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インタビュー

新妻聖子

ポップス・ファンも、オペラ・ファンも要注目!
ミュージカル・シーンを駆け抜けた10年のキャリアの集大成を完全CD化

『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役で彗星の如く日本のミュージカル・シーンに登場して10年。女優・シンガー共に第一線で活躍を続ける彼女が歌のキャリアの集大成とも云える最新ライヴを2枚組で完全CD化。「スタンダードやカヴァー曲だけでなく、これまでリリースしたアルバムやシングルの中からも選曲。最初と最後(アンコール)にオリジナル曲を持ってきたのも歌手として、私なりにこだわっている部分です」

とは言え《オン・マイ・オウン》や《命をあげよう》等のドラマティックなナンバーは実際に舞台でヒロインを演じているだけあって、やはり別格の素晴らしさ。
「確かにお客さんの反応も違いますね。そんなコアなファンを大切にしつつ、近年は〈レミゼ〉など映画のヒットのおかげでミュージカル・ナンバーもかなり有名になってきて、ポップスとの垣根がなくなりつつあるので、幅広い音楽ファンの耳に届けたいです」

《アメリカン・ポップス・メドレー》はNHK-BSの歌番組へのレギュラー出演に因んだレパートリー。

「公開生収録で、懐かしのポップス曲を毎月のように覚えては歌い、井上順さんと司会進行も務めるというたいへんな2年間でしたが、短期集中型で多くを学べて貴重な財産になりました。《River Deep, Mountain High》なんかはあの経験がなければ歌いこなせなかったナンバーでしょうね」

〈愛はかげろうのように〉の邦題で知られるシャーリーンのヒット曲《I've Never Been To Me》は歌唱前に置かれた書き下ろしのモノローグが劇的効果を生む。

「穏やかなメロディとは裏腹に、歌詞は年老いた孤独な女性が過去の奔放な自分の人生を戒めに、平凡な女性に本当の幸せとは何かについて語るという、かなりヘヴィな内容で…日本語に訳して歌おうかとも思ったのですが、英語の軽やかな響きもこの歌の持ち味なので、ひとり芝居のようなかたちに。その方が歌詞の世界をより深く共有してもらえると思って」

《Pieta》はオペラ系の歌手による名唱も多いイタリアン・ポップス《カルーソー》の日本語カヴァー。

「オリジナルとは少し趣を変えて、売れない画家と華やかな女優の恋物語に。前半の男性目線と後半の女性目線とではキーもかなり違います。頑張りました!」

ミュージカル『キャンディード』の舞台で難役のクネゴンデを演じられる程、超絶技巧を備えた声の持ち主だけあって、オペラ・ファンも要チェックの逸材だ。

「音大の声楽科を出ているわけではないので、歌はこの10年間、仕事をしながら勉強させていただいているようなものです。これからもジャンルの枠を超えていろんな作品と出会いたい。〈この曲、新妻さんに歌って欲しい〉って言われるのが何より嬉しいですね」

掲載: 2013年08月22日 18:26

ソース: intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)

interview & text:東端哲也