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インタビュー

OZROSAURUS 『Dish & Dabber』



前作との兄弟作と言える、DJ WATARAIとのタッグで完成した企画盤。ストイックに自身の表現を極める、彼らの現在地に迫る!



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14歳でラップを始めて以来、〈045 STYLE〉のオリジナルとして横浜のシーンを引っ張ってきたOZROSAURUS。「天は二物を与えない。ラップっていう絶対的なもんを持ってるのが俺の生きる意味だし、自分がどうあるべきかに関してはブレたことがない」——MCのMACCHOがそう口にするのも、これまでの自負があってこそだろう。キャリア20年の節目を飾ったフル・アルバム『OZBUM 〜A:UN〜』から1年強で彼らが発表する8曲入りの『Dish and Dabber』は、その自負を胸に、グループとして思いを新たに放つものだ。

「35歳のラッパーが次の10年間どういうふうにやっていくか、いままでのやり口とか温度だけでは通用しないことも出てくるから、歌い方からいろんなことを含めて新たにスタートしたかった。今回はストックしていたフレーズが1個もない状態でやったし、前より自分の素にフォーカスしてる曲もある」(MACCHO)。

「でもMACCHOは一語一語、マックスで心から歌ってるんで、書いてきたリリックを実際に入れてみれば誰が聴いても普通にカッコイイんですよ」(DJ SN-Z)。

本作では、一昨年に配信リリースしたMACCHOと般若、NORIKIYO、DABOとがマイクリレーする“BEATS & RHYME”を手掛けたDJ WATARAIの全曲プロデュースが実現。DJ PMX(DS455)が制作のメインを務めた前作で余裕をも感じさせたMACCHOのラップは、よりアグレッシヴにその身をさらけ出している。

「音楽的なことはいつも何も考えてなくて、思いっきり投げることしかできないんで、その受け皿になるスーパー・プロデューサーと組んだ。ワタさん(DJ WATARAI)にこちらから伝えたことはほぼないけど、オジロをイメージしてくれた曲があるのはすごくわかった。前作で抽出されてなかった部分もうまく抽出できたし、ほとんど流れで出来た部分もある」(MACCHO)。

音楽界に身を置くみずからを鳥に見立て、地球規模の視線で歌う“FREE”、メンタルの変化を越えてラップと付き合ってきた20年とこれからへの思いが窺える“MABOROSHI”、さらには「心してかからないと喰われる相手」とMACCHOが敬愛するCHOZEN LEEに反骨が滲むリリックとスキルで挑んだ、LIFESTYLEのコンピに収録された“MUSIC IS OUR TREASURE”のリミックス、そして「全身全霊、誠意を持ってやった結果」(MACCHO)という本作にあって、“LOCK STAR”は彼ららしい地元賛歌だ。広く横浜を視野に入れて歌った、昨年のサイプレス上野とロベルト吉野作品への客演曲“ヨコハマシカ”に続く形で、より狭い地元と仲間に思いを馳せる。

「実際自分が育った横浜の南部臨海地区は、みんなが〈横浜〉といってすぐ想像するような場所じゃない。だけど自分が育った街でどんだけ認められてんのかが重要だし、俺はヒップホップ云々じゃなくてホントに地に根付いてる自信がある(から曲にした)。自分の同級生で死んじゃった人とか、いろいろ残しときたいものをリリックに入れたし、個人的に伝えたい部分もあった」(MACCHO)。

「〈OZBUM〜〉と今回のを合わせてひとつの作品として楽しんでほしい」と DJ SN-Zが語る『Dish and Dabber』。「ノリでラフにやるのがヒップホップっていう考えは俺にない」と言うMACCHOと彼によるトップギアの音楽は、軽やかな時流をよそにますますその重みを増していく。



▼MACCHOが参加した近作を紹介。
左から、RYUZOの2011年作『HAZARD』(R-RATED)、茂千代の2011年作『続 NIWAKA』(梟観光/S.T.A)、AK-69の2013年作『The Independent King』(MS)、LIFESTYLEの2013年のコンピ『MIGHTY CROWN -The Far East Rulaz- Presents LIFE STYLE RECORDS COMPILATION VOL.5』(LIFESTYLE/ユニバーサル)

 

▼OZROSAURUSが参加した近作を紹介。
左から、Anarchyの2012年作『Diggin' Anarchy』(R-RATED)、YOYO-Cの2012年作『VERTIGO』(JUKEBOX)、サイプレス上野とロベルト吉野の2013年作『TIC TAC』(felicity)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年07月22日 19:25

更新: 2013年07月22日 19:25

ソース: bounce 356号(2013年6月25日発行)

インタヴュー・文/一ノ木裕之

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