は、詞そのものの内容やPWL調のディスコ・サウンドも相まって、演者から年齢相応のアダルトさとポップスならではのコマーシャルな馬鹿馬鹿しさ(ホメ言葉)を引き出すことに。ともすれば不自然な自然体が良しとされがちなこの界隈にあって、異彩を放つカッコ良さだった。さらに、年を跨いだ同布陣での“POISON PEACH”(シングル“バリバリBUDDY!”のカップリング)を経て、続くシングル“kEEP oN.”ではcorin.と共同で詞曲を書き、ミュージカル風にくるくる転換するアレンジに合わせて唱法もラップからオペラ調まで変化する6分以上の大曲に仕立てていて、これは聴いてビックリしてほしい。そのあたりの鮮やかな軌跡は先日リリースされたばかりのアルバム『Oh! My! Goodness!』で手軽に確認できる(直球の北欧ポップ“D.I.S.”での作詞ぶりにも注目!)。

そういった往年の男性アイドル・ポップに対する美学は、西寺と堂島孝平が結成したアイドル・デュオ、SMALL BOYSとしてリリースした『ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ』にも顕著だったが……それにも似た思いやオマージュを女声で具現化したのが、プロデュースまで担ったbump.yの“COSMOの瞳”だ。そこではSMAPの“SWING”やミズノマリ“気絶するほど、ラグジュアリー”を共作してきた谷口尚久をパートナーに迎え、80s歌謡のロマンティックなポップネスを表出。光GENJIの〈銀河〉なノリや小泉今日子のスターダスト感覚をある種のレトロ・フューチャー的な空気として借景した巧さも味わいどころだろう。

そして、花澤香菜“CALL ME EVERYDAY”(の作詞)を挿んで、『POP STATION』に到着するまでに立ち寄っておきたい名所こそ、新潟の日本海タワーならぬNegiccoの“愛のタワー・オブ・ラヴ”である。ここでの西寺は詞曲はもちろんアレンジやプログラミングなどを丸ごと担当し(ギターのみNONAの奥田健介)、直情的なキャッチーさやダンサブルな意匠に止まらないフロアユースで厚みのあるサウンドを提供。より広い層のリスナーへ向けて一歩一歩昇ってゆくNegiccoの状況を反映したようなリリックの雰囲気もあって、今年のNegiccoが臨む展開のプラットホームとしても機能しそうだ。……てな感じで『POP STATION』から広がるポップ路線図はこれからも網の目のように広がって、音楽シーンをおもしろくしていくに違いない!



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掲載: 2013年02月27日 18:00

更新: 2013年02月27日 18:00

文/出嶌孝次